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SVBと銀行財務分析の基本

 シリコンバレーバンク銀行(SVB)が経営破綻したことで、にわかに銀行経営に注目が集まっています。僕が簡単にまとめたSVBを分析したエクセルのツイッター投稿にも半日程度で3.4万件ものビューが集まり、ファイル希望をたくさん頂きました。ただ、その後、「銀行BSやPLの見方がよく分からない、専門用語が頭に入らない」といった声もいろいろ頂戴しました。そこで、ここでは、「銀行財務分析の基本」と称して、銀行分析の前提となる基礎知識部分を解説し、併せてSVBへの示唆を書いてみたいと思います(わかりやすい図とか作る時間無かったので、テキストのベタ書きです、すいません💦)
 ※ガチの専門家からみれば、「はしょりすぎ」「定義や概念が不正確」などお叱りもあろうかと思いますが、その辺は今後、専門のアナリストやメディア解説がでてくるでしょうから、それを待ちましょう。 

なお、このnoteアップする直前に、米金融当局から共同声明が出ましたのでサマリーしておきます。
(SVBの破綻処理策)
①預金は全額保護される。
②窓口は月曜日から再開する。
③経営陣は解任
④納税者の資金は使われない。

さて、本論に入りましょう。

1.銀行の収益源

 銀行の収益源は、大別すると以下の2つとなります。
①金利業務
②非金利業務
(役務収益ともいう)
①は、バランスシートを使うビジネスです。ごく単純な図式でいえば、以下のようになります。
 
 運用資産✕運用利率-資金調達✕調達利率=資金利益
 
これは、通常の事業会社における以下の式とだいたい同じです。
 
 売上数量✕単価―仕入数量✕仕入額=粗利
 
②は、金利が絡まないビジネスです。たとえば、M&Aのアドバイス手数料・コンサルティング報酬・為替手数料・口座維持手数料といったものとなります。

2.金利収益の価値の源泉 

 「金利」というものをそもそも論に遡って考えると、その価値は、大きく以下に2分できます。
 ア)お金を寝かせる(=時間を稼ぐ)ことの価値
 イ)相手の信用で貸すという価値

 銀行は、短期の預金で資金調達し、それを比較的長期の貸付で運用することにより、ア)の「価値の時間差」を収益源としています。また、イ)の観点から、相手の与信の危険(プレミアム)を引き受けることも、収益源としています。 

3.金利業務と非金利業務のビジネスモデル

 バランスシートの大きさを利用し、低利調達した資金を小口分散して貸し出す事業モデルを、「商業銀行」といいます。昔からある銀行です。日本の3メガバンクや海外ではシティバンク、バンカメリカ、HSBCなどが代表的です。
 一方、バランスシートをあまり使わず、M&Aや大口の資金調達のアドバイス、債券の引受や売買などの手数料で儲ける事業モデルを「投資銀行」といいます。ゴールドマン・サックス。モルガンスタンレー、JPモルガンなどが代表例です。
 両方のビジネスモデルには一長一短があります。商業銀行モデルは、バランスシートが大きいほど残高✕金利のストック収益が積み上がることとなり、長期的には安定していきます。一方、投資銀行モデルでは手数料を毎期積上げるフローのビジネスであるため、不安定です。
 一方で、商業銀行モデルでは大きなバランスシートを抱えるため運用効率・回転率が悪く、自己資本比率やROE、ROAといった経営指標が低下しがちです。3で説明する金利リスクや与信リスクの影響も大きくなります。またポートフォリオの管理や入れ替えも簡単ではありません。投資銀行モデルはその分身軽で、バランスシートを使わないため、案件を順調に獲得できていれば、高効率で巨額の収益を上げることも可能なのです。 

