見出し画像

優れたビジネスパーソンをめざす教育の今後の促進について

日本人全員をプログラミングができるビジネスパーソンにする教育が、
小学校で促進されようとしています。これは実現したらすごいことです。

そうなのですが、さて。
日本人全員が優れたビジネスパーソンにならなければならないのでしょうか。多様性はどこに?

もし、新しくそういう教育を子どもたちにするとしたら、
これまでの子どもたちの24時間のうち、
どの部分を削ってプログラミング学習を導入することになるのでしょうか。

文部科学省がプログラミング学習を推進しています。
教育工学の先生たちが、どんどんそういうプログラムやカリキュラムを開発しようとしています。

でも、誰も「そのための時間を捻出するために何かを削減しなさい」
とは言いません。これは要らない、なんて言わないんです。

でも「こっちが大事」と言ったら、
優先順位の低いとされることや、あたりまえに身につくはずのことは、
顧みられないで削減されていくんです。

 非認知能力につながるから、遊びも大事、
 国際化のための英語も大事、
 PISAテストで点が取れる国語算数理科社会も大事、
 プログラミングも大事。
 金融教育も、道徳も大事。

確かにそうかもしれません。
でも、その通りにしたら、

地域での活動や、家事、育児の経験や自然体験や
さらに言えば、かつて普通にあった日常生活、が消えていきます。

世界一睡眠時間が短かったのに、
今までよりさらに短い睡眠時間の子どもたち
 を育ててしまうことにならないでしょうか。

誰が「学ぶ必要のあること」の優先順位を決めるのでしょうか。
この国では、少なくとも子ども自身ではないようです。

必要だ!と声の大きな人たちが主張すると、
ささいな経験、取るに足りない日常のこと、は、
どんどんそのための時間に奪い取られていきます。

私たちが生きていくうえで、日々の取るに足りないことがどれだけ大事か。
休むこと、目的のないことをすること、意味がわからないようなばかばかしいことを楽しんで笑うこと。

ミヒャエル・エンデは、それらを私たちの日常から奪うことを
「モモ」において、「時間泥棒」と言いました。

この国ではすでに、自分の時間を30分単位で売ることがあたりまえになっています。時間にお金がくっつくから、気がつくと、お金にならない時間は無駄とみなされているのです。

今、かつての子どもたちだったら
「自然」に、「あたりまえ」に、身についていたこと、
ができない子どもたちが急激に増殖しています。

日常のコミュニケーションに困難を抱える子どもたち、
50メートル走がまっすぐ走れない小学生、
昼間から寝転がりたがる幼児、
離乳食をのどに詰まらせるあかちゃん。

そういう子どもたちを机に座らせ、
体幹がしっかりしていない子どもたちにヨギボーを使わせ、
あるいは落ち着かないまま歩き回らせ、
ガジェットを与え、授業を遊びのように楽しくして育てていくことは、

本当にその子どもが一生を生きていくために小学生時代にすべき教育でしょうか。

 寝返りもハイハイもできない子どもたち、
 5歳になっても排尿コントロールができない子どもたち
を育てる方向に日本社会が進んでいることと根っこが同じではないでしょうか。

問題を改善するためのトレーニングプログラムや
グッズの開発が行われ、イタチごっこです。

大人の便利さ、快適さ、リスク回避を子育てや教育にまで広げることで、
私たちは子どもたちがいつのまにか育っていったかつての環境を
ポイポイとごみのように気楽に捨てているのではないでしょうか。

より良い方向に、とみんなが考えています。
教育者たちも親たちも、研究者たちも「よりよく」を目指しています。
悪気のある人などいません。

でも、子どもたちがどう育っていくといいのか、
発達において、
無駄に思える普通の生活の時間がどれほど貴重なものなのか、
そこにおいてこそ、脳も体も心も育つということを、
あまりにみんなが知らなすぎるように思います。

自分が大切だと発見したことを、次々と「教育しよう」
「学校で全員に身につけさせるんだ」と意気軒高に叫んで、
子どもに当たり前に与えられていた豊かな時間を
大人たちが、教育者たちが、子どもたちから奪っています。

私たちの生きる日々の時間を、
なんでも詰め込んでいいバッグのように扱わないでください。

24時間が破けてしまったときに、やっと気がつくのでしょうか。
破けてしまったバッグを元に戻すのは不可能か、とても大変だと思います。

※ 写真は、鞆の浦・お宿と集いの場 燧冶(ひうちや)の2階のなんでもないシンプルな部屋。150年の歴史を持っていて、奇をてらうことなく、そこに存在している。

#社会的マルトリートメント #一般社団法人ジェイス
#教育工学 #プログラミング教育 #OECD #文部科学省  
#ミヒャエル・エンデ #時間泥棒 #発達障害 #紙おむつ  
#子育てグッズ #コンテナベビー症候群 #早期教育  





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?