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飛行機と空港が大嫌いだった頃。

15-20歳の時、イギリスに1人で寮に住んでいた。

自分で決めた演劇留学。
今でも本当に行ってよかったしやりきってよかったと思う。一度も後悔なんてしてないし、留学はいつかまたしたいと思う。あの留学は、私を救ってくれて、私の人生を豊かにしてくれたと断言できる。

でも、やっぱり日本に一時帰国するとこのまま日本にいたくていたくてたまらなかった。

家族が恋しい。

何度も泣いた。
ホームシックなんてなったことない、という友達が羨ましかった。

その時の私にとってイギリスは「現実の国」。
戦わなくてはいけない国。

毎日まいにち、朝起きたら鏡に向かって「大丈夫」と唱えながら学校に行っていた。自分のことは全て自分でやらなきゃいけない。やっといて、なんて甘えられる大人はいない。

それでも昨日できなかった会話が今日はできてる、明日はこのフレーズを使ってみよう。ダンス上手くできるかな。台本がうまく読めるかな…歌が褒められた!今日も問題なく過ごせた…
不安と共に、毎日自分が成長できていくのを感じるのは嬉しかった。
行ってしまえばなんとかなる。それもわかっていた。

ただ、母と別れるまでのあの空港の待ち時間が大嫌いだった。
前日は眠れないし、ご飯は喉を通らない。
検査時間のギリギリまで一緒にいて、通った後はガラス越しに手を振った。

空港と飛行機が大嫌いだった。
飛行機に乗ると、イギリスへ旅行に行くのであろうカップルの楽しそうな会話、ツアーの人たちの浮き足立った声。

同じ国に行くのに、この人たちは楽しみで行くんだな。となんだか憎々しい気持ちもあった。
ビジネスで行くのか、スーツの人の隣に座ると少しホッとしたし、一人旅の人が隣になると、なんだか味方ができたような気持ちになった。
12時間のフライト、隣がどんな人になるかで私の気持ちは大きく揺れていた。

私なんて、イギリスに着いたらそこから学校までまた何時間もかかって、寮についたら休む暇なく、一時帰国前に一度全て自室から片付けた自分の私物を学校の倉庫から引きずり出し、部屋と倉庫を何往復もするんだ。
リネン室からシーツと枕カバーなんかも出して、ベッドのメイキングをして、ようやくシャワーを浴びて。今日は他の寮生に急かされずにゆっくり浴びれるだろうか。夕飯は食べられる時間じゃないかもしれない。持ってきたカップラーメンを食べよう。そしたら明日はもう、朝6時から学校の始まりだ。

みんなはどこに行くんだろう。

楽しそうな声を空港や飛行機で聞くたびに、なんだか耳に薄い膜が張ったような気がしていた。

そして一時帰国をした次の日の朝は、ほぼ必ず自分が日本にいるのかイギリスにいるのか、一瞬わからなくなる。

イギリスで通っていた最後の学校

私にとってイギリスは「生きる場所」だったから。
日本に学生の途中で帰る選択肢はなかった。(私の意志で)
だから、この飛行機の間くらいのささくれていた時間は、許してほしいなと思う。
自分と戦っていたから。逃げてはいけないとわかっていたから。

楽しい思い出はたくさんあるし、冒頭でも言った通り「行ってよかった」と心から思う。私の宝物の時間で、大切な人たちや美しい風景と出会えた。

だからもう一度イギリスには帰りたいし、いつか自分が住んだところを巡ってみたいとも思う。母を連れて。
私はこんなふうに過ごしてたんだよ、戦ったんだよーって。それが本当に、今の私の自信になってるんだって。

学校に日本人は2人。私と、もう1人のうんと年下の子。だから日本語は話す機会はなし。
私の学年はこれで全員。ちなみに下段、右から2番目が私。

今でも、中高生くらいの子が1人で国際線に乗ってるのをみると、がんばれ。と思う。
明らかに緊張してる子とかいて、本当にたったこれだけの人間しか飛行機に乗ってないのに、同じ国に行くのに、心情は人それぞれなんだよなと、あの経験をしてから思う。

帰国してから数年、空港も飛行機のあの少しツンとする冷たい匂いも気持ち悪くてよりつけなかったけど。
それでも旅は好きだから、「楽しみ」のために飛行機に乗るようになったら、飛行機の匂いも平気になった。

今では飛行機に乗るのは当たり前で、旅をするのも当たり前。イギリスにいた時は「旅」じゃなかったからね。

今ではもう泣くほど飛行機が嫌だなんて思うことはないと思う。また留学するとなっても、寂しさはあっても、きっともっと明るく乗り越えられると思う。
あの10代ならではの激動の日々。
あの経験はきっと誰かに寄り添える。

あの時に頑張ってくれたおかげで、今の私は旅を楽しむことができて、搭乗前にカツサンドも食べられるようになっちゃったわけさ。おいしい。


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(そういえば最近、写真データを整理していたら当時イギリスで撮影していたデータが出てきたので、いつかnoteかインスタで、言葉を交えながら載せていきたいななんて思ってる)

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