4.銀行が直面しているリスク

 金融機関は、通常の経営の巧拙による業績変動とは別に、以下のようなリスクにさらされています。
①金利リスク
 金利が時間を価値の源泉とする以上、将来の不確実性によって常に金利は変動するリスクを負っています。これを「金利リスク」といいます。たとえば、短期金利が落ち着いている中で、なんらかの要因で長期金利が上昇する場合の効果の例をみてみましょう。運用資産のうち長期国債の収益が改善し、新規の利幅が上がります。一方、金利が上昇することで、既存のポートフォリオの債券価格が下落して、評価損失を被る恐れも生じます(金利が上昇すれば債券価格下落、逆は逆、この関係は基本です)。短期金利から長期金利まで、金利水準を並べてつなげたものをイールドカーブとよび(通常は長期なるほど右上がり)、その変化によるリスクをイールドカーブリスクといいます。イールドカーブが立つこと(直立に近づくこと)をスティープ化、寝ること(横線に近づくこと)をフラット化などともいいます。
②与信リスク(信用リスク)
 貸出先の業績が悪化するなどして返済が滞ったり(延滞)、最悪には倒産して回収不能になることがあります。これを「与信リスク」といいます。銀行が借り手に担保を設定するのは、この回収リスクを少しでも抑えるためです。
③流動性リスク
 銀行は、顧客からの要求があればいつでも払い出しに応じなければいけない要求払い預金によってかなりの割合を資金調達しています。一方で資産は貸出などであり、すぐには現金化できません。したって、預金者が一斉に資金を引き出した場合、どんなに決算が優良な大手銀行であったとしても、流動性が不足して倒産してしまいます。このような資産と負債の支払期限のミスマッチからくるリスクを「流動性リスク」といいます。
④金融システムリスク
 銀行は、他の銀行との決済ネットワークによって相互につながっているため、決済ネットワークの重要な部分で支払がストップしたりすると、他の健全な銀行も連鎖的に支払を止めざるを得ない状況に陥ることがあります。これは個別銀行の経営問題ではなく、金融システム全体に係るものなので、「金融システムリスク」といいます。
※なお、銀行の決済ネットワークは高度にIT化されているため、ITシステムの故障リスクや事務ミスによるリスク(オペレーショナルリスク)もありますが、ここでは割愛します。 

5.リスク管理

 3で説明したビジネスモデルと、リスクの所在を併せて考えると、銀行に特有のリスクは主にバランスシートを多用する商業銀行モデルに存在し、投資銀行モデルにはあまり関係がないことが分かります。商業銀行は、これらのリスクをどう管理しているのでしょうか?主に以下の5つとなります。
①期間ミスマッチの管理(金利リスク管理)
 銀行の収益源の基本構造は、短期調達・長期運用にあるといいました。したがって、短期金利と長期金利の高低やその変化によって収益変動します(先述したイールドカーブリスクによる変動)。また、債券のように金利が変化すると価格が変動するものもあります。そこで、どの程度の期間の調達・運用にどのくらいの金額を配分するか、常に管理が必要となります。
 また、個別の取引については、先物やスワップ、オプションといった、いわゆるデリバティブ取引を利用して、変動収益を固定化したり、一定のトリガーによって資金を回収したりできるような仕組みも持っています。
②大口与信規制(与信リスク管理)
 与信リスクについては、特定の企業への大口貸付は、常に避けなければなりません。過去、多くの事業会社が自社の資金調達用に銀行をつくり(機関銀行といいます)、不況になると潰れる、ということが繰り返されてきました。いまは、このような事象は先進各国においては法律や規制で厳しく制限されています。
③業種や地域の分散(与信リスク管理)
 特定業種や特定地域での貸付の集中は、その業種やその地域の景気に左右されがちになります。この点でも、貸出先を分散させることがポイントとなります。ただ、地域金融機関の場合は、③を守るのは容易でない場合も少なくありません。たとえば、「水産業がメイン産業の●●地方の銀行」といった場合は、③は不完全になるので、それだけ保守的な運営が必要になる、ということです。
 銀行は、常に貸出先の決算書その他の情報をモニタリングして資産査定及び行内格付けを施し、それによって貸出利率や貸倒引当金の繰り入れを行っています。貸出先の業績が悪化すれば、査定を厳しくし、取引条件見直しや回収も考えることになります。区分にはいろいろありますが、おおむね、正常なレベルの上から下へ「正常先」・「要注意先」(要管理先)・「破綻懸念先」・「破綻先」などの大分類が置かれ、さらに数十の下位分類が設定されています。
④自己資本の管理
 ①~③のリスクのバッファーとして、銀行は一定の自己資本を充実させる義務が法的に課せられています。この国際統一基準がスイスのバーゼルに本部を置く国際決済銀行が定めた「バーゼル自己資本比率規制」と呼ばれるものです。これは、分母を一定のリスクの掛目で調整した「リスクアセット」、分子を規制上必要な自己資本で定義され、BIS比率=自己資本÷リスクアセット、とした比率です。国際的な大型銀行と、各国内で活動する国内銀行とに対して、それぞれ満たすべき基準の数字が指示されています。リスクアセットは、主に与信リスクの大きなものほど掛目が大きくなります。現金や国債などはゼロかゼロ近傍であり、一般の小口貸出などはもっと高い掛目となります。
⑤資金ミスマッチの管理(流動性リスク管理)
 これは、資金の流出入をモニタリングする管理です。要求払い預金や大口定期預金の解約動向といったキャッシュアウトフローと、債券の満期償還や貸出の返済状況などのキャッシュインフローの管理、すぐに現金化できる資産の想定などを行い、万一の場合に備えます。

