野上直樹

ノガミ産業での記録をしていきます。 ホームページ https://nogami-ku…

野上直樹

ノガミ産業での記録をしていきます。 ホームページ https://nogami-kurobuta.com/

最近の記事

脂肪酸は遊離や化学変化すると風味物質に

和牛肉は水分が赤肉よりかなり少なく、粗脂肪含量がとても多いことが特徴ですが、その食味はしつこさよりも、ジューシーさを感じさせます。これは和牛脂肪では主にオレイン酸が多くとても融点が低いため、口内で脂肪が容易に溶け、液体となって多汁性を感じさせるからです。 ここが牛肉と豚肉の大きな違いです。豚肉ではオレイン酸が多くなるとにより融点が低下することもあるのですが、多くはリノール酸が多くなって融点が低下します。融点が低いとジューシーさが高まることも考えられなくはないのですが、筋肉内脂

    • 霜降り豚肉の特徴

      豚肉における筋肉内脂肪含量は、驚くかもしれませんが、豚肉では輸入の赤身ロースで1~2%、国産だと2~3%、TOKYOXやしもふりレッドなど比較的サシが多いとされる豚肉でも5%程度なのです。豚肉では、おおむね4%を超えると霜降りとして良いと思います。 つまり霜降り豚肉は、霜降り牛肉と比べて筋肉内の粗脂肪が10分の1ほどしかなく、鶏肉のモモと同じようなレベルです。豚肉では1%の脂肪の違いでも見栄えが少しながら異なり、多くの人は2%の差があれば見栄えや食味の違いを感じることができる

      • 肉中の主な生理物質

        豚肉には体の代謝を調整する様々な生理活性物質が含まれています。例えばセロトニンは精神安定に重要で、カルニチンは脂肪燃焼に必須です。カルノシンは抗酸化作用を有し、タウリンは心臓、血管、肝臓、膵臓で色々な働きをしています。 「豚肉品質の科学と向上技術」第1章Columnより

        • 家畜で利用されているステロイドホルモンとペプチドホルモンの違い

          家畜においても各種のホルモン剤が肥育や免疫学的去勢などに利用されています。 ホルモンは、大きくステロイド系とペプチド系に分けられるのですが、この2種には大きな違いがあります。 ステロイドホルモンは体内でコレステロールから作られ、人と家畜で全く同じ物質です。北米では効率的な赤身生産のため性ステロイドホルモン剤あるいはその人工物がりよされています。 一方、EUや日本はステロイドホルモンを家畜には利用していません。ペプチドホルモンはアミノ酸から作られ、種によって違いがあります。家畜

        脂肪酸は遊離や化学変化すると風味物質に

          唾液と多汁性

          食品を食べると、口の中で唾液が分泌されます。肉を食べると、肉汁や溶けた脂が唾液分泌を刺激し、さらにジューシー感が増し、美味しさを感じさせます。つまり、一般的に、豚肉のジューシーさは、肉の保水力が高いほど、脂肪やゼラチンが多いほど、また唾液が分泌するほど、高く感じられることになります。 「豚肉品質の向上と向上技術」第1章 Columnより

          唾液と多汁性

          「動物福祉学」第2章 第3節より 動物福祉が思想から法律へと姿を変えているEUでは、繁殖豚の繁殖ストール飼育を2013年から禁止している。 一方で、分娩前後のストール使用については、EUでもしようが認められている。母豚が自由に動くことができるペンでの分娩は、子豚の圧死率が増加することが考えられるからである。しかし、自然下へ野生化した家畜豚では子豚の圧死はほとんど認められないことから、現在、分娩ストールをしようしないFree Following Systemの研究が進められて

          家畜福祉の歴史と現状

          「家畜福祉学」第2章 第1節より 2005年に実施されたユーロバロメーターと呼ばれるEU版の世論調査による約2万5千万人もの市民の回答が基になっている印象的な結果は、 ・EU市民の約7割は、家畜を飼っている農場を訪問した経験がある。 ・約7割は自らの購買行動により家畜福祉が改善されると考えている。 ・約4割はゲージフリーの卵を購入している。 ・約6割は福祉的飼育システムで生産された卵に、割増単価を支払っても良      いと考えている。 ・約6割は自国政府の農業政策において

