どこも悪くないのに、痛い注射もタイミング療法もしているのに、体外受精をして莫大なお金をかけているのに、我が家だけベビが一度も来ない。

病院から帰る途中、まだマタニティーマークが私の目の前にはいった。「私に何か文句あるの？何で私の横に来るの？何で私の前でわざわざ立つの？」この思いは一生忘れない。

結婚６年、待望の我が子を授かったと思った。マタニティーマークをつけたかったけれど、着けることなんて到底できない。あの苦しみをしっているから。妊娠する前には知らなかった酷い吐き気にも襲われた。通勤は頑張って早朝電車の各停にした。我が子は自分で守ろうと思った。

確かにお守り代わりに鞄の中にはマタニティーマークを持っていた。しかしそれを人に見せて、席を譲れとは思わなった。私は幸せだったから。