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"特別"な関係が描かれている乃木坂46のMV

 "特別"ってなんだと言われたらトップ画像を見て欲しいのですが、乃木坂46のMVってたまにそういう描写を含む作品がありますよね。友人のススメで洋画『キャロル』鑑賞会をした時に「こういう系の映像作品無い?」と聞かれたので「そういえば乃木坂にあったな……」と思ったのでいずれ紹介するとき用にMVとお気に入りの関係を書きます。

ハルジオンが咲く頃

 王道中の王道。いわゆる"エス"の関係が随所に描かれているMVです。エスとは詳しくはwikipediaを参照してほしいのですが、戦前からある女学校内に置ける特別な関係の事を言います。

メンバーは大正時代の歌劇団の団員に扮し、グループからの卒業を発表している同曲のセンター・深川麻衣は歌劇団を卒業する女性の役に。また堀未央奈が彼女の卒業を知らずに劇団に入って来る新入生を演じ、MVでは2人のやりとりや劇団員の様子などが、歌唱シーンとともに描かれる。

 これに関しては王道すぎて特別語らなくても分かる人なら如何に素晴らしいかが分かっていただけると思います。多くの人がイメージするエスがそのまま落とし込まれているので。
 憧れのお姉様深川麻衣が卒業を間近に控えており、お姉様に好意を寄せる白石麻衣衛藤美彩。序盤の椅子取りゲームで椅子に座れず立ち尽くしている深川麻衣を、衛藤美彩が腕を掴んでどこかへ連れて行ってしまいます。それを見た白石麻衣は慌てて後を追い掛けます。それをきっかけに全員が椅子から立ち上がり、想い想いの相手と一緒に部屋を飛び出していきます。次々に明らかになる歌劇団員の関係を軸に、物語が進んでいきます。

 とまああらすじを書いたは良いものの、ドラマ仕立てなMVでありがちというか、どんなストーリーかは映像を見て各々考えるしか無く、尺も大体5分以内なので十分に描かれないことが多いのですが、それが却ってそれぞれの関係性への妄想を掻き立てるんですよね。私はこういうの大好きです。
 しかも配役は明らかにメンバーのリアルな人間関係を落とし込んだものになっています。メイキングでは監督がどういった好意を抱いているのかを桜井玲香若月佑美に説明しているシーンが有りました。素晴らしい監督だと思います。はい。

橋本奈々未×齋藤飛鳥

 それで!!!! 激烈に私が推したいのが橋本奈々未齋藤飛鳥の関係です!!!! 向かって右側の眼鏡の女性が橋本奈々未さんで、膝に頭を乗せて寝ているのが齋藤飛鳥さんです。

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 橋本奈々未さんは知的でクールな大人な女性(眼鏡とか天才か?)で、齋藤飛鳥さんはまだまだ幼くてちょっとワガママな少女です。見てもらえば分かるように、完全に橋本さんに甘えています。実際の2人も年上メンバーである橋本さんに対して飛鳥さんは初期の頃から懐いていたり最も尊敬する人物に挙げたり橋本さんの卒業ライブではかつて無いほどの大粒の涙を流して別れを惜しんでいました。だからなんでしょうね。もうこの2人が居るってだけで「いいなぁ……」って思ってしまうのは。

齋藤「美しいものが好きなの。私は、お姉様のような」

 MVには入っていませんが、メイキングでは上記のセリフのシーンがあります。いやー、言うことはないです。素晴らしいです。

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 次に出てくるこのシーン。隣りにいるのは橋本さんではなく星野みなみさんです。ここでの注目ポイントは眼鏡ですね、眼鏡。個人的に眼鏡好きっていうのもあるんですけどそれを抜きにして眼鏡です。
 残念な(?)ことにこの眼鏡は橋本さんが掛けているものと異なる形状のものなので、ド定番のお姉様から頂いた・受け継いだ眼鏡を掛けているという展開ではないのですが、それはそれとしてこのMV中で眼鏡を掛けているのは橋本さんと飛鳥さんのみです。
 しかし飛鳥さんは先程のシーンでは眼鏡を掛けていませんでしたがこのシーンでは掛けています。勝手な想像ですが、憧れ・大好きなお姉様のようになりたいとまず見た目から近づけていこうとしているのではないでしょうか。しかし当のお姉様には知られたくないから、本人の居ないところでだけ掛けている……とかでしょうか。大穴として、お姉様が「この子は私のだから」と周りへ牽制するため掛けるよう言っていたりも考えられますね。

