見出し画像

「技術へのコンプレックスがありました」 知人のCTOに聞いた転職の背景と企業の選び方。

エンジニアのキャリア支援サービス「kiitok」などを運営していますトラックレコード野崎です。弊社では、エンジニアの採用支援サービスを提供しておりますが、その過程でCTOや開発責任者の方から聞いた話をここで定期的コラムのようにシェアしていきます。

先日書いたnoteももしご興味あれば、御覧ください(300はてブしていただきました。感謝!)

今回は、実際に直近で転職をしたハイクラスエンジニアの方に伺った「企業を選ぶ軸」とその時の「判断材料」をご紹介したいと思います。

特に、以下の要素に該当する方にぜひこのnoteを読んでいただきけるとうれしいです。

1. ハイクラスエンジニアを採用したい。
2.だけど、インサイトがあまりわかっていない。
3.エンジニアが企業をどう絞っているかわからない。
4.自社の何が魅力になりうるのか、うまく言語化できていない。

このような課題・背景をお持ちの方に、このnoteでは「ハイクラスエンジニアが何を軸にして、どのように企業をみているのか」の実例を紹介し、「自社のアトラクト材料を設計するヒント」になればと思っています。

(もちろん転職活動をしているエンジニアの方には企業をチェックする視点の参考にもしていただきたいと思っています)

<軽く宣伝>
当社では、現役エンジニアが目利きをした企業を紹介する転職支援サービス「kiitok」と、企業向けにはエンジニア領域に特化したRPO(採用代行)や採用ブランディングの支援を提供していますので、ご興味ある方は登録・お問い合わせください。

https://www.trackrecords.co.jp/


画像1

お話を聞いた方

メガベンチャー等を経て、スタートアップのCTOに就任。数十名規模のエンジニア組織になるまでの組織成長を牽引。

転職の理由

技術から離れ過ぎてしまっていたため。
自分自身でその状況を改善することもできたが、そこを改善するための必要なコストが非常に重く、キャリアチェンジを判断されました。

転職活動サマリー

・転職期間はおよそ半年
・主要なスカウト媒体に登録
・エージェントは3-4社活用
・スカウトもきていたが、エージェント中心の転職活動
・理由は、自分自身のキャラクターを知った上で一定フィルターをかけた案件を紹介してもらえるため
・提案があった会社は30社、面談した会社は20社程度
・最終的に複数の内定から、エンジニア50名規模以上の会社へ転職


企業の見極め5つの視点

画像2

初期から言語化されていたわけではありませが、最終的な検討段階で整理されたのが以下5つの観点

1.事業・仕事自体の観点
2.ミッションと会社文化への共感・好感
3.報酬の妥当性
4.海外の要素
5.事業の強さ

では、ここからそれぞれの要素についての判断軸の具体と、その判断材料を紹介します。


1.事業・仕事自体の観点

画像3

ここで大事だったことは「もっと技術に関われる仕事」であること

その背景としては、これまでの仕事が技術への関わりが薄くなっており、そこに対してコンプレックスを抱えていたことが背景としてあります。

また他にも以下のような観点も含めて細かく軸で検討しています。

軸1-1. 自分自身が興味のある事業領域であるか
背景と判断材料
:これはシンプルにその会社がやっている事業領域が判断材料。興味もてなかった領域として広告やD2Cなどがあり、興味をもった領域としては人間の能力拡張的な事業領域(例:自動化関連サービス)

軸1-2. 開発者として求められているか
背景と判断材料:これまでのキャリアからもより上流のポジションを提示されることがあったが、転職の経緯からも「エンジニアリングに関わりたい」という意向が強かったことが背景。
この軸の判断材料は、求められているポジションや期待値(=求人票とも言い換えられます)が求めていることとあっているかどうか。

軸1-3. 技術的なチャレンジングがあるか
背景と判断材料:
自身のこれまでの経験では、そこまでチャレンジしていない、かつ技術的にも余白がある領域であることが技術者としての成長ややりがいにつながるため。
判断材料の一例として、ある会社のR&Dの部門のポジションオファーなどは、その業務自体がそもそも技術的なチャレンジを期待されているので、興味もつに至った。

軸1-4. 自分の「得意」との相性が良いか?
背景と判断材料:
自分自身が役に立ったという実感を感じる意味でも、期待されている点が自分自身が好きで、他の人が比較的苦手する領域であること。
判断材料としては、期待されている役割そのものとなるので、ポジションなどがそれにあたります。

自分なりの学びとメッセージ

ここから学びは、欲しいターゲットがキャリアに求めていることを深く考え、それに沿った「期待値のデザイン」が重要です。そのため、その期待値を言語化した求人票やオファーレターの品質が重要と言えます。

もちろん事業シナジーの無い期待値のデザインに意味はありませんが、事業のベクトルにそったエンジニアにとって魅力的な期待値をデザインすることに、エンジニア採用担当の時間を投資することが重要だと思いました。


