月刊体育施設

月刊体育施設

 警察官の皆さんの中には、スポーツマンも多いことでしょう。そこで今回は、スポーツとは切っても切れない関係の雑誌、といっても『ナンバー』とか『スポーツ・ヤァ!』とかではなく、その名も『月刊体育施設』。競技場や体育館などスポーツ施設についての専門誌である。
 そんな雑誌があったのか、ということにまず驚くが、12月号のトップ記事は、年末号だけあって「2003年スポーツ十大ニュース」と、とっつきやすい。気になる第1位は「虎フィーバー!仙さん、涙、涙」……って、めっちゃフツーじゃん! 「○○スタジアム完成!」とか、そういうニュースが並ぶのかと思ったのに。まあ、「スポーツ施設十大ニュース」じゃなくて、「スポーツ十大ニュース」だから当然といえば当然か。

 2位以下も、「ゴジラ松井、NY上陸!」「“有言実行男”北島世界新2連発」「世界に羽ばたいた大和魂(室伏広治、末続慎吾らの活躍)」「大和撫子もよくがんばった(杉山愛、野口みずきらの活躍)」など、メジャーな話題が続く。そして、第7位にようやくこの雑誌ならではのニュースがランクイン。そのニュースとは、「JFAも公認、新人工芝勢力拡大」
 解説によれば、「多くの日本選手たちが活躍する一方、スポーツ施設業界では、“新世代の人工芝”と呼ばれる新鋭・ロングパイルタイプの人工芝が大活躍している」とのこと。この人工芝は、2002年に東京ドームに導入された、毛足が長くクッション性の高いもので、その後、大阪ドームや横浜スタジアムにも採用され、明治大学や大阪体育大学ではラグビー場にも敷設されている。そして、2003年9月には日本サッカー協会(JFA)が公認制度を導入、「『JFAロングパイル人工芝ピッチ公認制度』として、製品検査を受けた人工芝を敷設しているピッチを公認し、別途定められる公式試合を開催することもできるように」なったという。
 本来、野球もサッカーも天然芝でやるべき競技だと思うが、屋根付き競技場でも天然芝に近い感触でプレーができるとすれば、観ているファンにとっても歓迎すべきニュースといえるだろう。

 第二特集は「イベント時の競技場トラック&芝生フィールドの養生」。つまり、野球場や陸上競技場などでコンサートなどのイベントが行われる場合に、トラックや芝生を傷めないよう、いかに保護するかについての研究記事だ。
「特に、陸上競技場は100分の1秒を競う競技施設であり、表層材(ウレタン)の損傷が、記録や大会運営並びにアスリートの怪我などに大きな影響をもたらすので、細心の注意を払う必要がある。また、競技用施設として高い精度が要求されている設備も数多く点在し、もし損傷を与えた場合、補修方法も難しく高価なため、より慎重な対策が求められる」
「コンサートでは、芝生フィールドに芝生保護材を敷設し、数日間芝生面を覆い、観客席などに利用するケースもあり、植生上の問題や凸凹による競技への支障などが考えられる。また、コンサート後は、芝生保護材を使用したことによる芝生のストレスを取り戻す時間を考慮して、事業の日程を組む必要がある」
 なるほど、アリーナ席の観客の熱狂の陰に、そんな苦労があったとは。タテノリでぴょんぴょん飛び跳ねたりした日には、施設担当者の血圧も跳ね上がってしまいそうだ。

 隔月連載「海外スポーツ施設」のコーナーでは、2006年サッカーW杯に向けて建設中のドイツのセントラルスタジアムを紹介。第二次大戦後に「10万人スタジアム」として整備されたスタジアムをサッカー専用スタジアムとして全面改築したもので、「市内から遠望すると、緑の丘に埋もれたスタジアムの象徴的な屋根が見えるようになっており、周辺環境との調和を見事に図っている」という。このへんは、日本のスタジアムにも見習ってほしいものである。
「NEW FACE登場」のコーナーでは、東遠カルチャーパーク総合体育館、豊田市運動公園体育館、青森県スポーツ科学センターが取り上げられている。こんなコーナーができるほど、毎月どこかで新しい公共施設ができているというのも驚き。まあ、地域住民が本当に使える施設ならいいんだけどねえ……。

 笑ったのは「伝誌MAIL」という編集後記のページ。3人の編集者が執筆していて、そのうち一人が自分のボツ企画を披露しているのだ。「私の企画は出しても出してもボツとなる率が非常に高いようで」と言いながら挙げてる例が「私が選ぶ今年の最優秀施設」「誌上対決・空想設計コンペ」「メンテの達人~職人芸を極めよう~」。うーん、結構面白そうなのに。編集長さん、再検討してあげて!
 というわけで、縁の下の力持ち的存在にスポットを当てたこの雑誌。これを読めば、今までとちょっと違った視点でスポーツが楽しめるかも。

(※2002年から2004年にかけて『トップジャーナル』という警察官向けの雑誌に連載した原稿です。情報は掲載当時のままで、取り上げた業界紙誌が現在もあるかどうかは未確認です)

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