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「パーフェクトデイズ」と「大東京ビンボー生活マニュアル」

とにかく良い作品だった映画「パーフェクトデイズ」。いろんなところに感想やレヴューはあるので、私はしょーもないことでも書いてみよう。

中学生の頃、前川つかさ氏の漫画「大東京ビンボー生活マニュアル」を地元の書店で購入した。なんで手に取ったのか憶えていないけれども、バブルに向かう時代のカウンターカルチャー(この言葉も80年代ぽい)として、ギターと手淫しか興味のなかった私はこの世界にドップリとハマってしまった。

大東京ビンボー生活マニュアル より

いつかは大学生として東京で貧乏暮らしをするんだ、日芸行って映画を撮るんだと思って妄想していたが、それも叶わぬテイタラクなのだが、私にとってこの漫画はゴルゴ13以上に価値観を広げてくれた。サブカル系のハマり方である。

「大東京ビンボー生活マニュアル」は、コースケ(多分それなりの私文を出たであろう)が大学卒業後もそのまま風呂無しアパートに住んで晴耕雨読でもない日々を過ごすというもの。だから「パーフェクトデイズ」を観ながら私は映画の主人公平山(役所広司)は勝手にコースケと重なって見ていた。

映画では平山はどうも「良いとこの坊ちゃん」だったらしいことはわかる。そんな描写で伝えられた平山の過去。所作からわかる毛並みの良さや諦念、幸福であろうとする意志。昔は成功していたのであろう雰囲気と現在の立ち位置。ずっと今のようであったはずはない感じ。

漫画のコースケは逆にある。大学時代から続くモラトリアムな時間を彼は過ごす。書き下ろしによると今もコースケは昔のままだったけれども、私はコースケは立派な学者にでもなっている様なきがしてた。

誰にも大きな振り幅がある。何かの基準で測れば成功や不成功、幸福や健康など何かしらの点数がつけられていく。本人は気にしないとしても。

そうであって欲しかった。
この漫画のコマのようであって欲しかった。

大東京ビンボー生活マニュアル より

映画「パーフェクトデイズ」は最高の夢を見せてくれた。しかし、最高の裏切りでもあった。淡々とした完璧な毎日は意思で作り上げてきたとしても、最後の感情が。
feelin goodの歌詞とメロディのギャップ。美しかった。朝日のあたるダイハツの軽ワゴン。最高である。あともう一回観てみたい。

ヴィム・ベンダースの「ベルリン・天使の詩」を初めてビデオで観たのは高校生も頃。わけもわからないし、何度観ても眠くなる。けれども最近見なおして、ようやく…わからない。いや、理解はしている。けれどわからないという方が私のプライドにピッタリ。Wikipediaとか読めばいろんな解釈があるのだろうが、わけ知り顔で読むネタバレよりも自分の解釈が大事。だから友人と解釈を語るのが好きなのだが。

私にとっては「パーフェクトデイズ」は51年の人生の中で最も心が動いた作品となった。きっと二十歳の頃ならばわかった気になってもっと難しい言葉で語るようなイヤなやつだったし、60歳を超えていたらどう感じたのか知らないし。

映画を観て、とても元気になった。

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