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「ブロックチェーンは、技術としても未来像としても残念なものである」に対する反論

今回は2018年4月の初旬にバズったこの記事「ブロックチェーンは、技術としても未来像としても残念なものである」(原文はこちら)に対する反論を文章にしました。
voicyでの配信はこちらになりますのでよかったら聞いてみてください。

さて、この文章なのですが、とにかく長い。
主張が行ったり来たりする。
しかし、整理するとこの記事のいう「ブロックチェーン、残念じゃん。」ポイントは以下の3つに整理されるかと思います。

1. ブロックチェーンは決して完全無欠なデータベースなどではない
2. スマートコントラクトってホントに画期的なの?
3. 非中央集権という概念なんてニーズないよ

この3つの主張についてそれぞれ論点を掘り下げた上で、我々の見解を述べたいと思います。

まず1つ目のブロックチェーンは完璧なデータベースではない問題についてから始めたいと思います。
ブロックチェーンは、技術的に捉えると

とても長い、小さなファイルの配列を作ろう。それぞれのファイルには、ファイルのハッシュ値と、新しいデータと、難しい計算問題の答えを入れるようにし、データを記録してくれる人たちに、決まった時間ごとにいくらかの報酬を渡そう。

というものです。
だから、ある1個のブロックの内容を書き換えようと思っても、連鎖的に他のブロックの内容も書き換える必要があり、これは無理だよね。という話。
つまり、一度ブロック内に格納された情報に関するセキュリティは非常に堅牢と言えるわけです。
さて、ここでは、ウォルマートがブロックチェーンの実証実験を始めた事例が挙げられていて、

誰かが、「マンゴーの収穫者が、データ入力を怠っているんだ。困ったなあ」とぼやいていたら、「それはブロックチェーンが解決してくれる。まず、とても長い、小さなファイルの配列を作ろう。それぞれのファイルには、ファイルのハッシュ値と・・・」と提案するのはバカバカしい。

とブロックチェーンをディスっています。
しかし、そもそもウォルマートがやろうとしているのは複雑な食のサプライチェーンをブロックチェーンを用いて解決するということで、その目的は、中国の食料品サプライチェーンにおけるトラッキングやトレーサビリティ、安全性を向上させることだと書かれています。(こちらの記事参照)

つまり、データの入力に関してはノーコメントです。なので、ここを批判するのはお門違いです。
データ入力もブロックチェーンが解決するんだよ!って主張するバカがいたら、そいつからそっと離れて距離を置きましょう。それだけの話です。

データ入力に関しては、後半でさらにブロックチェーンの方が問題を引き起こすかもしれないと主張されています。

ブロックチェーンを使うことで、データを「入力する」人を信頼できるようになるわけでもない。唯一のメリットは、「後から」データの改ざんをすることが難しくなるというだけだ。
ブロックチェーンに「今回収穫したマンゴーは無農薬です」と嘘のデータを入力することだってありえる。腐敗した政府であれば、ブロックチェーンによる投票システムをいったん作っておいて、そのうえで独裁政権側の徒党が100万人分ほど、追加で投票できるようにしてしまえばいい

この虚偽のデータ入力はブロックチェーンでは解決できないという点は全くその通りですね。
なので、ダブルチェックやら政府に対する第3者機関の監視などが必要になるでしょう。

では次。スマートコントラクトの問題ですね。

ここでは、まず最初に既存のシステムの説明がされています。
例えばAmazonで本を買った場合、我々消費者はその後Amazonが本を郵送することを信じて祈っています。
もし、Amazonが裏切って本を送らなかったら、VISAやMastercardに連絡して返金してもらえばOKです。

一方、スマートコントラクトの場合、これと同等またはそれ以上のことが以下の2点からできないと主張されています。

1.そのスマートコントラクトが安全かどうかを確認しなければならないこと
2.ブロックチェーン愛好家が確認しても発見できなかったバグを普通の消費者が発見できるわけがないこと

そして、一般の人はスマートコントラクトの中身を確認しないし、ブロックチェーン愛好家が確認してもバグを発見できなかったから、DAO事件で5,000万ドルも奪われたよね。と主張しています。

うーん、事例が古いよね。
これ2016年の事件じゃん。
スマートコントラクトの概念自体がまだ全然新しい時に起こった事件を引き合いに出されてもね。っていう印象です。
さらに今では、ブロックチェーン愛好家が確認したスマートコントラクトのパッケージがあります。OpenZeppelinといって、誰でも安全にクラウドセールやトークン発行を行うことができます。

また、購入者はわざわざスマートコントラクトにバグや罠が仕掛けられてないか確認する必要があると書いてありますが、普段我々がAmazonで本買う時に、「Amazonのコードにはバグがあって、俺がポチッと購入ボタンを押しても本が届かないかもしれないからちゃんと見ないとな。」なんて考えないでしょう。
これがスマートコントラクトの場合のみ、コードを確認しないといけないっていう理屈はよく分からないですね。

最後に非中央集権化という概念なんて誰も望んでいないという点。

これは一理あると思います。
先程VISAやMastercardなら返金できるよね。という話がありましたが、同じことはビットコインにはできません。
食に関しても

ファーマーズマーケットやオーガニック食品の規制のように、本当に価値のあるアイデアは既に私たちのそばにある。

のように、既存のシステムやアイデアで十分だと主張しているわけです。

非中央集権化というアイデアは画期的だし、大変魅力的なアイデアですが、世の中の全てが非中央集権化した方がいいとは思いません。

僕の考えでは、これは、ブロックチェーンのメリット・デメリットを精査した上で業界・業務別に適用させていくのがいいのではないかと思っています。
中央集権するべき部分と非中央集権するべき部分でしっかりと議論していきましょうということですね。
ぱっと思いつくのはウォルマートがやってるっていうサプライチェーンまわりや、ヘルスケア、シェアリングエコノミーあたりですかね。
あとは多分せいやさんがいろいろ書いてくれるはず。

今日はこんなところで。
それでは皆さん良い仮想通貨ライフを!

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