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ドラマ「最高の教師」と旭川女子中学生いじめ凍死事件

自分は久しくドラマを見ていなかったが、今見始めたドラマが二つある。
「VIVANT」「最高の教師」である。
そして、こないだ最高の教師の第7話が放送された。
その内容を簡潔に言うと、校内で転落死した女子生徒に対してクラスメートや教師たちがこれからどうするかをそれぞれ模索していた。
教師たちは警察が言っていた「事故」かもしくは「自らその道を選んだ」という見解をそのまま発表しようというものだった。
しかし、主人公の九条教師の訴えにより、逃げようとしていた教師たちはその事件と向き合うことを選んだというものだった。
そして、その中でも教頭が報道陣の前で一人でその責任を負う覚悟の表明をするシーンが感動的で、その姿はすごく、カッコ良く、涙が出た。
実際SNSでも教頭の姿に称賛の声が挙がっていた。
やはり、人が恐怖に負けずに立ち向かう姿はかっこいいものであり、国民全員が望んでいるんだなと思えた。

しかし、これらの言葉に水を差してしまうが、これはあくまでドラマにすぎないのである。
単なるドラマであり、役者はそれを演技しているウソの世界である。
もちろん、皆そんなことはわかっていると思うからこれ以上は何も言わないけど。

このドラマを見て、目をウルウルさせながらもう一方で頭の中では旭川女子中学生いじめ凍死事件が浮かんできた。
このドラマ以上に残酷なイジメにあい、心も体もズタボロにされ、逃げてきたのにその過去がずっと追いかけてきて、自ら命を殺めてしまった。

ドラマとほぼ同じシチュエーションである。

しかし、現実の世界はドラマのようにはいかなかった。
教師は生徒を救いもせず、生徒の切実な相談を彼氏とのデートがあることを理由に断り、放置し、教頭も校長も惨い行為を知った上で、これはイジメではないと否定した。
ましてや、保護者の手記によると、被害者の中学校の教頭は「10人の加害者の未来と、1人の被害者の未来、どっちが大切ですか。10人ですよ。1人のために10人の未来をつぶしていいんですか。」と発言したという。
誰一人亡くなった女子生徒を助ける教員はいなかったのだ。
2019年のイジメ発生から2年後の2021年不登校となり、その土地から引っ越した女子生徒は自ら終わりを選んだ。
その当時の校長は2020年に退職し、教育委員会学校教育指導員になっているという。

彼女が自ら選択した後、この事件は文春の取材により、全国に明るみとなった。
そして、学校側は保護者説明会を開くも当時の校長は現れず、その当時を知らない校長をはじめ、当時からいた他の教員も保護者の切迫した質問に対し、「今はお答えできません」の一辺倒で貫き通し、真実を隠し続け、事件は曖昧な状態で止まっている。

このドラマのように現実でも教員たちが自分たちのキャリアが傷つくのを恐れずに向き合っていればこうはならなかったよな、と思い、心が痛む。
でもこれが現実であり、現実であるからこそ、このドラマが理想の非現実で私を含め視聴者が感情を揺さぶられるところに何か皮肉なものを感じるのです。


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