 なお、これらのリスク管理はバラバラに行われるのではなく、ポートフォリオ管理の観点から全社的に統合して行われており、ALM(Asset Liability Management=資産負債総合管理)と称されています。大手行などでは高度にシステム化されたリスク管理が行われているのです。銀行経営は、中長期的なリソース配分という意味での戦略が大事なのはもちろんですが、短期的にはALM=経営そのものであり、これに失敗すると致命傷を負うことになります。

6.銀行の財務分析手法

 以上の知識を前提とすると、ごく簡単に「銀行財務の分析にあたりをつける」には、おおまか以下の流れかなと思います(専門家でもない限り)。
①金利収益・非金利収益の比率の確認
 分析対象の銀行が、まず商業銀行的な収益が柱なのか、投資銀行的な収益構造なのか、簡単に眺めます。比率だけでなく、推移変化も追います(これは②以下でも同様)。戦略・リスクの所在がおおまかに分かるからです。
 BSに対する収益性としては、同じ収益額なら非金利収益を柱にしている方が当然高効率です。一方、事業会社の不況などによって投資銀行ビジネスは大幅にアップダウンがあるので、先行きは見通しにくい構造にあると予想できます。注意が必要なのが、同じ手数料系のビジネスでも、貿易金融や送金をメイン業務にしている銀行もあるということです。これらの銀行は、投資銀行などよりも薄利ながら安定した商売をしていることが多いと思います。
②BSの構成要素の分解
 資産構成・負債構成の比率およびその変化を追います。銀行BSの科目はほぼ上から流動性基準で並んでいるはずですから、資産については、流動性資産が多いのか少ないのか、AFSのように時価評価資産が多いのか、貸出のように非時価評価資産が多いのかもおおまかに分かります。
 負債(調達)については、要求払い預金と定期性預金の比率をまず見ます。調達構造の安定性ですね。当然ですが、要求払い預金の比率が高いほど、預金が大口に偏っているほど流動性リスクは高くなります。預金以外の調達、たとえば短期借入金・長期借入金が多いなども不安定要因です。
③資金利益の変動要因の分解
 資金利益は以下のように分解されます。
 資金利益の変動要因
  =(運用利率の変化+運用額の変化)-(調達利率の変化+調達額の変化)
 この数値の内訳推移を追うことで、コア業務で銀行がどういう行動を採っていたかが分かります。量的な拡大を追っているのか、利幅重視なのか。長期債券で期間リスクを取りにいっているのか、与信リスクを取りに行っているのか、などです。
④非金利収益の内訳確認
 これは、為替手数料・各種決済手数料・口座管理料・アドバイザリ―手数料などの項目の積上げですから、その内訳をみることでダイレクトに事業戦略がわかることになります。
⑤キャピタルゲイン・ロスの状況確認
 銀行は預金と貸付の差額を有価証券やマネーマーケット資金で運用しますが、有価証券には評価損益が出ます。AFS・HTM・その他がどの程度の比率で、どのような期間構成で運用されているのか、評価損益がどうなっているかは銀行の自己資本充実度に直結するので要チェックです。
⑥自己資本充実度
 分子のリスクアセット、分母の自己資本に分けてみます。アセットについては②である程度把握していますから、ここでは分母である自己資本のクオリティをみます。普通株式+内部留保が多ければそれだけ健全ですし、悪条件の優先株や劣後ローンなどの比率が高ければ要注意です。いざというときに資本市場調達がうまくいかず、規制比率に抵触してしまう恐れもあります。
⑦その他(ブレイクダウン)
 上記をざっとクリアしたら、各項目をブレイクダウンして分析します。たとえば、貸出の規模分散・業種分散・地域分散・与信コスト。有価証券の満期構成やデュレーション(デュレーションとは期間✕金利リスクを併せた概念)。自己資本の内訳などですね(※銀行はディスクロージャーが充実してるので、この他にも膨大なデータや指標があります)。でも、この辺はディスクロージャー誌などを相当読み込めないと理解不能なうえに、やりだすときりがないですので、専門家にお任せしたほうがいいです。

