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【読書記録】わにのおじいさんのたからもの

こんにちは。今日はちょっとした本紹介を自分の思考を整理するためにも書いていきます。
紹介する本はこちら


こちらに収録されている「わにのおじいさんのたからもの」というお話を読んでいこうかと思います。

さて、こちらの絵本、実は小学校の国語の教科書(2年生か3年生)に掲載されている作品です。中には知っている方もいらっしゃるかもしれませんね。
僕は教育実習でこの教材を扱って5年生と授業をしました(なお結果…)。なので、その遺骨を供養するためにもここに残しておきますね。

あらすじ紹介①起:わにのおじいさんとの出会い

ある日ぼうしをかぶったおにの子は、川岸を歩いていると水際で眠っているわにに出会います。わには百三十歳くらいと相当年を取っている存在です。

おにの子は「わにのおじいさん」と声を掛けますが、ぴくりとも動かないのでわにのおじいさんは死んでいるのだと思いました。

あらすじ紹介②承:やさしいおにの子

そこでおにの子は、地面に落ちているほおの木の葉を集め、わにのおじいさんにかけてあげることにします。
(おにの子、わにを見つけたのは朝なのですが夕方近くまでこの作業をやり続ます。)

半分ほどわにが葉で埋まった時、わにはようやく目を覚ましました。どうやらわには、自身の宝物を狙うやつらから逃げ続け疲れて眠っていたということがここで分かります。

あらすじ紹介③転:宝物を知らないおにの子

しかしおにの子、宝物とはどういうものなのか知りません。なんと言葉すら知らないという状態(マジ?)
どうやら、昔、ももたろうという強盗が宝物を奪い去ってしまったせいで縁がなかったという経緯があっての事らしい(ここで僕はアンチももたろうになりました。)(きび団子は好き)

みなさんがびっくりしたように、当然わにのおじいさんは驚くわけですが、あることをおにの子に伝えます。

「君に、わしのたから物をあげよう。うん、そうしよう。これでわしも心おきなくあの世へ行ける。」
「では、行っておいで。(中略)たから物ってどういうものか、君の目でたしかめるといい。」

そう言って、わにのおじいさんは目をつぶりました。

あらすじ紹介④結:宝物を見つけたおにの子

さて、わにのおじいさんから地図(実はわにの背中が宝を示す地図になっていました。)をもらったおにの子は、峠を越え、けもの道を横切り、岩あなをくぐりぬけ、森の中で迷いそうになりながら、地図の場所、がけの上にたどり着きます。

そこに立った時、おにの子は夕やけを目にします。口では言えないほど美しい夕やけを。

おにの子は思わずぼうしを取り、これが宝物なのだと、ここは世界中で一番素敵な夕やけが見られる場所なのだ、と思います。

あぁなんてステキなお話…(キュン)ーーーーーと思ったのもつかの間、ここでとんでもない事実が発覚します。

その立っている足もとに、たから物を入れた箱がうまっているのを、おにの子は知りません。おにの子は、いつまでも、夕やけを見ていました。

実はわにの言ってる宝物は別にあって、おにの子は宝物を勘違いしているぜ!というオチつきのお話だったんですね。

さて、いかがでしたか?当初、色々はしょりながら簡単に説明しようと思ったのですが、まとめきれず長々と喋ってしまいました。すいません。

ここからは、疑問を考察する前に、簡単に主題を整理しておこうと思います。

主題:宝物とは何か

ここでの主題は、宝物とは何かという問いを元に考えていいと思います。

作中に出てきた宝物は2つです。
わにのおじいさんの宝物:宝箱
おにの子の宝物:夕やけ

また、授業時に導入として「宝物ってなあに?」と聞いてみた際も、それぞれ答えはバラバラでした。(お金、家族、友達、手紙、等)

では「宝物」とは如何に定義されるのでしょうか。人によってバラバラの物を指しているのに、意味するものは一緒ってちょっと違和感ありません?

うーん………「その人にとって大切なもの」でしょうか?………でもどうしてそれはその人にとって大切なものになりえるのでしょうか。時間の蓄積とか?(これは授業で書いてもらった子どものノートに書いてありました。5年生すげえ)

結論から言うと僕は(あくまでも一個人の解釈です)、ある物を宝物だと捉える主体=心(あまりいい言葉が思いつきませんでした…)そのものが「宝物」だと作者である川崎洋は言っているのではないかと読みました。

おにの子は夕やけを宝物だと勘違いして捉えてしまいます。しかしながら、なぜそれを宝物と捉えることができたのでしょう。
そこには、おにの子の「心」、つまり、わにに葉っぱをかけてあげるという「優しさ」や、宝物を知らなかったり、わにのおじいさんをおばあさんと思ったり、動かないから死んでるかもと考えちゃうような「純粋さ」があったからこそなのではないでしょうか。

このおにの子の性格、心というものは、お話を動かすキーとして、少なくとも起承転と、常に作用していることが分かります。

優しくなかったら葉っぱをかけてあげたりはしなかったでしょう、
葉っぱをかけてもらったり、おにの子があそこまで純粋じゃなければわには宝物を教えようとはしなかったでしょう、
おにの子はあんな純粋さがなければ険しい道のりを歩いたりはしなかったでしょう………