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 言葉にできませんもうただただ見て欲しい。このシーン何回も見返すほど大好きです。時間にして僅か13秒程ですが、13秒で2人がどんな関係なのか120%伝わると思います。本棚の隙間のように撮影しているのも素晴らしいです。他のメンバーも異なる場所で会っているので、この部屋は2人だけの空間なんでしょうね。

 ハルジオンが咲く頃に関しては以上です。久しぶりに見返すとラストの深川麻衣さん乃木坂(地名)を上りながら「努力、感謝、笑顔。うちらは乃木坂上り坂」とライブ前の円陣で言うあのフレーズを、噛みしめるように言っているのを見ると涙が出てしまいますね。

 ちなみにこのMVは日本の乃木坂46公式チャンネルではshort verになっているのですが、台湾ソニーミュージックのチャンネルではフルで見れたりします。公式チャンネルのようなので問題ないと思います。


無口なライオン

 ハルジオンが咲く頃と違い、こちらは純度100%の青春の物語。父のお仕事の都合か引っ越しに伴う転校が決まっている西野七瀬はどこか納得していない様子からMVは始まります。

桜井「10年か20年経ったら今この瞬間なんて絶対覚えてないよね」
若月「よっぽど大きいことじゃないと忘れちゃうよね」

 クラスメイトのこの雑談を聞いて、西野は家出を決意します。父のスーツのポケットにごく僅かな書き置きを残し、大きなスーツケースを抱えて。

 家出した七瀬は過去、幼馴染の若月佑美と一緒に遊んだ浜辺にある秘密基地のような場所で寝泊まりするようになります。すると、西野が大荷物を抱えて歩いているのを見かけた若月は、西野と一緒に家出してきたのか、2人で秘密基地に滞在するようになります。浜辺の倒木を整理したり、西野が大事そうに抱えていたぬいぐるみのボタンを付け直したり……。
 ある日彼女らの友人である生駒里奈桜井玲香の携帯に一緒に家でしようという旨のメールが届きます。奇しくも生駒は好きな人にフラれたばかりで、桜井は進路希望調査がずっと白紙のママ。丁度いいやとばかりに他の友人たちも誘って皆で家出をして……。

西野七瀬×若月佑美

 向かって左が西野七瀬で右が若月佑美です。
 (2人が正面向いてる画意外と少ない……)

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 このMVはこの幼馴染2人を中心に展開していきます。西野七瀬は内気で無口で、クラスでも1人で居ることが多い女の子。対照的に若月佑美は明るく社交的でクラスの中心人物です。
 かつては幼馴染で一緒に遊んだけれども、高校生にもなると昔のようにとはいかず、微妙な関係に。しかし西野はいつも若月を目で追っているし、若月はそんな西野をずっと気にかけていました。
 若月は西野が1人で居ると声をかけるし、家出に気がついて真っ先に寄り添ってくれるし、そして父親に見つかって連れ戻されそうになった時に手を引いて一緒に逃げてくれます
 手を引かれている間、西野はこれまでの事を思い出します。若月が居てくれたことで経験できた沢山の思い出が次々に浮かんできます。離れ離れになるのはもう変えることは出来ない。だから西野は、10年後も20年後も忘れられないように、ある行動に出ます西野と若月を追い掛けてきた桜井の目の前で、見られているのに気づいていながら

西野「これで10年後も20年後も、忘れないね」

 そのシーンは解禁時にそれはそれは話題になりました。是非ともフルで、その目で確かめてみてください。2人を見ている桜井の表情が凄いです。

 ちなみにこのMV、続編といいますか西野の転校先の高校のお話や、高校を卒業して2人が再会するお話が個人PVとして収録されています。

 そしてこれは偶然だと思いますが、西野七瀬と若月佑美は22枚目のシングル『帰り道は遠回りしたくなる』にて同時に卒業していきました

 それぞれの楽曲の歌詞について注目してみても面白いかもしれません。


立ち直り中

 『無口なライオン』とは異なり、こちらは紡績工場で日々働いている大人の女性のお話です。『無口なライオン』と同じ方が監督を努めています。

 主人公の橋本奈々未は幼い頃、母に理由も分からないまま1人置いていかれた経験を今でも引きずっています。その影響かずっと内気で、工場内でも他に話す人は常にみんなの輪の中心に居る白石麻衣くらいです。
 ある日白石は、今の仕事を辞めて「テレビの中の人になる」と宣言します。それを離れて聞いていた橋本は表情は見えませんが驚いた様子。唯一と言っても良い話し相手が居なくなるので不安なのかもしれません。

