見出し画像

『アンダーカレント』

抑制の効いた芝居、音楽、演出で、なにも台詞がない場面でも胸の奥に静かにざわつくものを感じる。とても綺麗な構図が多くて、さまざまなカットがそのまま写真作品として鑑賞できるくらい丁寧に生み出されたものに思えた。

誰が考えても理不尽と思える行動を取る悟(永山瑛太)の芝居に、妙な説得力があって唸らされる。「言ってる事わけわかんないけど、そういう事ってあるよな」と頷いてしまう。
そうした理不尽と合わせ鏡のように対峙するかなえ(真木よう子)と、複雑な感情でかなえに寄り添う掘(井浦新)は、遠い昔に絵筆の折られた絵描きのように色彩のない人生を歩んでいるのだけど、どこかで救いを求めているようにも思える。

ラストシーンがやさしく強く印象に残る。「最後の場面を成立させるために、この物語は描かれる必要があったのだ」としずかに迫るものがあった。


この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?