空を飛ぶ夢

その日の夕方、まだ風が強く吹いていたので、今なら飛べると思った。

ちょうど昨夜お母さんが傘を直してくれたところだ。

僕はその傘を持って、家から少し行ったところにある歩道橋の階段を上がった。

台風が過ぎ去った後で、ピンク色の空には紫色の雲がすごい速さで流れている。

歩道橋の掛かっている道路は交通の激しい片側二車線の大通りで、

トラックや乗用車がビュンビュン通り過ぎていく。

ここから飛び立つのは危険なように見えるかもしれないが、

まず失敗することはないから心配はいらない。

僕は傘を開いた。と同時に傘は風を抱えて僕の体を勢いよく空へ押し上げた。

ほぼ垂直に、高く高く登っていく。

登ってしまえばあとは降りるだけだ。

今日はこのままお台場まで行こう。

僕は傘を閉じてうつ伏せになり、

お台場の方角へ頭を向けて、緩やかな角度で滑空していった。

今日はやけに人が多い。雨が止んだから、皆外に出てきているのだ。

角度をつけすぎたせいか、お台場に着く前に道路に着地してしまった。

普段は人通りが少ない高架下の道路も、今日は人がたくさん歩いている。

皆お台場へ向かっているようだ。

僕はその人波に乗って歩くことにした。





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