見出し画像

バンコクで携帯なくす

関空を出た飛行機は、深夜にバンコクへ到着した。その日は空港近くのホテルに泊まり、翌日、昼頃にチェックアウト、再びタクシーで空港に向かったのだが・・・。タイ航空のカウンターでチェックインしようと思ったら、定位置の肩掛けバッグにあるはずのiPhoneがなくなっている。
 慌てて空港ロビーをあちこち探したが見つからず、ホテルに引き返すことにした。ホテルでも見つからず、「iPhoneだったら、GPSでどこにあるか見られるよ」と、フロントのお姉さんのアドバイスで、かばんに入れていたiPadで検索してみた。すると、バンコク市街地のとある駅近くの大通りに、件のiPhoneが表示された。「呼び出す」ボタンで音を鳴らしてみたが何も反応はない。すると、iPhoneは地図上で路地に入ったり大通りに出たり、バンコクの市街地を行ったり来たりしている。これには、「ああ、誰かが持って行っちゃったね」とお姉さんもため息。
 時間をかければ、追跡して見つけ出すことが出来なくもなさそうだったが、問題はパキスタン行きの飛行機があと4時間後であること。また空港では、帰来のパキスタン駐在友だちで、同じ便でイスラマバードへ向かう予定の桑野さんと合流し、久しぶりに乾杯する予定があった。今どこにiPhoneがあるのかが分かっているだけに何とも歯痒かったが、探していたらどちらも間に合わなくなると、泣く泣く、取り戻すのを諦めた。
 結局、携帯を無くしただけの一日になってしまい、意気消沈。iPhoneをなくすとワッツアップもラインもできず、まるで翼を失った鳥になった気分だった。
 ただ、空港ではなんとか桑野さんと落ち合うことができ、出発ロビーのレストランに入ると、早速生ビールで乾杯した。店員さんが注文を取りに来るまでの酒の肴にしようと、早速iPhoneを落とした話をすると、「おれも、バンコクではパスポートと携帯と、免許証とか全部入ったカードケースを落としたことあるよ」と、桑野さんがビックリするようなことを言う。「日本人はバンコクに来ると浮かれて油断するからね。タクシーの番号は必ず覚えた方がいいよ~」。そうやって赤ら顔で鷹揚な桑野さんと話していたら、iPhoneを無くしたぼくのダメージも、ビールと一緒に流れていった。ありがとう、桑野さん!  

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?