砂の三郎 自選短歌 口語編
ゲーム脳 2首
ヨッシーを乗り捨ててくるヒーローにこの身を賭けて挑むクリボー
蘇生なし、リセットなしと気がついて勇者は剣を捨ててしまった
若き日の生活の澱 3首
さみしいで汚れてしまう 拭っても拭ってもまだ独りぼっちだ
みりん風調味料、柚子胡椒、塩、減らないもんで嫁にこないか
涙たす鼻水かける侘しさで今日は鴨南蛮がしょっぱい
夜の戯言 3首
夜更けすぎ両手を天に突き上げて宇宙の声を受信してみる
タイピンを外して夜の気高さに一礼をする月の気心
さみしげに光る革靴色のないシティ・ポップに絆されてゆく
春
川縁に腰掛けながらあの頃のこころに注ぐファンタオレンジ
透き通る春のいのちの一脈の粒立つ音をハイレゾで聴く
青春のごわごわとした思い出を綿毛にかえよ花と春風
夏
過飽和の呪縛をといて夏空にシュッとはじける三ツ矢サイダー
手のひらを太陽にすかしてみれば神よぼくらはみんな不様だ
自販機の下でのたうちまわる蛾よビーチサンダルは慈悲のしるしぞ
秋
目を閉じて日付変更線に立つ 悲しみが今かぜに変わった
空元気夕焼け小焼けでぐっと来てやたらめったらママチャリを漕ぐ
小気味よく坂を登ったその先のミニクーパーが秋風になる
冬
軒先のつららの中に閉じ込めたミニチュアの街に朝の日がさす
たましいの受け入れ先が決まらずにくるりと回るゆきのひとひら
外側の世界の謎を紐解いてスノードームの雪が静まる
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