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【ネタバレ】TENET; 時間を扱うノーラン監督が初めて挑む真の時間逆行

まだ1回目で他の解説も特に読んでないけれど解釈をば。
シュタゲを完全に見終えていると話が早いです。

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全体のエピソード

ドラゴンボールのトランクス、シュタインズゲートの岡部倫太郎などと同じく、「破滅の未来を迎えた”とある主人公”が、過去改変により未来を救うために未来から寄越したのが自分だ」といって、過去の人物に接触を測っていく作品と同じ題材となる。

岡部が主人公、鈴羽がニール、SERNがセイター、電話レンジ(仮)が回転ドアと置き換えられる。
まゆりがキャットと近いけれど、本作はタイムリープではなく、逆行組は全員リーディングシュタイナーを持つので、どちらかというと劇場版のクリスの方が近い。

セイターという名前が出てきて、一瞬ジョン・タイターを思い出してしまったシュタゲ民は他にもいたのではないだろうかw

後述するが、これまでのノーラン作品はシングルバースであったが、本作は任意ポイントへのタイムトラベル型でなく、完全逆行型をとることに特徴があるものの、過去改変パラドックスを抱える点は同じであり、マルチバースの可能性を内包することによって、いわゆる「シュタインズゲート世界線」を目指せ、という作品と考えられる。

過去作品との比較

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MEMENT
・観客からは未来から過去へ”見える”
・実際は主人公はタイムトラベルはしていない

インターステラー
・5次元宇宙に到達したことで過去の自分に干渉できる
・実際に同一時間軸に自分が複数存在するわけではない

インセプション
・現実世界の仮想化であり精神だけが別次元へいける

TENET
・完全逆行型過去旅行

[ 他作品との比較 ]

過去改変による別世界線到達を目指すマルチバース前提のタイムリープ
・ひぐらし
・シュタゲ

過去改変を目指すがタイムリープでなくシングルタイムトラベル
・トランスワールド
・君の名は(シングルだが小刻み)

シングルバースを変えないことを目指すタイムリープ
・アバウトタイム

結局シングルバースだったタイムトラベル
・プリデスティネーション
=> これが本作に一番近いかも

従来のタイムトラベルと異なる点

任意のポイントにいきなり飛ばない。
通常のタイムトラベルの場合、時間軸上に座標が存在し、そこまで戻ってやり直す。
未来からやってきた自分は任意の時間に戻ることもできるし、自分の体感は順行である。
これは観客を混乱させないためであったと思われるのと、完全逆行の場合、セリフが逆回しになるため、順行の人間たちとの会話が成立しなくなることにあると思われる。

従来のタイムトラベルと同じ点

祖父殺しのパラドックスは同じ。
過去改変を行なった場合、並行世界(マルチバース)がどの程度発生するかは描かれていないけれど、最後のニールの「また過去を作る」というセリフから、未来の主人公から、過去改変して未来を救えという任務を与えられ、過去改変しにきているので、マルチバースを作り出す職人として、主人公の時間軸にニールが投入されたと考えるのが筋である。

ただしこの場合、後述するが、「若返り」が発生しないと矛盾するので、未来のニールは結構年寄りだったのではないか?

時系列

オペラハウスとCIAは逆だったかも

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*漢字が順行/巡航入り混じってます、すみません

[ 曖昧な点 ]
①絵の流れ
絵の流れは武器商人(セイター)特定のため、そしてセイターの人間性を描写するためのアイテムだったと認識しているけど、あまりポイント整理できなかったので2回目にチェックしたい

②プリヤの役割
プルトニウム核兵器の武器商人=セイター
部品製造に関わる(部品の一部がインド製=プリヤ=回転ドア開発に関与?

主人公がプリヤにキャットの命を保証させに行ったところと、最後のプリヤ殺害シーンの時間軸がつかめなかった

どうでもいいのだけども、プリヤと言われるとまずプリズマ☆イリヤを想起してしまうのでおばちゃんみてても幼女が浮かぶのはオタクの辛いところ

不明点

①戻り方

逆行になった後、任意のポイントで「回転ドア」を使い、最初に逆行になったポイントまで身を潜めて順行すれば、過去改変することなくポイントに戻れる。
しかし、その時の自分は回転ドアに飛び込んできた自分。

また、回転ドアに飛び込んできた自分が逆行するのを見届けた後に、逆行後順行して戻ってきた自分が回転ドアに入ると、「本来の世界線で自分が一瞬存在しなかった」というパラドックスが発生する。

これはつまり、「本来の世界線で自分が逆行する前に順行に戻れ」ということ?
逆行の自分が順行の自分と接触すること自体は許容しているわけなので、本来の世界線に順行の自分が複数いることも良いということなのか。
量子力学的にはどうなんだろう

このあたりは「向こうの部屋に自分が写っていることを確認しろ(?)」だったか、主人公が最初に回転ドアを使う時に説明があった気がするけれど、若干納得がいっていない…

それか、セイターを殺した時点ですでにマルチバース化しているので、一度逆行してしまえば、二度と同じ世界線には戻れないというのが、最後の「戻れない」の意味なのだろうか…

しかし、戻れない特殊部隊は主人公ともう一人の部隊隊長だけだったはずで、挟み撃ち作戦に参加した逆行組は、セイターの作戦を防いだことでこれから順行して自分の元の地点まで戻るはずだが、未来は変わっているのではないか?

