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俳句

少しばかり月かけたれば秋の空

夏草や並びて歩く夏野かな

季が重なっているが、構わない。

静けさや蝉も暑さで昼寝らし 

夕方に蝉鳴き始め寝坊らし

猫丸く隅に眠れる星月夜

雀の子叢にありをちこちに

彼岸花枯れたる先に赤蜻蛉 

名月や黒猫抱きたる人立てり

時雨止み晴るるを待ちて日暮かな

手焙りの前より動けぬ朝のうち

朝まだき節分豆の路にあり

昼の飯窓辺で食いて暖かし

茶花にせむ満作切りて女の曰く

木の芽どき朝より烏大音声

春雨や鳥も草木も眠りけり

春雨にけふは休みの仕事かな

曇り空生暖かき風彼岸かな

草餅を食べんとすれば猫来たり

知らぬ間に六時になりけり日永かな

鶯の鳴く声一つ昼の路地 

春の空左曇りて右は晴れ

一片のタンポポ舞へり路地の裏

往来に下りて遊びし雲雀の子

浮き草も一つに寄りそう蒼嵐

隠れたる猫の尻出す蒼簾

鉢植えの百合とたはむるちょうちょかな

ラジオ消し町の音聞く夕涼み

友来たり茶飲み餅食い帰りたり 蕎麦芋

黒潮や彼方の海より旅をして

黒潮に乗って鰯の大旅行

春の日の百千鳥木々に先まろき囀り風に薫りて

物干しにたなびく浴衣とりこみてけふは花火の祭なりけり

門の戸を引くに蛙こちら見てげこと一声あいさつなるらし

猫二匹路の向こうに顔向けて小声で呼べば子猫が二匹

つらねたる星辰近き山の上こことかなたの位置も計れず

日の沈む紫紺の帯の上宵の明星輝きにけり

鳩烏雀の他にこの頃は、鶯交じりてめでたかりけり

春の日の暖かき緑に昼寝せり覚めればけふもつつがなきけり

短冊に筆より先に落ちし物我が睫にて生えかはりらし

朝まだき霜の道を行けば節分豆の門先に落つ

夜烏の声にふと見上げれば、斜めに飛びたり夏の夜空に

てくてくと庭先歩く鶏や佇み片目で人を窺う

果てしなき東京の町を人々の行きかうけしき皆けしきなり

八年児(やとごせ)は道行く事さへ楽しからん

群れ立ちて烏飛び去り雀は楽し

つらねたる星辰近き夕涼み 

夏山や渡っていけぬか雲の上

野分来て熱風流るる空高し路地に居りても海かと見まがふ

青空にらせん階段の如き雲 

昼になり雨の上がりし空高く淡き雲の動く事なし

長雨の晴れたる後の空の色地球の蒼が雲の合間に 

鴨家鴨並びて池の淵に立ち泙見たるけしきぞ珍し

夏の月十時半に沈みけり

皓皓と月冴へ渡りけり煙の如き雲を照らせりわが朝の涼しきこころに

路地行くに梅の匂い風と来る角を曲れば白き花咲く

しずかなる湖水に船の浮かびけりまろき浮島夕日の影さす

猫眠る碁盤の隅で詰め碁かな

芋ようかん心が躍る星月夜

秋暮れて青梅の里や昔ぶり

武蔵野や面影残す薄かな

豆腐屋のもう来る時か秋の暮れ

冬籠る炬燵部屋に尚籠る

山と積む草餅次々食らふ我を膝の上にて猫見上げけり

ねばねばが胃にやさしきと思うゆえ かきまぜたればふわふわに

 反歌 納豆をよく混ぜたればふわふわに 納豆菌が元気になるらし

 ヨーグルト十度以上で保存せば 酸っぱくなりて味の落ちけり

 反歌 乳酸菌冷蔵庫にてふるへなば寒し寒しと動かざるらし

着衣始め袖通すれば背筋伸び

百千鳥我も囀る飯時分

猫の恋大音声に犬ほゆる

堤行く子供らの足元つくしんぼう

余りたる甘酒飲みて昼寝かな

霜解けや空はしっとりはれにれり

まてがいやところどころに顔を出し

眉長き猫の顔よすつつじかな

雀の子遠近跳ねる庭の先

萬屋の裏の流れに花一片

春雨にけふは休みの薬売り

五月雨や知らずに降りて知らず止む

勝鬨を渡る蝸牛(てでむし)はるかなり

ともかくも六時に起きて高曇り

猫眠る冬毛になりて日向かな

夢ながら蜜柑手にする朝かな

時雨ける朝に飲む茶の温かい

花壇にもどんぐりひとつありにけり

蝸牛葉っぱの上を歩むかな

短夜の明けてなほ雨降れり

秋空にぽっかり浮かぶひつじ雲

しんとした聖夜に響く鴨の声

小夜時雨音のみ聞きてねむりけり

静かなり大つごもりのひとひまへ

雲の峰近づきつつある物干し台

 

池の面も桜の花に埋もれけり

ふと口に海苔の匂いを感じけり

夜の眠りの福寿草

硝子瓶へちまの茎のしづく受けひがな一日縁側にありけり

桜すんすん伸びゆけり

山桃のだいだい

昼寝して覚めればまわり、猫だらけ

椿咲く路地や雀の毛繕ひ

雀の子をちこち跳ねる庭の先

夕去れば烏群れ立ち鳴く原の

夕去りて滝の如き雨降れり雷轟き心休まり

秋の暮我を廻れる猫ありき

揚羽蝶人の歩みとともに飛ぶ。時々滑空せり。羽を止めて滑りたり。その前には蜆蝶も舞へり。

冬空に高く掲げる干し大根

夏休み部活帰りの子の話眠くて全然勉強できぬと

鳩歩む橋の端を鳩歩む

月光照雲間 雲又煙如漂 我月間無障 何時成満月


個人的に面白いと思う近代俳句

弟を裏切る兄それが私である師走(河東碧梧桐)
曳かれる牛が辻でずつと見廻した秋空だ(同)
まっすぐな道でさみしい(種田山頭火)
分け入つても分け入つても青い山(同)
うしろすがたのしぐれてゆくか(同)
たんぽぽたんぽぽ砂浜に春が目を開く(荻原井泉水)
棹さして月のただ中(同)
咳をしても一人(尾崎放哉)
墓のうらに廻る(同)
いれものがない両手でうける(同)
草も月夜(青木此君楼)
光水の上にある(同)
橋をよろこんで渡つてしまふ秋の日(中塚一碧楼)
病めば蒲団のそと冬海の青きを覚え(同)
シャツ雑草にぶっかけておく(栗林一石路)
こういう思想をもって黄ばんだ街路樹を仰いでいる(同)
陽へ病む(大橋裸木)
蛙の声の満月(同)
横になって夕立に逃げられちゃった(同)
うごけば、寒い(橋本夢道)
無礼なる妻よ毎日馬鹿げたものを食わしむ(同)
妻よおまえはなぜこんなにかわいんだろうね(同)
ずぶぬれて犬ころ(住宅顕信)
若さとはこんな淋しい春なのか(同)
夜が淋しくて誰かが笑いはじめた(同)


こういう歌詞もロマンありますね。

『ハイビスカスが渦を巻く デング熱かマラリアか この世は何て美しい 昭和18年ラバウルで』

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