この偶然性を必然のものとして存在させるためにおにの子の心というキーは存在しています。そう読むと結の部分においても、おにの子の「心」が宝物を夕やけと捉えることができるように作用していると読むのが自然だと僕は思いました。

物に「大切なもの」、つまり「宝物」という価値は、それを捉える主体があって初めて生まれるものです。

まあ、その人にとっての宝物が何かというのは僕は知ったこっちゃないですけど、ここでいう心、おにの子のような優しさは大事にしていきたいですね。

疑問点:わにのおじいさんについて

とまあここまで読んできて、めっちゃ語ったくせに、めっちゃひっかかてることを言っていいですか?

わにのおじいさんの立場なさすぎじゃね?

さっきまであんな感じで主題をつめてきましたが、ああなるとわにのおじいさんの宝物、つまり人が奪おうとするものは、欲の象徴であり、わには、がめついおじいさんとして、約130年の生涯を全うすることになるのです。

そんな悲しいことある?w

いやさすがにそんなことないやろ、と僕はわにを救うための思考を巡らせることにしました。

例えば、「宝物っていうから強欲な人達が奪おうとしてただけで、実はわにのおじいさんだけにとって大切なものだったんじゃない?」とか、「実は、わにも夕やけの存在を知っててそれ込みの宝物だったんじゃない?」とか。
ただ、それって結局妄想でしかないんですよね。想像力豊かにお話を膨らませていくことはとても素敵ですしお話を楽しむために大切なことですが、きっちり説明して納得したい!っていうのが僕の考えなのでお付き合いください。

まぁ、こんな話を一緒に実習に行ってた子(Aちゃん)としてたんですけど、その答えがとても素敵だと思ったので、今回はこれを1つの答えとして引用させていただきます。

そのAちゃんは言いました。

「これさぁ、わにの宝物は変わったんじゃない?」

なるほど?

「わにのおじいさんの宝物はさ、最初はその埋まっているものだったかも知れないけど、死ぬ間際でのおにの子との出会い出来事そのものが宝物になったんじゃないかなぁ。だから宝物を人に渡すことができたんじゃない?」

なるほど!!

つまり、それまで、おにの子との出会いの直近まで、短い4本足を使い、死ぬ気で自分の宝物を狙う奴らから逃げてきた、これまでのわにのバックグラウンドは知りませんが、死期を悟っている中で、あのおにの子の優しさ、純粋さに触れることで、それこそが一番大切なものにシフトしていった、というのはどうでしょう。あ、わにもそういう心を持ってたんだなぁ…素敵やなぁ…ってなりません?

この解釈により、無事わには、超強欲と思いきや、素敵な心も持ったおじいさんとして生涯の幕を閉じることができました。めでたしめでたし。

実際の授業

実はこの授業をするに当たって1つ仕掛けを行いました。

タイトルを「わにのおじいさんのたから物」ではなく「たから物」として読んでもらい、主題(そのときはどうしておにの子は夕やけを宝物だと思ったのかというテーマでやりました。)を読み取った後で、実はたから物の前に何か入る、ということを伝えました。

これ、読んでると「わにのおじいさんの」がつくのが謎すぎるんですよね。普通「おにの子の」じゃない??だから聞いたんですけど、やはり「わにのおじいさん」と答える子は一人を除いていませんでした。

ただこれは、扱うべきではなかったなと思います。指導教員からは、落とし所を作るため、これをもとに作者の意図を考えさせてみれば?と言われたのでそうしたのですが、まぁ難しかった。背伸びするもんじゃないね。

僕自身も答えがいまいちなくて(結局、きっかけはわにのおじいさんの宝物だからじゃね?とかシンプルなのかもしれないとか思ったり)みんながどう考えるのかということを楽しみにしたのですが、考える材料も時間もなかったな…

まぁ未だに謎なんで、誰かに教えてほしいですね。

教材への文句

このお話、クライマックスでぼうしをぬぐというシーンがあるのですが、これがおにの子にとって重要な場面なのに!「わにのおじいさんのたから物」しか抜粋していないがために!!この行為が何を意味しているのか考えることができない!!!

その前の話を読むと、おにの子は角を隠して生きていること、みんなと遊びたいのに角のせいで人間から怯えられてしまうことが分かります。本来自分のアイデンティティである角を隠し、偽りながら生きている、といった感じでしょうか。

その前提がないから、この表現を使いたいのに使えない!!!っていうジレンマが嫌だったなぁ。気をつけてくれよなっ

ただ題材が元々2年生で扱うようできてるんで、読んでどこに面白さがあるのか、とかこの後どうなるのかな?みたいなことを考えることができれば十分なのかな、とも思います。

面白さはやっぱり勘違いの部分ですよね。これがないのとあるのとではお話が変わってきます。僕は多目的トイレで読んでた(嘘)せいかめっちゃアンジャッシュやなぁ…と思いました💦

なんかクソだらだらしゃべってごめんなさい!
以上「わにのおじいさんのたから物」でした!


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