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クリエイティブ(創造的)な転職活動をするには?

スタートアップには資金繰りがうまくいかなくなり、従業員を雇っておけなくなることがあります。ある日会社のオフィスに呼ばれ、中に入ると経営層が3人とも下座に並んで座っている状況に遭遇したら、それが整理解雇を切り出されるタイミングです。

こうして突然ひとは最低限の銀貨を握らされ、小さな船から浮き輪だけ持って海に飛び出す状態になるものです。ChatGPTが現れたことで、戦々恐々とされている方も多いのではないでしょうか。

海に放置されると、大抵のひとは4,5日くらいでつぎの船に向かって泳いでいきます。とくに預金がなく、「失業給付がいつから出て、それはどのくらいの額か?」を入念に計算しているひとには、やることはただ短時間でほかの船に乗り込むことだけです。

高度にITが発達した世界かのようにみえる現在。転職をしようと思うと無数のエージェントが、清少納言も驚くような枕言葉をならべて「いい船がある」ことを教えてくれます。それは海に落ちて寄る辺がない元スタートアップ勤務の人間からすると、とびつきたくなる香しい匂いを漂わせたものです。

そして気づいたときには、1週間に15回くらいオンライン越しの面接をして、合間にスマホで「まじで精神削られるんだけど」なんてことを近しい誰かにいうことになっています。彼にとって転職は苦行であり、つまらないものであり、早く終えて安心したい、ただ息を止めて駆け抜ける時間になっているわけです。

彼は(あるいは彼女はでもいいんですが)、果たして本当の意味で自分がやりたい仕事に再度就職できたのでしょうか。それはおそらくですが、転職活動が創造的になりえなかったことを考えると難しいのではないでしょうか。



こちらの記事でも言及されていますが、会社から離れたらぷらぷらすることがある意味で鍵になると思います。ぷらぷらするというのは、つまりこれまで行っていなかった場所に行って、話したことのなかったひとと話すことを意味していると思います。

つまり時間の制限なく、自分の好奇心が赴くままに移動し、見て、聞いて、感じる時間を取ることが重要となるのではないでしょうか。わたしもこのような意識で時間を使っていたときは、この寄る辺ない立場でいることを忘れ、ただ好奇心が満たされ、ワクワクドキドキしたものです。

しかし周囲のひとが「もう就職を決めた」話を耳に入れ、「自分も早く決めないと」と思った瞬間に、転職活動はまったく創造性のない時間——まるで採掘現場からつぎの採掘現場に移動しているかのような気持ちになりました。

日本人はとくに勤労意欲が高いですが、かといって労働生産性はあまり高くありません。彼ら(わたしも当然そこに含まれているのですが)は「周囲のひとと同じでありたい」気持ちがあまりに強く、ただぷらぷらしているという自己投資をする心の余裕がないのかもしれません。

そこには個人主義的か集団主義的かという文化的背景も関係ありそうですが、もし転職活動を新しい自己を発見するための時間に変えようと思うなら、自分の好奇心を見つめて、ポジティブに動く時間を作るように心がけてみてもいいのかもしれません。

ひとは2年や3年でも、自分の中で大きな変化が起きています。普段は会社から出される毎月の給与が頭に乗っかっているため、この変化に気づくことができません。しかし自分が何を大切に思っているのか、世界はどのように変容しつつあるのかを知ることで、今後自分がどんな航路を進めばいいのか朧げにわかってきます。

会社が用意しているポジションは、未来というより過去のナレッジでできたものです。もしかしたら自分で「未来のためにはこんなポジションが必要じゃないですか?」とどこかの会社にいえると、案外よかったりするのかもしれないですね。

そのような創造的な転職活動をするには、やはり好奇心を上手に使って、この心もとない時間を十全に楽しむ勇気が必要となるのではないでしょうか。

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