卵生説
秘密だと誘いこまれた緑陰で利口な侭でいてはだめだよ
まといつく姿がふいに疎ましくおもわれた日のパレットナイフ
次兄から盗んだ蝶を迷わせる遊びに耽った第二理科室
苔桃でよごれた指をふくませていけないことをしたのだろうか
その胸ではばたくべきは死ではなく詩なのだからと泣いてくれたね
淋しいと訊かれるたびに星の名をつらねるようになってしまった
心など学びはじめたきみのため恋という語は破いておいた
月のない夜にピアノとたわむれて光の文法を知ったこと
先生の背に透けているみずうみに虹を描きたしてもいいですか
夢で会う野ばらも雨もぼくだった夏の記憶をうたがわないで
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