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私が大人になったと感じた日。

「大人」ってなんだろう。

成人したら、就職したら、自分でお金を稼ぎ始めたら、好きにお菓子を買えるようになったら。

「子供」に戻りたいと思ったら、それが「大人」の証だよって言われたこともあるけど。

たくさん色んなことを言われてきたけど、それでもやっぱりなかなか「大人」ってなんなのかわからない。

早く「大人」になりたいと思ってた頃、どんな大人を想像してたっけ。

3/10。
おばあちゃんの誕生日。

大好きだったおばあちゃんは、私が小学生の頃に天国に旅立った。
同じ都内に住んでたから、おばあちゃんちにはよく遊びに行った。

おばあちゃんのおうちは二階建て。
階段はギシギシいうし、上の階はなんだか暗くて、ちょっぴり怖くてあんまり行かなかった。
それに二階には私の母の思い出の物もたくさん残っていて、私の知らない母が溢れてることも、なんだかドキドキした。

リビングの横に、広い部屋があって、昼間はそこでぬいぐるみにかこまれて遊んだ。
ピアノやマッサージ機もあって、それも全部遊び道具にした。漫画もあって、21エモンとかはおばあちゃんちで知った。小さいテレビもあったから、笑点はそこで見てた。
一人でぬいぐるみをいくつも使っておままごとをしてる時に、ふすまを開けてこっそり覗いてるおばあちゃんを見つけたときは、なんだか恥ずかしくて「見ないで!」って怒った。

おばあちゃんはくすくす笑ってた。

おばあちゃんと一緒にお風呂に入るときは、タオルを持ち込む。
浴槽でタオルに空気を入れつつ沈ませて、クラゲみたいにして遊んだ。ふくらんだところをぎゅっと握って、ぶくぶく空気が泡になって消えていくのを楽しんだ。

想像力の強かった私は、おばあちゃんが自分の頭を洗ってて私を見ていない間にお風呂の底が割れて、そしたら海に繋がっててサメが襲ってくるんじゃないか、私は流されちゃうんじゃないかと思ってビクビクしてた。

お風呂を出てバスタオルでわしゃわしゃ拭いて、濡れながら逃げ出したら怒られたりしながら、おばあちゃんちの冷蔵庫に必ず常備されてるフルーツ牛乳を飲むのが大好きな時間だった。お風呂上がりのフルーツ牛乳、本当にいいよね。

ほかほかしながら少しひやりとするパジャマをきて、アイスを食べる。

そしたらそろそろ眠る時間。
おばあちゃんの隣でお布団に入る。
なんとなーく天井を見上げてると、天井のシミが人の顔に見えてきて怖かった。昼間にあんなに遊んだぬいぐるみ達が、動き出しそうで怖かった。

でも朝になれば、おばあちゃんちはあったかくて優しくて、ずっといたかった。

お泊まりした次の日の夜、お風呂に入ってパジャマに着替えてフルーツ牛乳を飲む。その前後くらいに、母が迎えにくる。

少し母もゆっくりしてから、「さ、そろそろ帰ろうか」と呼ばれて。

少し冷たい廊下を歩いて、毛布にくるまれる。

くるまれて母に抱っこされながらすっかり暗くなった外に出る。

車の後部座席に乗せられて、窓越しにおばあちゃんにバイバイと手を振って、いつもこの瞬間が寂しくて寂しくてたまらなかった。

車に揺られて自宅に向かっていると、うとうとしてきてぐっすり眠る。

おうちに着いたとき何よりも大好きだったのが、眠ったままの私を母が抱き上げておうちの中まで運んでくれること。

それをしてほしくて、おうちに着いていることは分かっているのに寝たふりをしたことが何度もあった。

でも、私が大人になったと感じた日。

おうちについて、いつも通りに母が私を抱っこしようとすると、もう重くて持ち上げられない。

「もう自分で起きて歩いてね」

と起こされたとき、なんだか妙に悲しくなった。

これからはもう抱っこしてもらえないんだ。

自分で歩かなきゃいけないんだ。

ずっと子供のまま全部してもらうわけにいかないんだ。

なんだかとっても寂しくて、この時のことを覚えてる。

これが私が「大人」に近づいたと感じた日。

そうやってじわじわと少しずつ、気づかないうちにも「大人」になって、小学2年生頃におばあちゃんは天国に旅立った。

母の心のほうが大変だったのは当たり前で、でも私も覚えてすらいないけど、学校の授業中にぼろりと泣き出して先生が心配したらしい。

あの時「大人」に近づいたと思った。

でも、今の私は自分を「大人にならなきゃいけないのに、なりきれてない大人」だと感じてる。

大人ってなんだろう。

いつになったら「大人」になるんだろう。

心も体も完全に大人になんてなるのかなぁ。

少しずついろんなことを経験して、少しずつ自分の気持ちと向き合うことができたり、人との出会いに泣いたり笑ったり。

できればまだまだ自由でいたいな。

3/10はおばあちゃんの誕生日。

私がこれからまだまだどんな風に成長するか、ずっと見守っていてほしいな。

前向きじゃない時もたくさんある。もうこれ以上無理って思うこともたくさんある。体が動かない時も、心が潰されてしまうときもある。生きていることが辛くなってしまったりもする。

まだ自信をもって誇れる自分ではないから、仏壇の前で手を合わせられなかったりする。

だけど、まだ頑張りたいと思ってるから、なんとか見守っていてほしい。

大人になりきれていない私を、くすくす笑ったり、「駄目ねぇ」とか言いつつ側にいてくれてたらな。

たくさんたくさん愛情をもらったことだけはずっと心に残ってるから、その思い出を少しずつ溶かして受け入れて、おばあちゃんが大切にしてくれた私を、私自身も私を大切にしてあげたいなぁと思う。それってなかなか難しいことだなぁと最近感じているけれど。

おばあちゃん、お誕生日おめでとう。

私を大事にしてくれてありがとう。

たくさんの愛が天国に届きますように。


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