白石「いいところ見つけたの。工場辞める前に連れてってあげる。秘密の場所」

 一緒に帰っている白石が、橋本にそう言いました。ついていった先にあったのは既に使われていない廃温室。一緒に温室内を掃除していると、綺麗な髪飾りを見つけた橋本は白石にプレゼントし、髪につけてあげました。
 綺麗になった温室で、2人はティーセットやお菓子を持ち込み、2人だけの時間を過ごすようになります

 ある日、仕事終わりに温室で待っている白石の元へ駆けていくと、そこには同じ工場内で働く女性たちが沢山集まっていました。橋本の存在に気がついた女性たちは笑顔で手を振りますが、橋本はどこか引きつった笑顔で手を振り返します。元々あまり馴染めていなかったからか、女性たちの中に居ても1人本を読んでいるような孤立っぷり。しかし他の女性達が橋本に積極的に交流を図ろうとしていき、橋本はそれを受け入れたことで徐々に馴染んでいきます。
 ただ、彼女らを見つめる白石の表情は優しくも曇っており、気がついたときには温室から去っていました。その日以降、白石は工場にも温室にも顔を出さなくなります。橋本が探すと、白石が大きな荷物を抱えてこの街を去っていこうとする場面に出くわします。
  橋本が名前を呼ぶと、一瞬振り返ってはくれますが、歩みを止めることはありませんでした。橋本は引き止めることが出来ず、ただただ立ち尽くすばかり。
 ある日の仕事中、テレビを見ると本当にテレビの中の人になった白石の姿が映ります。が、それを見て動揺したのか、見惚れていたのか、ミシンを操作中の橋本は指を巻き込んでしまい怪我をします。かつては自分を見ていてくれた白石が居たので怪我をすることは無かったのですが、指から流れる血を見てもう白石がいないことを自覚します。

橋本奈々未×白石麻衣

 向かって左が白石麻衣、右が橋本奈々未。

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 上記の画像はきれいに片付けた温室内でお茶をするシーンです。橋本はMV中、とにかく白石の前だけよく笑います。幼い頃に母親の1件で心に傷を負っている彼女が唯一心を開いている相手ですからでしょうね。

 白石は夢がありました。でもその夢を叶えるためには工場を去る必要があります。そうなったら橋本が1人きりになってしまう。だから彼女は橋本に居場所を作ってあげました。それがあの温室です。橋本が仕事仲間と楽しそうになっているのを見てもう自分は必要ないなと彼女は自分の夢に進みます。
 自分の夢よりも、大切な人の事を最優先にした白石の優しさと橋本への想いがMVでは痛いほど伝わってきます

 橋本は白石が去った後、仕事中にテレビで白石の姿を見つけます。白石は本当にテレビの中の人となっていました。橋本はそれを見て動揺したのか、作動中のミシンに手を巻き込んでしまい、指を怪我してしまいます。昔は自分を見ていた白石が、ぼーっとている橋本に声をかけてくれたので怪我をせずにすんだのですが、今その白石はテレビの中の人です。流れる血を見て、橋本は白石が居なくなってしまったことをついに受け入れ、涙を流します

橋本「おかえり」
白石「ただいま」
橋本「テレビの中の人だ……」

 最後に、母親となった橋本とテレビの中の人となった白石はあの温室で再会します。このやり取りはただの再会の言葉ではありません。橋本が最後に母親に掛けられた言葉と繋がっています。是非MVを見て、確かめて欲しいです。

 アイドル橋本奈々未は既に乃木坂46及び芸能界を引退しています。卒業コンサートでは白石麻衣は大粒の涙を流し、言葉にならない嗚咽を漏らしながらお互いに抱き合い、お別れをしました。
 「テレビの中の人だ」の言葉が今になって染みてきます


以上です。
『シャキイズム』や『のような存在』も広義的には含まれる気がしましたが、今回は除外しました。

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