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今でも見返す好きな個人PV

 タイトルそのまんまです。楽曲系は敢えて省いています。あと最近のは出てこないです。

 怖い方はこっち。

『October 28』橋本奈々未

 13thに収録されている橋本奈々未の個人PV。いわゆるループもので、何故か10月28日から抜け出せなくなり、しかも28日が終わったら時間が巻き戻るだけじゃなく、28日の20時に死んで朝にループするというもの。似たような作品だと誕生日に死んで朝からやり直す『ハッピー・デスデイ』なんかが近いのかもしれない。

 このPVの好きなところは同じ時間を繰り返すという結構重めの設定ながら内容は単なるコメディなところ。この手のループものの作品は恋人の死を回避するとか、永遠に同じ時間を繰り返して発狂しそうになるとか、そんな展開が多い印象だけど、朝起きて、乃木坂のCD買いに行こうとする通行人とすれ違い、アルバイトをして常連客に料理を提供して、それを不味いと酷評されて死ぬというだいぶ軽い内容。

 何よりPV内での橋本奈々未の行動が、ファンとしてイメージする橋本奈々未の行動とほぼほぼ一致するので見ていて違和感がなく、見てて楽しい。すれ違う通行人にバリエーション豊富なちょっかいを出したり、死ぬのを分かっていながらバイトする自分にキレたり、パスタを酷評した客を見返してやろうとしたり……。
 個人"PV"の役割として完璧。彼女はこういう人間ですというのを、フィクションでしかありえない設定で描いてくれている。他の個人PVだと突飛な設定があったりしてそれも魅力なんだけど、5~10分程度という尺で描ききれずに消化不良で終わったりするので……。

 ちなみに橋本奈々未の個人PVだと、14thの『ヤング・アメリカン』も独特な空気感と、棘やら悪意やらある学校教師の彼女が見れるのでどっちが良いかなあと迷った。


『ブルー、レイ』桜井玲香

 22ndに収録されている桜井玲香の個人PV。予告編公開当初から各所で言われているけれど、この個人PVは"発想の勝利"の一言に尽きる。この22ndから個人PVをDVDではなくBDに収録するようになったというメタなネタを違和感なく落とし込んでいる。

 この個人PVの好きなところは、様々な場面で画質の違いを使い分けているところ。冒頭の旧知の仲である桜井玲香に再会するシーンは非常に鮮明なBD画質。その後始まるあの頃の……という過去の回想シーンは殆どがDVD画質。但し、720×480そのままの映像もあれば、無理やり引き伸ばしてBDサイズにしたような粗い画質のときもある。かと思えば過去の映像なのにBD画質の物も出てくる。
 画質の違いは時間の流れだけでなく、多分撮影者の記憶を表現しているんだと思う。映像中でも「引き伸ばされただけか、美化されたものか」とあるから、多分間違いないと思う。720×480で小さい映像だったり、それを引き伸ばしただけの粗い映像の中で、一際綺麗な映像のシーンがいくつかある。カットが切り替わるごとに、ここは粗いな、ここは綺麗だな、だから撮影者はこう思ってるんだろうなという見方が出来る。個人PVのストーリーや演技に注目することはあっても、映像そのものに注目するというのは多分このPVだけだと思う。

 最後、今現在のシーンに戻ってきたとき、ずっと鮮明な映像だったのに、桜井玲香の名字が変わるという突然の告白の直後一気に映像が粗くなる。どういう演出かは言わなくても分かると思う。時間の流れだけでなく、主人公の視点での感情まで画質だけを用いて表現してるのが本当に秀逸だ。
 名字が青井(ないし蒼井)になるというのもタイトルに有る『ブルー、レイ』にかかっていて面白い。もし桜井玲香を担当することになってここまで思いついたんだとしたら伊藤衆人は天才だと思う。

 桜井玲香の個人PVだと他に『夏のせい。』『アイラブユー』『こわい』も好き。顔立ちがはっきりしていて表情もコロコロ変わるから撮る時に楽しそうだなあって思う。


『時空超越アイドル イマガール』鈴木絢音×渡辺みり愛

 12thに収録されている"ペアPV"の一つ。 12thはペアPVということで、2人で一緒のことをしたり、キャラクターの異なる2人を対立させたり、様々な試みがあって非常に面白いのですが、中でも一番好きなのはこれです。

 まず設定が神過去から来た少女"カコ"(渡辺みり愛)と未来から来た少女"ミライ"(鈴木絢音)が一緒にトップアイドルを目指す物語。何もかもが違う2人の女の子がトップアイドルを目指す、超時空SF作品って聞いたらまあどう考えてもマク○スパロディだよねって思いますよね。私もそう思います。
 二人とも当時の乃木坂最年少の2人で、今回の過去と未来という設定に合うのかなあという心配はあったんですけど完璧すぎますよね。昭和から1番遠いはずなのに、渡辺みり愛のドレス姿はあどけなくて可愛いですし、誰も見たことのない未来の機械的な格好をしている鈴木絢音は知的でクールです。確かブログにも書かれてたと思うんですけど、銀髪のおかっぱが似合うっていうのは相当顔の造形がいい人だと思うんです。

 見た目や設定が割とぶっ飛んでいるのですが、肝心のストーリーは至って王道なのがいい。生まれた時代も何もかもが違うけれど、アイドルになりたいという夢は一緒で、2人意気投合して一緒にトップアイドルを目指そうというストーリー。
 「一緒に目指そうよ! トップアイドル!」というカコの発言はつい最近研究生から正規メンバーに昇格したメンバーが言うというのもちょっと胸が熱くなりますね。2人で披露するこの個人PVのために書き下ろされた歌は必聴です。技術的には全然だけれど、だからこそアイドルを目指して始まったばかりの2人という感じがして、とても味のある歌です。
 この設定をそのまま使った短編も見てみたいのですが、カコが卒業してしまったので叶いませんね。残念。

