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「見積もり無料」は人と仕事を舐めてる

今回の結論は無料で見積もり「するな」「させるな」「応えるな」です。

みんな簡単に「相見積もりを取りましょう」と言う。
「相見積もり」は消費者の権利であり、ぼったくられるリスクを軽減できるし、コスパ追求する令和の我々には欠かせない。

だが、待ってほしい。
令和の時代、「相見積もり」は変化しないといけない。特にデザインなどの仕事で「見積もり無料」はいけない。業者もデザイナーも顧客も意識変革が必要だ。

通常の相見積もり


仕入れて販売する仕事では宿命。BtoB:業者同士ならば当たり前の作業。
例えばコピー用紙を一万枚購入しようとする。購買担当者はAとBの仕入れ先に条件(品質、仕様、数量、納期、支払い条件等)を伝えて相見積もりを取ることになる。仮にコピー用紙を単価100円で仕入れる会社Aと90円で仕入れる会社B。販売先へ30円の粗利益をのせるか、50円の粗利益をのせるのか、暴利をふっかけるか、薄利で行くかマイナスでも受注するか、販売先の与信や価値や将来性でA社とB社は検討して見積もりを提示する。発注先は吟味してどちらかに決定する。これは通常の相見積もりのイメージ。

やっちゃいけない相見積もり

ところが、BtoC:業者と消費者間の商売だと趣もマナーや所作も変わっていく。トヨタのディーラーでマツダの見積もりがもらえないように、企業、製品、サービスは同一ではない。住宅業界も同じ。

顧客は住宅会社に相談し見積もりを作ってもらう。「我が社は坪単価いくらなので40坪だと概算で約○○万円くらいですかね」という簡易見積もりの話ではない。

一生に一度の買い物だから慎重に、という気持ちは当然だ。雑誌やネットも複数の会社と打ち合わせをすることを勧める。お互いの相性もわからないから、打ち合わせは無料でいい(打ち合わせは三回までと企業から提示される場合が多い)。

住宅業界などで無料見積もりはダメダメ

設計事務所案件であればまだ良い。
設計図面や仕様書などで資材や工法や仕上がりが明確なので、数量を計算し単価を入れていくから(先のコピー用紙がめっちゃ大変になった感じだから簡単ではないが)。顧客も同一条件ならば金額や工期などで比較が可能だし、設計士がアドバイスをくれるから安心できる。

問題なのは大手ハウスメーカーやビルダー、地場工務店などに「建坪40坪平屋、北玄関で4LDK、収納は・・・で見積もりしてください」なんて感じで依頼するのはもう業者舐めんなって言いたくなる。
挙句に「見積もり無料でしょ?」と当然のように考える。業者もそれに応えようとする。そして「今回はご縁がなかったということで」と断る。ほとんどの場合、業者と顧客の間には「今回」しか無いのに。

お礼くらい言える顧客であってほしい

顧客側が自分の利益のために相見積もりなど検討先を増やすのは当然だ。
業者も受注できるように努力をするのも当然だ。

だが3社で相見積もりだとすると2社は受注できない。「今回は縁がなかった」というが、2社はそれをコストとしなければならない。決して設計費用を負担しろと言うのではない。けれど、顧客にちゃんとした意識があるならば、「縁が無かった」会社にQUOカードなりお菓子なり持参しても良いのではないかと思う。

業者も「見積もり無料」をやめろ。受注できなかった分を他の仕事で補う仕組みが利益構造をおかしくしていることはみんな知ってるくせに。給料が上がらない理由だと知っているくせに。某会社なんか「他社さんの図面と見積もりがあれば、そこから◯%値引きして工事しますよ」とかいうゲスもいる。そりゃそうだろうね、製図コストも打ち合わせコストもかからないわけだから。

またそこに依頼する人はもはや客でもなんでもない。

こんなこと書いても何も変わらないのだろうが、そんな気持ちが失われていく時代を見つめながら、家は「建てる」から「買う」時代になったのだなと思うようになる。

結論:美しい仕事をさせてください

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