見出し画像

ザ・チョコレートケーキ・オブ・マイワールド

母の作る生チョコケーキは最高に美味しい。

お菓子作りが割と好きだった母は、
私や兄弟の誕生日にはいつもケーキを手作りしてくれた。

スポンジから手作りするのだ。
たまに失敗してオーブンから出した途端に萎んでしまっていたけれど。
たまに小麦粉をふるいにかけるのをめんどくさがって、ダマを作っていたけれど。
たまに大成功して、売り物のような綺麗なスポンジを焼いたこともあったのだ。

生クリームをハンドミキサーで泡立てた日は、
回転する部品(ビーターというらしい)に付いた
クリームを舐めさせてもらえて、
それも楽しみだった。

ショートケーキ、レアチーズケーキ、ヨーグルトケーキなど色々作ってくれたが、
私が一番好きだったのは、チョコケーキ。
特に、スポンジに塗るチョコをホイップしない状態の生クリームで作った、
生チョコケーキが一番好きだった。

もちろんホイップしないので、
ミキサーについた生クリームのおこぼれには
ありつけないけれど、
そんなささやかな楽しみはどうでもいいくらい、生チョコケーキしか勝たん、
そんな状態なのだった。

砂糖水でしっとりさせたココア生地のスポンジに
生チョコがたっぷり塗りたくられ、
上から純ココアが振りかけられ、
彩りにスミレの砂糖漬けと、たまにアラザンがバランスよく添えられた、
プロヴァンス風でロココ調な、とにかく可愛らしい甘々な生チョコケーキ。
私にとっての生チョコケーキの定番は、
母の作ってくれたコレなのだ。

砂糖菓子のガリっとした食感は
実のところあまり好きではないが、
シックなチョコ色に、パステルの紫色やシルバーのキラキラが差し色で入ると凄く可愛いから、
これはマストだ。

スポンジも、一般的に失敗の部類に入るような、
うまく膨らまなかったパターンのものだと、
全体的にどっしりとした口当たりで、
これはこれで美味しいのだ。
むしろ、ふっくらと成功したパターンのスポンジよりも
こっちの方が好みだったりする。
いつだったか成功したスポンジの生チョコケーキを食べたときに
物足りなさを感じた記憶がある。

そんな素敵な生チョコケーキが食べられるのは、大体6月か9月に来る兄弟の誕生日だった。

私は4月生まれだったので、私の誕生日には旬のイチゴが乗ったショートケーキがお決まりだった。

実際、誰の誕生日に何のケーキが作られたかはどうでもよく、
とにかく年に一回くらいの割合で、
最高に甘々な生チョコケーキが食べられたという
幸せな幼少時代の思い出である。

#至福のスイーツ

この記事が参加している募集

至福のスイーツ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?