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あなたはグローバルな立場でどんな優しさを持っていますか

あなたは歯科医師を職業として選ばれ、グローバルな立場でどんな優しさを持っていますか
('98年・大阪歯科大学)

 いくら国際化の時代とはいえ、「グローバルな立場」の優しさを持った歯科医って……。さっぱり意味がわかりませ~ん! まあ、とりあえず「グローバルな立場」は置いとくとしても、「どんな優しさを持っていますか」と正面切って聞かれて、「えーと、私はこんなふうに優しくてですね……」なんて、フツーは恥ずかしくて答えられないでしょう。

 つーか、それ以前に文章自体が日本語としてヘン。前段と後段が噛み合ってないし、敬語の使い方も中途半端だし、これが問題文でなく受験生の解答の文章だったら0点つけられちゃうぞ。

 ところが、同大学は翌年も懲りずに同様の問題を出題していて、白昼堂々「あなたはどんな『愛』を持っていますか」なんてメガトン級の問いを発している。「優しさ」の次は「愛」ですか……。もしかして、出題者はフランス人かイタリア人? それとも、そのくらい平気で言える図太い神経がなければ、歯科医には向かないってことなのか。

 同じ歯学系では、大阪大学歯学部の問題も答えに詰まる。「今後益々学問をすすめたいあなたが、さらに広大な未知の領域があることを知った場合、あなたはどのように感じますか。400字以内で感想を書きなさい」('96年)って、そりゃどんな学部だろうが、さらに学ぶべき「広大な未知の領域」があることぐらい受験生だってわかってるだろう。「知った場合」という仮定のうえで「どのように考えるか」ではなく「感じますか」と問うのもヘン。

 こんな無理難題をクリアしなければならないとは、やっぱり歯科医になるのは大変なんだなあ。

(※2005年に某誌より依頼を受けて拙著『笑う入試問題』から抜粋・再構成した記事が先方の都合でボツになりました。そのときの原稿を順次掲載していきます)

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