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タンパク質の過剰摂取について

タンパク質は少なくともどれくらい取るべきなのか。また、過剰摂取は存在するのか。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに整理した。

まず生命を維持するために最低限必要なタンパク質は、以下のとおり体重1kgあたり 0.66g となっている。少なくともこれ以上のタンパク質は摂っておきたい。

アメリカ・カナダの食事摂取基準では 19 歳以上の全ての年齢区分において男女ともにたんぱく質維持必要量(平均値)を 0.66 g/kg 体重/日としており 1)、2007 年に発表された WHO/FAO/UNU によるたんぱく質必要量に関する報告でも同じ値を全年齢におけるたんぱく質維持必要量としている

さらに高齢者においては、フレイル(体重減少による虚弱)やサルコペニア(筋量減少による身体機能の低下)を防ぐためにより多くのタンパク質が必要だと考えられている。

フレイルについては以下のように、タンパク質摂取量を増やすと罹患率を下げることができると考えられている。

習慣的なたんぱく質摂取量とフレイルの発症率又は罹患率との関連を検討した観察疫学研究(横断研究及びコホート研究)のメタ・アナリシスは、観察集団内における相対的なたんぱく質摂取量が多いほどフレイルの発症率又は罹患率が低い傾向があると結論している 52,53)。例えば、高齢者女性およそ 2.4 万人を 3 年間追跡してたんぱく質摂取量とフレイルの発症率との関連を検討したアメリカのコホート研究では、たんぱく質摂取量を 20% 増やすとフレイルの発症率を 30% 下げると予想できるとしている 54)。また、65 歳以上(平均 75 歳)の日本人女性高齢者 2,108 人を対象とした横断研究く質摂取量とフレイルの発症率又は罹患率との関連を検討した観察疫学研究(横断研究及びコホーでは、たんぱく質摂取量が 63 g/日未満の群に対して 70 g/日以上の群におけるフレイル罹患率のオッズ比は 0.62〜0.66 であった 55ルの発症率又は罹患率が低い傾向があると結論している 52,53)。例えば、高齢者女性およそ 2.4 万人を 3 年間追跡してたんぱく質摂取量とフレイルの発症率との関連を検討したアメリカのコホート研究では、たんぱく質摂取量を 20% 増やすとフレイルの発症率を 30% 下げると予想できるとしている 54)。また、65 歳以上(平均 75 歳)の日本人女性高齢者 2,108 人を対象とした横断研究では、たんぱく質摂取量が 63 g/日未満の群に対して 70 g/日以上の群におけるフレイル罹患率のオッズ比は 0.62〜0.66 であった。

またサルコペニアについても以下のように、年齢が高くなると筋肉合成に必要なタンパク質量が増えると考えられている。

ところで、若年及び中年成人に比べて高齢者では、たんぱく質摂取に反応して筋たんぱく質合成が惹起されるために必要なたんぱく質摂取量が多いとする研究報告が存在する 56─58)。これは加齢に伴って減少していく筋肉量及び筋力を維持する上で、つまりサルコペニアを予防する上で、若年及び中年成人に比べて高齢者では多くのたんぱく質摂取が必要なことを示している。

欧米の団体からは、高齢者の健康維持に必要なタンパク質量を1g - 1.5g (体重1kgあたり) と定める団体があり、研究でも 0.8g より 1g 摂取群のほうが優位に身体能力が高かったとする研究がある。一方でそれ以上の摂取が有用という研究もない。

そのため厚生労働省では以下のように、1gを高齢者の最低摂取基準としている。

以上より、フレイル及びサルコペニアの発症予防を目的とした場合、高齢者(65 歳以上)では少なくとも 1.0 g/kg 体重/日以上のたんぱく質を摂取することが望ましいと考えられる。

一方で過剰摂取については以下のように、一日の摂取エネルギーの35%以下なら腎機能への影響はないとする研究、20%と5%で差がなかったとする研究がある。この他にはタンパク質摂取が腎機能に影響を与えるとする研究もないため、タンパク質摂取の上限は設定されていない。

最も関連が深いと考えられるのは、腎機能への影響である。健康な者を対象としてたんぱく質摂取量を変えて腎機能への影響を検討した比較試験のメタ・アナリシスでは、35% エネルギー未満であれば腎機能を低下させることはないだろうと結論している 50)。また、20% エネルギー以上(又は 1.5 g/kg 体重/日以上又は 100 g/日以上)の高たんぱく質摂取が腎機能(糸球体濾過率)に与える影響を通常または低たんぱく質(高たんぱく質摂取群よりも5% エネルギー以上低いものとする)に比べたメタ・アナリシスでは、有意な違いは観察されなかった 51)。

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