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さよならをおしえて

戸川純さんが1985年にリリースしたオリジナルアルバム『好き好き大好き』の2016リマスター版に収録されたこの曲。昨日初めて聴いて衝撃を受けたので感想書く。


なんとなく夜っぽい雰囲気のイントロから発せられた最初の言葉は
「私は待っているわ 愛してくれるまで」
という激重な一言。この時点でこの歌の主人公のヤバさが伺えます。

続いて
「貴方を待っているわ さようなら」
待っているのにさようならとはどういうことだ。待っているとだけ伝えてどこかに行ってしまったのか?こわ。

この曲はセリフっぽく歌う箇所がある。主にそこから主人公の考えというか中身が読み取れると思った。
「例え大惨事が起きて 濁流が走り 街中が廃墟と化しても」
「シェルターの重い扉を開けて 貴方の名前を呼ぶ私」
こわい。どんな状況でもどんな場所にいても、私からは逃げられないよ、とでも言っているかのよう。もし歌詞通りの状況なら、きっと家族や親友でも同じことをするでしょうが、それとは明らかに空気が違います。異常なまでの執着を感じます。
あと大惨事の言い方、第三次に聞こえますよね…?

もう一つセリフの箇所があります。
「例え私が事故で死んでも ほっとしちゃいけない」
「幽霊になってもどって来るわ 貴方の名前を呼ぶ為に」
ここから読み取れるのは、主人公が「貴方」に対して一方的で「貴方」は捕食対象だということ。そうでなかったら、私が死んでもほっとしちゃいけないなんて言わないですよ普通は。
このセリフ以降、歌声の裏で囁き声が聞こえる。ああ、幽霊になって戻ってきたんだ。こわ。

一通り聴いて主人公は「貴方」を弄んでいるなと思った。主人公は「貴方」を求めているが、自ら直接アタックするわけではない。「貴方」は主人公を愛していないのを分かっているから。

主人公は愛したいのではなく、愛されたいのであって、「貴方」からこちらへ来てほしいのだ。だから、自ら会いに行かず「待っている」。どんなに遠くにいても、自分が死んだとしても、ただ名前を呼ぶだけ。あくまで「貴方」が愛してくれるのを待つだけ。

愛されたいとは言っても、根本に「貴方」を支配したいという欲があると考えた。常に主人公を意識させ恐怖を与え続けることで追い詰め、コントロールし我が物にしたいという支配欲、独占欲が主人公の行動に表れていると思った。

じゃあ頻繫に登場する「さようなら」はなんなのかと考えたが、いまいち分からなかった。恐怖から逃れるための救いが主人公だと植え付けてから、ここから去ることで尻尾を追いかけさせようという、コントロールするためのプロセスの一部なのかとか考えた。タイトルの「さよならをおしえて」は何からさよならしたいのか、誰に対しての言葉なのかとかまだ理解できてない。でもまあ音楽なので、完全に理解できなくても楽しめれれば十分だろうと思います。

なんにせよ病的で狂気にあふれた強烈な曲であることは間違いない。気になったら他の曲も聴いてみてください。他もかなり印象的だったので、気が向いたらそれも書こうと思います。そう言っているうちは書いたことないけど…



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