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「安定供給」など夢のまた夢 フンザの電気事情 


のどかカフェのあるアルチット村の電気は、約8キロほど上流の村にある水力発電所から届いている。この発電所、川につなげた水路で水を引き込み、その流れる力を利用してタービンを回す仕組みらしいのだが、なんとも心許ない。というのは、川の水量が減る冬はほとんど発電できず、逆に、水量が増える夏も、水路に流木や石が流れ込み、しょっちゅう発電が止まるからだ。

 2023年の夏~秋の、僕の経験では、一日のうち電気があるのは大体、合計6時間程度だった。2024年の初春の現在は、2時間以下だ。当たり前だが、そのほかはずっと停電状態である。さらに困ったことに、何時から何時まで停電し、何時から何時まで電気がくるのかが、誰にも分からない。だから電気が来たと思ったら10分ほどで再び停電することもあれば、深夜眠っているときに、いきなり部屋の電気がついたりすることもあるのだ。ちなみに、二日、三日まったく電気が届かないこともざらにある。

 フンザの人にとっては、電気は、ないのが当たり前、あればラッキーくらいな感じの物だ。日本で言うような「電力の安定供給」がここで実現するのは、まだまだ半世紀以上かかるのではないか。

 不安定な電気事情の中で、みんなどうやって暮らしているのかというと、どの家にも鉛バッテリーが一個か二個はあり、発電所から届く電気をそこに充電して使っている。ただ、そのキャパは限られるので、せいぜいできるのは携帯の充電や電灯をつけることくらいだ。一方、お金持ちの家や、ちょっとしたホテルには発電機があり、もっぱら自家発電で電気をまかなっている。

 じゃあ、我らのどかカフェではどうしているかというと、バッテリーで室内の電灯とWi-Fiルーターを動かして対応している。発電機もあるのだが、うるさいから常時つけておくことは出来ず、使用するのはバッテリーの電気が無くなった「最後の手段」と位置づけている。冷蔵庫やオーブン、炊飯器、トースターなどは、使いたいけれど、あてにはできない。

 一番困るのは、やはり冷蔵庫・冷凍庫が使えないことだ。肉も野菜も常温で保存するしかなく、当然、傷みやすい。だから、発酵させたり、酢漬けにしたり、油漬けにしたり、乾燥させたりと、あの手この手で少しでも日持ちできるように試行錯誤している。それはそれで、メニューの魅力になればいいなとは思うのだが。

 とはいえ、こうした努力にも限界があるから、冷蔵庫を常時動かせるくらいの大容量のバッテリーを購入してなんとか対応できないかと検討している。

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