          家畜福祉の歴史と現状

          新たな生理学的ストレス評価法

          「動物福祉学」(第4節)より 生理学的ストレス評価の指標としてよく使用されているのは血中グルココルチコイド(コルチゾール)であるが、採血は侵襲的であり、それ自体がコルチゾール値の上昇につながる可能性を考慮する必要がある。 近年、コルチゾールが糞便や尿、唾液、乳汁、被毛などに移行することが明らかになっており、痛みや苦痛を伴わずに採取でき、ストレス評価への検討が注目されている。 一般的に血中コルチゾール濃度から慢性ストレスを捉えることは難しいとされるが、糞便や尿中、乳汁中におけ

          新たな生理学的ストレス評価法

          動物愛護と動物福祉

          「動物福祉学」より 人が動物をかわいがる気持ちを持つことが動物愛護ということになる。すなわち、動物愛護では、人が主体となっている点が特徴的であると言えよう。 一方、動物福祉とは動物の状態のことであり、動物の状態を科学により客観的に定量する。すなわち、動物愛護とは異なり、動物福祉では、動物が主体となっていることが分かる。 日本の動物愛護管理法の最初の第一章、第二条には、動物への修飾語は「命ある」となっている。 一方、動物福祉については、EUのアムステルダム条約では、動物への

          動物愛護と動物福祉

          動物への配慮の日本史

          「動物福祉学」より 西洋的な「人と自然」といった対立的観念ではなく、日本には、共生の世界観が存在することが見てとれる。また、このあらゆる森羅万象に神が宿るという世界観は、動物だけを食べないという発想には至りにくく、日本に菜食主義者が少ない(肉食主義者が多い)理由の1つともされている。 仏教の教えが書かれた仏典(キリスト教でいうところの聖書)には、仏教徒が守るべき倫理基準として五戒が定められており、そのうちの1つに不殺生、すなわち生き物を故意に殺してはならないことが記載され

          動物への配慮の日本史

          動物への配慮の世界史

          「動物福祉学」より 動物福祉の思想の発祥は、欧州に由来するものであり、そこでは、意外にも激しい動物虐待の歴史があった。しかし、思想の転換や社会問題などを経て、動物福祉が科学的な根拠に基づいて定義され、広まっていった。

          動物への配慮の世界史

          動物福祉とは

          「動物福祉学」新村毅 著 より 動物福祉とは、動物の生活と市の状況に関連した動物の身体的および心理的状態を意味する。 動物福祉とは屠殺も含めた生存期間中の動物の体や心の連続的な状態を意味し、不快(マイナス)の部分を最小にし、快(プラス)の部分を最大にすることが動物福祉の向上につながると理解することができる。

          動物福祉とは

          動物との共存

          ここ3年間、豚のストレスを軽減出来る方法を模索し、地元企業・地元大学と肥育試験に取り組んでいる。 1年目はたまたま良い傾向があるとの結果が出ただけだと半信半疑だったが、3年間で感覚が掴めてきた。 毎日の放牧を繰り返すだけでも、半月も経つと豚の性格が落ち着いてくるのが分かる。 ましてや、食べ物に工夫を加えたら、しばらく経つと少々の物音ではビビらない。おっとり豚ちゃん達だ。 豚に限らず、家畜全般、いやペットに至るまで、ヒトと飼われている動物は、全てに自由な環境を与えられている訳で

          動物との共存

          子豚の鉄剤

          chatgptより引用 授乳中の子豚に鉄剤を投与することは、非常に重要です。子豚は生後数日で鉄の欠乏状態に陥りやすく、これを予防するために鉄剤の投与が必要です。以下はその理由と重要性を詳述します。 鉄の欠乏症のリスク 生後の子豚の鉄レベル:子豚は生まれた時に限られた量の鉄を体内に持っています。自然環境では、子豚は母親のふんから鉄を摂取できますが、現代の飼育環境ではその機会が限られているため、鉄の補給が必要となります。 母乳の鉄分:母乳に含まれる鉄分は非常に少なく、子豚の