2.ミッションと会社文化への共感・好感

画像4

ここで大事だったことは、ビジョンやバリューの納得感です。

もっと詳しく↓
ここでは、会社のミッションが自分自身のやりたいことや自分の人生と重なっていること。また文化についても、自分の価値観との相性が良さなどを判断しています。

判断材料として、ミッションの言葉だけではなく、なぜそのミッションを掲げたのか?どのような課題を解決したいのか?などミッションに込められたストーリーや具体性をもって語られた話が有効な判断材料になっています。

またバリューについても、なぜそのバリューになったのか?何を大事にしているのか(逆に言うと何を捨ててるのか)?それが生まれた背景は何か?など「その会社だからこそのバリュー・文化」を正しく言語化された話が有効な判断材料になっています。

自分なりの学びとメッセージ

面談時に、ミッションやビジョンやバリューについて「さらっと」流したりすることってあるかもしれません。

ですが、候補者が意思決定をする際に、そこへの共感や好感が意思決定の要因になることがあります。それぞれの違い、それぞれの設定の背景、こだわりなどについて正しく言語化し、伝達することが重要だと思いました。


3.報酬の妥当性

画像5

ここで大事だったことは「双方にとって適正」であることです。

もっと詳しく↓
双方にとって適正なオファーとなっていることが入社後の活躍のために重要であるため、この報酬の「妥当性」が判断軸の一つになっています。ここで大事だったは「双方にとって適正」な報酬としている点です。

これはある会社からのオファーが、その会社内における相場と比較したときに高いオファーだとした場合に、入社後の会社の期待値と自身のパフォーマンスが合致しないケースが生まれるかもしれません。
それは金額が高い分、会社からの期待値があがってしまうためです。
そのため中長期的な活躍や安全性の観点から、「双方にとって適正」であることが重要な判断材料となっています。

自分なりの学びとメッセージ

ここでの学びは「報酬条件」という言葉に込めた真意が人によって異なる(高ければ良いわけではない)ということかと思います。

相手の意思決定の材料「報酬条件」に込められた真意はなにか?より金額が高いオファーを指すのか。バランスを踏まえた妥当性を示すのか、その本音を踏まえた上での最適なオファーを検討する必要があると認識しました。


4.海外の要素

画像6

ここで大事だったことは「何がしかの海外との接点」です。

もっと詳しく↓
「海外の要素」とは必ずしも事業としての海外展開の有無だけではなく、会社の母体が外資企業であること、海外のチームがいることなど、仕事における海外への関わりの程度を指しています。

自分なりの学びとメッセージ

将来的にグローバルな環境で働きたい!と考えている方に対して、ストレートに自社の海外事業展開やその予定を訴求することは効果的です。

一方で、海外展開は予定していないが「外国籍の人が多く在籍するチーム」というのもそれは一つに魅力になりえます。異なる国籍の方と一緒に開発経験を積むこと自体が財産になるからです。
自社の魅力はあらゆるところに潜んでいます。


5.事業の強さ

画像7

ここで大事だったことは「事業のボラティリティの低さ」です。

もっと詳しく↓
一定の売上が積み上がっているからこそ、会社としての変動リスクも低くなり、結果的に自分自身が転職によって得たい経験自体の変動リスクを低くできることにあります。

更に細くすると、スタートアップ在籍時は、どうしても事業のボラティリティは高くなります。それ自体がおもしろさでもあるし、戦略でもあるので、否定するものではありません。

ただし、今回の転職の背景や目的を踏まえたときに、ある程度そのボラティリティが低い方が妥当である、という判断からこの点を重視しています。
ここでの判断材料としては、売上などの事業成長の実績、また市場規模や事業成長のポテンシャルの蓋然性などををもって判断しています。

自分なりの学びとメッセージ

ここからの学びは、事業の実績や計画から「余白」と「余裕」と「安全」を正しくつたえることではないかと思います。

余白とは、市場の大きさや奥行きから見えてくる今後のチャレンジ
余裕とは、事業の長期的成長の見通しから生まれる、失敗や挑戦の許容
安全とは、変動リスクが少ないことでの、仕事=挑戦自体を守ること

採用したいターゲットによって、このメッセージの濃淡をわけてコミュニケーションすることが重要だと思いました。


最終的な意思決定

エンジニア組織が50名近い規模のスタートアップへの転職を決意されたわけですが、ここであげた要素が複雑に入り混じった上での意思決定に至っています。


終わりに

改めて大事なことは、自社が採用したい人を解像度高く理解することの重要性だと思います。
採用したい人のインサイトを深く理解することで、正しいコミュニケーションを実現することができるようになるのだと思います。


最後にお願いです。

この企画に協力していただけるエンジニアの方いらっしゃれば、ぜひぜひご連絡ください。
・テックリード、EM、VPoE、CTOなどの経験者で最近転職された方
・インタビューはオンラインで実施します。
・何かお礼させていただきたいです(インタビュー中のビールを宅配便でお送りするなど)

↓連絡はこちらまで↓
https://twitter.com/nokonun


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?