7.銀行の破綻処理

 どこの国でも、銀行が何らかの原因で業績が悪化すると、金融当局から行政指導や業務改善の命令が出されます。日本では金融庁(地方は財務局)、米国では連邦準備制度(FRB)や州銀行局、財務省通貨監督局(OCC)などがその任務にあたります。
 それでも状況が改善しないとき、あるいは急激に資金状況が悪化して営業が継続困難になった場合などは、金融当局は業務停止を命令し、一時的に事業や店舗の閉鎖を命じる権限を持っています。これは、銀行が決済ネットワークの要となっており、単に一企業としてだけでなく、金融システム全体にとっての悪影響を食い止めるためです。
 その後、銀行の破綻処理は大きく分けて以下2つの方向に分かれます。
 ①事業売却
 ②国有化

 ①は、当局が水面下で調整するなどして、優良事業を他の金融機関などに迅速に売却することです。事業の不良部分は、程度により収益の範囲でカバーできる場合もあれば、一部公的資金で補助されるケースもあるかもしれません(注:破綻企業に対する公的補助をベイルアウトといいます)。一方②は事業の不良の程度がひどく、事業の買い手もすぐには表れない場合などに、一時的に公的管理(国有化)して経営が行われ、再生のメドが経った時点で事業売却される、といったことになります(最悪の場合は、清算です)。
 このとき、預金者がどの程度保護されるのかは国によってまちまちですが、預金者以外も含む全債権者が保護されるなどということはありません。預金であっても、どの国にも保護の上限があります。一部の負担といえども、その資金源は納税者の税金に由来することになるのですから、安易に満額が補填されることになれば、モラルハザードを招きかねないからです。
 日本では、1990年代末の金融危機の際に、日本長期信用銀行(現 新生銀行)と日本債券信用銀行(現 あおぞら銀行)が国会を巻き込んで大変な騒ぎとなった末(「金融国会」と呼ばれました)、国有化(正確には特別公的管理)となり、その後、再生が進んだ時点で投資ファンドに売却されました。また、その他の大手銀行や地方銀行も、信用不安を解消するために公的資金の注入を受けたことがありました。 

