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フレデリックを知ってるかい?

3月末に代々木上原へ引っ越しすることが決まった。
この地に決めた理由は自分リサーチによると、浅いニットキャップに丸眼鏡をかけたかっこいいおじさん(お兄さん)が都内で一番多い町だったから。

要するにPOPEYEに載ってそうなイケてるおじさんが多くて、その地にいれば自分もそうなれそうな気がするという理由だった。
1度は審査落ちしたものの法人契約できる場所がたまたま見つかったのも大きかった(落ちた時の悔しい話はまた別で書こうと思う)。

契約をしに彼の地へ足を運んだついでに古本屋へ立ち寄った。
外にはたくさんの古い雑誌、中には歴代のPOPEYEたち。迷わず中に入った。
暖かい電球の光が黒く年季の入った踏み板を優しく照らす。ところどころ「床が抜けます」と手書きの紙が貼ってあったのが印象的だった。

入って左手の棚に立てかけてある黄色い本が目にはいた。
「チープシック」だ!
ディグトリオにて取り上げていたのをきっかけに購入を検討していた矢先だったのでうれしい出会い。買います。

ほかの棚も物色してみると小さいころに大好きだった絵本を見つけた。
レオ・レオニ著の「フレデリック」
どうして好きだったのかは思い出せなかったけれど、好きだったという記憶を頼りに手に取った。
どうしてかわからないけれど目頭が熱くなった。

イソップ童話のアリとキリギリスにフレームの似た話ではあるものの、主人公は少し変わったねずみちゃん。
その名がフレデリック。
寒い冬に向けて食べ物を集める仲間たちを横目に、彼だけは何もしていなかった。

彼だけは
春に太陽の光を浴び。
夏に世界の色を集め。
秋に言葉を集めた。

そうして迎えた冬。せっせと集めた木の実も気が付くとそこを尽きる。
寒さが身に届き、おしゃべりをする気も出なくなり、その矛先はフレデリックに向かう。
そしてフレデリックが口を開く。

目を閉じ、彼の言葉に耳を傾けると
太陽のようなぬくもりを感じ
灰色の冬なのに花々の色が見え
厳しい状況なのに世界の感じ方が変わった。
彼は詩人だったのだ。

仲間ねずみからの拍手と褒めの言葉、それまで無表情だったフレデリックが頬を赤らめながら言った。
「そういうわけさ」

こうありたいな、と思った。
フレデリックは人界隈でいうトガっているタイプだ。周りがえっさえっさと働く中で何もしていないように見える。
だけれど彼は他のひとが忘れていたものや見えていなかったものを見ることに努めていた。

働いているとついつい忘れてしまう。
太陽があったかいことや、植物にはいろんな色があること、そして世界には不思議や素敵があふれていること。
それを感じて表現できる彼を素敵だと感じた。

詩人にはなれないかもしれないけれど、改めて日々見たものや感じたことを残していこう。
そう思うきっかけになった絵本だった。

創作活動をしている人、していこうとしている人の背中をきっと押してくれる。そんな絵本を特集するとしたら表紙の言葉で遊んでみたい。

フレデリックを知ってるかい?

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