②空港襲撃後のキャット

そもそも撃たれたキャットを救う方法が逆行というのが若干腑に落ちていないけれど、熱気と冷気の全てが逆行するくらいなら細胞は若返っていくので、逆行する肉体も損傷から戻っていくということなのだろうか。

ちなみにこの場合、逆行を続けると若返った結果、年齢分遡ると胎児以前まで戻り消滅することになる。これはおそらく順行の自分が大人になって、逆行の自分に何らかの影響を及ぼさないと止められない?
(鈴羽は老化速度が時間時点関わらず同じだったので、タイムマシンが壊れて帰れなかったルートではそのまま老化してましたね)

クルーズ船まで戻った彼女は、船で呼び戻された自分と、今殺したセイターがいなくなったことで息子と共に居られることを目指す。
この時、逆行してきたキャットと、順行キャットは、描写は同一方向なので、この時の未来キャットは「順行」ということになる。

これは空港爆撃の時に主人公が空港の回転ドアを通っていて、それと同様に見えないシーンで回転ドアを一度通り、順行に戻っているということなのか。

最初、さすがに会話を逆転できないので、会話が発生する場面は順行と逆行の時間軸を同一方向に見せるしかなかったということかと思ったけれど、ノーラン監督がそこまで適当とは思えなかったので、一度回転ドアを噛ませている可能性の方が高い。描写を見逃したのかな…

③セイターの自殺を止めろ

セイターの回転ドア通過描写があるのはキャットを撃った後?
主人公が回転ドアを通って逆行するとき、カーチェイスのシーンで自分が逆行車であったことを知るけれど、事故った後にやってきて車に火をつけたセイターのセリフは主人公と同一方向であった。ということは、あのセイターは「逆行」であり、順行セイターと接触しないようにどこかで身を潜めつつ、主人公の車がクラッシュした時に逆行主人公を殺しに来たということか。(でもそれだと、ガソリンに火をつけることは無理では?持ってきたマッチやガソリンを使っていないから万物の法則は順行するのかな)

また、セイターの自殺というのは「未来まで見てきて、武器商人をしながら生きながらえたところで、妻には殺されかけ、第三次世界大戦が待っているのなら、今ここで人類と共に死のう」という拡大自殺ということに見えた。

未来から過去に分散された9つのプルトニウムを集めきったセイターが、それを爆破させて死のうということなのか。
最後の防衛作戦というのはそれを防ぐことに見えた。
世界を救った後にセイターを殺せば、セイターが生きていても世界は滅びなかったという事実を作れるので、シュタインズゲート世界線が成立するということ…?

「壮大な挟み撃ち作戦」については、順行組と逆行組が、当初順行でやってきているセイター勢をダブルで叩くということに見えたけれど、この時点で結構矛盾を孕むような気はする。

これを以て、最後にニールに「過去を作る」と言わせているのかも。
まだない過去職人的なことを言っていたので…
この場合、プリディスティネーションよろしく結構時空を彷徨っちゃうよなぁ…ジャンパーよりも救いがない。

④逆行弾丸

壁が不意に現れた、それに向かって打つと弾が逆行するというのは初期にも描かれていたし、順行セイターが弾丸を手にする際にも描かれている。

ということは、「逆行人間がもってきた物質は、順行の人間が扱っても逆行する」ということになる。
オペラハウスの時点で逆行銃があったことは確認されているので、あの時点で逆行組がいたことは確か。さてどこまで過去に逆行組が行っているのか。

⑤セイターの執着

なぜキャットにあそこまで執着したかの理由が、普通の支配欲や自己承認欲求でよかったのかが若干わからなかった。自分のものにならないなら殺してしまえという過激派な思想を拗らせた結果、地球が自分のものにならないなら人類滅亡してしまおうという発想になったということ?

息子をもうけたのが最大の失敗であるというのは「妻をとられる原因を自ら作り出してしまった」かつ「この手で殺したくないものができてしまった」なのだろうか。息子への愛情があんまり描写されなかったのでよくわからんかった。

妻は、心が自分のものにならなくても、他の者のものにならないように自分の手で監禁したり破滅させることはできる。暴行を加えたり銃撃したりしても平気な顔をしているあたり、そういう思想に見えるので、独占できたという結果があればいいということなのかな。

⑥プリヤの存在と最後の時間軸

プリヤが回転ドアについて熟知していて「どうしてこの時間に」というセリフからも明白だけど、結局回転ドアの構築チームだったのだっけ…?

最後のシーンでキャットが、主人公が持たせた黒電話で「記録」しているということは、あれは逆行キャットが順行して息子といるということ?

キャットが主人公から記録電話を受け取ったタイムラインが把握できないとここちょっとまだ整理できなそう。

プリヤ自体はTENETも武器商人のこともわかっていて、セイターの野望を阻止するために主人公を使おうとしたが、キャットたちを守るという口約束を守らなかったためかプリヤは主人公に殺されてしまう。
このへんがやや曖昧

総合感想

007に壮大にオマージュしているなという感覚と、MEMENTで描きたかった逆行時間軸、インターステラーでも描いてこなかったマルチバースをとうとう集約したなという印象。

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映像とネタは新しいながら、話は割とよくあるものだったので、作品としては正直インセプションのほうが上かも。


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