8.シリコンバレーバンクと銀行経営

 以上の基礎知識を踏まえて、SVBの事業を振り返ってみましょう(※数値面の具体的な動向は、ツイッター経由で個別にご希望の方にエクセルを差し上げています)。事態が錯綜している段階の報道なども踏まえた所感で、私の憶測も入っていますから、その点は割り引いてご理解ください。ここでは、上記の「銀行分析のきほん」に引き付けて理解するとどうか、ということを重点にしています。
 端的にいえば、SVBは、「スタートアップ業種向け✕投資銀行業務✕シリコンバレー地域」というかなり限定された特殊な銀行だったと思われます。シリコンバレーの濃密なスタートアップエコシステムの中でリスク評価できる案件に対して、スタートアップ企業がVCから出資を受けるまでのブリッジファイナンスの短期間の供給やその周辺サポート業務などは、あえて言えば投資銀行業務に属するものです(長期で貸付を行い、ストックとして利息収入を得れば商業銀行に近くなります)。実際、2020年度までは、収益に占める非金利収入が5割弱を占めていました。
 その後、SVBの実績が上がり、スタートアップエコシステム全体で、企業・VC・その他投資家などもみなSVBを使うようになると、バランスシート上の預金が積み上がってきました。銀行は預金の受入も払い出しも基本的に拒むことはできませんから、集まった資金は運用しなければなりません。もちろん、ブリッジファイナンス案件の積上げやその他の貸出もかなり増やしてはいたものの(貸出は大幅増)、それだけでは収益が足りず、流動性の高いAFS(売買可能債券)への投資を増やしていった状況にありました。すなわち、手数料中心でバランスシートに起因するリスクを取らない銀行から、短期間のうちに商業銀行モデルに変質してしまったのです。
 ところが、2021年以降、金利が急激に上昇し、時価評価が原則のAFSは多額の評価損失を計上せざるを得なくなりました(=金利リスクの顕在化)。そこで、時価評価が規制上求められていないHTM(満期保有有価証券)に投資を切り替えていったわけです。この頃には、貸出額より債券投資額の割合の方が逆転して多くなっていました。HTMには、会計上の表面的な決算には損失として現れないものの、実際には金利上昇による「含み損」が内包されていた(と推測される。含み損なので公表データなし)ことになります。加えて、HTMはAFSより期間も長く一般に売却しにくいので、運用のミスマッチ期間が拡大してしまうことになります。さらに、期間の長いMBS(住宅抵当債券)の売却に伴う市場流動性リスク(売ろうとすれば売れるが、低流動性なので損切りになりやすいというリスク)も抱えてしまったということです。
 そのような状況の中、会社側の経営改善を企図した発表がかえって投資家の危機意識を煽りました。VCなどは出資先にいちはやく預金の引き出し・現金化を勧めたといった報道もあったようですから、スタートアップ界隈で一斉に取り付けに近い動きに繋がったというわけです(業種の集中リスクの顕在化)。いったん取り付けが起こってしまうと、経営危機は自己実現的に生じてしまうため、業務停止に至った、と推測されるわけです。
 以上、SVBは、最後は不幸な引き金を引かれてしまった感はあるものの、銀行分析の基本的観点からみても、かなりリスキーな状態にあった、という可能性があります。

9.日本ではどうか?

 さて、SVBは米国の銀行ですが、日本の銀行では今後同様のことは起こり得るのでしょうか?
 まず、SVB単体の事例については、類似の事業構造の銀行が日本には無いために、直接同様の事態が生じる可能性は低そうです(一部の関係者が取り付け騒ぎを起こして破綻する、というリスクですね)。
 一方、「金利の上昇により債券ポートフォリオの評価損失が拡大する」というリスクは、むしろ日本の銀行の方が大きいかもしれません。日本は低成長の中、G7諸国の中でも突出して財政赤字・国債残高のGDP比率が高い国です。自国通貨で大半をファイナンスしているから一見平穏なものの、世界的な金利上昇に根本的に抗してずっと日本だけ低金利を維持することは不可能です(無理にやり続けると、円安に歯止めがかからなくなる)。従って、低収益体質を早急に改善し、国債依存度を下げて評価損リスクを抑えていかないと、SVBのように多額のキャピタルロスを抱えて信用不安を招く、というリスクはあるのです。この辺は、日本特有の大きな課題といえます。  
 最後に、SVBがもともと先頭に立っていたベンチャーデットについてです。SVBは今回、諸々の失策により破綻してしまいましたが、ベンチャーデット自体はスタートアップの成長に大きく寄与したと僕は考えています。日本でも、いくつかの銀行やファンドが手掛け始めていますが、まだまだこれからの状況です。この辺についても日本は米国と異なる課題があろうと思っていますが、それはまた別の機会に。

  以上、駆け足で「銀行分析の基本」と、それに基づいたSVBの見立てを書いてきました。書き足りないことや説明不足はいろいろあろうかと思いますが、速報の速報的なまとめとして、ご参考にしていただけたら幸いです。
 
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