引っ越し

カーテンのない窓から、鳥の歌声が聞こえる。
なにを言ってるんだろう。
掃除機をふと止めたときに、そんな疑問が頭を過る。

まだまだ片付けはしないといけなかった。
台所もまだ、お風呂なんて全然手をつけてないし!
たかが2年ほど住んでただけで、何もこんなにも溜め込まなくてもいいじゃないの、と過去の自分を恨む。
仕様がない。明日、引っ越すのだから。

#引っ越し

2年ほど前、逃げるように実家を出た。
すぐにこの部屋に決めた。
決定打となったのは、洗濯機が部屋の中に入れられて、風呂とトイレが別で、仕事場が近かったから。
値段とか、不便さとか、全然気にしなかった。気にもできないほどだった。
それから2年、しがらみからまた抜け出すように、この部屋を出る。

引っ越しの作業は、キツいしツラい。
思い出との格闘だ。
処分すると決めても、まだいるんじゃない?だの、これはあのときに…だの、あれはあのときの…だのと囁きが聞こえる。
まだ使えるから、いつか使うかもの攻撃を、思い出は容赦なく繰り出してきて、それを振り払うかのように、ごみ袋に叩き込む。そしてごみ捨て場まで持っていく。
その作業をなん十回と繰り返して、新しい場所へ移動する。
仮住まいばかりだったから、新しい場所の新しい私には不必要な思い出はその度々に捨ててきたが、それでも移動は、疲れを伴う。それも相当の。

今回の新しい場所は少し違っている。
恐らく仮住まいとはならず、骨を埋める場所になる。
だから、古い私はすべて棄てる。
最近やたらと、元カレが夢に出てくるのも、
職場の飲み友達も、
淡い恋物語もすべて。
すべて棄てて、真っ白で、次の場所へ移動したい。
新しい名前、新しい場所、新しい家族。
でも実際私は捨てられないし、古い私も、今の私を作る大切なひとつだ。
別のアルバムにしまって、閉じる。
たまに見返して、糧にする。
前に進むための、大切なアルバムを、美しく作っていくことが引っ越しなんだろう。

2015年3月20日

でもとにかく、全部捨てたい。。(本音)