個人的に12thのペアPVは傑作揃いだと思います。特に
先述した演技派2人の「夏のせい。」
表現に命をかける2人の「踊るバカ、神様の嫉妬」
可愛い2人のミステリー「私がやりました」
白黒映像とLINEのみで展開する「あなたがキライ」
辺りでしょうか。今また見返すと新しい発見がありそうです。


『また、茶でも』深川麻衣

 13thに収録されている深川麻衣の個人PVです。"聖母"と呼ばれる彼女が学校の先生、となると色々と期待してしまうのですが、いい意味で裏切られた作品。卒業後女優として活躍する彼女の可能性の一つではないでしょうか。

 このPVの好きなところはなんと言っても"狂気"なところにあると思います。予告編でも既に怪しいのですが、特に「ナメてくる生徒」という実際の彼女から出てくるとは思えない乱暴な言葉にまず引っかかります。火がついたばかりのマッチを花瓶の花に落とし、洋楽をバックに薄暗い教室で踊る先生。どう考えても常軌を逸しているのですが、だからこそ目が離せない魔力があります

 場面は変わって親御さんとの面談のシーン。会話内容から考えて間違いなく西野七瀬の両親でしょう。良い先生だと褒める両親の前に、深沢先生は何も入っていない空っぽと器を差し出します。戸惑う両親を前に深沢先生は空の器に口をつけて"何か"を飲み干すと、その不気味な圧力を前に父親が器に口をつけて飲み干すフリをします。それを見て深沢先生は「お上手ですね」と拍手して褒めるのですが、まあ目が笑ってません。しかも分かっててこれをやっているという。

 その後早口で西野七瀬について「真面目でいい子だけど、ちょっと他の人の言うことを聞きすぎる」というのをかなりの早口で捲し立てます。このときの横からのカット、上唇が綺麗で好き。面談のはずが両親からの質問も何も受け付けず、良い終わりやいなや立ち上がって会議があるからと部屋から出ていきます。呆気にとられる両親の前に最後に顔を出して、

「私、嘘つきなんです」

 最高ですね。

 言わなくても分かると思いますが、13thの西野七瀬個人PVと繋がっています。そちらから見ても面白いかもしれません。深沢先生が大嘘つきであることが分かります。しかもこっちもだいぶ狂気的です。

 映画なり舞台なり演技仕事でも無ければ見られない、乃木坂46のメンバーの狂気的な演技が見れるのが個人PVの何よりの良いところだと思うんですよ。もっと増えて欲しい。


『憂えぬ蚕の市』寺田蘭世

 17thの寺田蘭世の個人PVです。メンバーの中でも特に個性的な一面をを持ちつつ、強い意志というか芯のある彼女らしさに溢れる作品です。

 フリーマーケットにて彼氏との思い出の品を処分しようとする寺田蘭世と、たまたま隣り合った変なおじさんのお話です。絶妙な空気感がたまらない。珍妙なBGMが延々ループするにも関わらず聞いてて苦にならないし、演技している感が無い自然体な演技が良い。

 彼氏のことなんてさっさと忘れたいであろう蘭世ですが、品物は全然売れません。1人興味を持ってくれたお姉さんに自信満々に営業を掛けますが、すぐに逃げられてしまいます。対照的に隣のおじさんは品揃えが良いのか次々と売れていきますし、フリマ特有の値段交渉でちょっと強気の値段を掲示しても売れていきます。
 電車賃や参加費を考えると赤字になるとすっかりしょげる蘭世。見かねたおじさんは果物を差し出して「食べる?」と聞きますが「要りません」と即答する蘭世が蘭世らしい。まあ次のカットで美味しそうに食べてるんですけど。でもっておじさんにカメラを向けられた蘭世がものすごく可愛い。アイドルらしくぶりっこするわけでなく、ちょっとノリのいい女の子といった感じでピースをしたり、照れたりするのが凄く良い。本当に良い。ここだけループする。テープが入ってないことを知ってがっかりするのも面倒くさいやつって感じで良い。

 夕方になっても蘭世の品は全然捌けません。するとそこに一組のカップルが通りかかり、おじさんは「超お似合いだね」というのですがなんと男の方は蘭世の元カレ。地雷を踏みぬいたおじさんはなぜかアコギをジャラーンと鳴らします。何を意味してるのかさっぱり分かりませんけど、まあフォローもしにくいでしょうしね。
 帰ることになって一緒にラーメン食べに行こうというおじさんに良いですねと即答する蘭世。そこからのテンポの良い掛け合いがたまらない。元カレの話をしだしたら止めない?と言ったり、タピオカについて語りだそうとしたら気になる、と言ったり……。映像がぶつ切りで終わっているのですが、さっぱりした終わり方です。

 予告編は没になったカットだそうですが、これそのまま入れても良かったんじゃないかなあと思います。というかこの2人の掛け合いを無限に見ていたい。またやってほしい。


『せかい の おわり は、』研究生

 11thに収録されている研究生最後の個人PVです。どこがどう好きか、これだけは何とも説明し難いのですが、とにかく"世界観"が好きですとだけ。

 研究生から昇格していく6人。
 この世界には6人しか居ない。
 6人で生きていく。

 なんかもう言うだけ野暮って感じですね。


 以上です。皆さんの好きな個人PVはなんですか?



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