1選手1記事語り:水野祐希

水野祐希
経歴:東邦高→東京ヤクルトスワローズ(2005年高校生ドラフト4巡目、2006-2013)
通算成績:一軍出場なし


好きになるキッカケは、その選手との共通項があること。

2発目に持ってくるにしたって、まず「水野って誰よ?」となる方は多いと思います。それもそのはず、冒頭に記した通り、水野はプロ生活こそ8年を数えますが一軍出場はなかった選手だからです。
「あっ、知ってるわ」となった方は、恐らく女子野球に詳しい方でしょう。と言うのも、水野は2022年から活動を開始した女子硬式野球クラブチーム、「九州ハニーズ」のバッテリーコーチに就任しているからです。

水野がドラフトで指名された2005年の高校生ドラフトの同期に1巡目の村中恭兵、3巡目に2023年現在も東京ヤクルトでプレーする川端慎吾がいますが、九州ハニーズには川端の妹である川端友紀が在籍しています。本人がどこまで意識しているかは分かりませんが、「そんな縁もあるもんだなぁ」と思いながら当時ニュースを見たのは覚えています。

で、ここからが本題。
ぼくはその選手のファンになるのに、基本的には「自分と何かしら共通項のある選手」を選びがちな傾向があります。前回の山部太もそのパターンです。
水野に関しては、これはちょっとダイレクトにパーソナルな部分へ関わって来るのでネットでは言えませんが、とにかく「自分と何かしら共通項のある選手」でした。
ただ、前述の通り一軍出場のなかった水野は、基本的に「プロ野球」と言う華々しい世界において、その光を浴びたことは失礼ながら恐らくなかったのではないか。同期の村中は先発投手として2ケタ勝利を2回マークし、川端は2015年に首位打者を獲得するなどヒットメーカーとして現在も活躍を見せていますが、水野にはプロ野球選手としての実績はほとんどありません。

ぼくが野球に対する価値観と知識を深化させるキッカケになった、2008年発売の「実況パワフルプロ野球15」に、村中と川端は収録されていますが、水野は収録されていません。パワプロは「2011」から支配下登録選手を全て収録するようになりましたが、水野の収録はその「2011」からの3年間のみで、能力も推して知るべしな感じでした。

それでも「好きになったものはしょうがない」と彼を追って、少なからず得たものがある。

ぼくがネットに触れるようになったのは、実家にパソコンが導入された高校1年次の2011年頃。ネットに触れて野球のことを調べれば、当時の「2ちゃんねる」、特に「実況ch」と「なんでも実況J板」(通称「なんJ」)が隆盛を極めていた頃でしたから、その2ちゃんねる・なんJ発祥のネタが目に入るわけです。もっと言うと、同じく触れることになった「ニコニコ動画」の特性・特徴なのか、ネット文化の根底として2ちゃんねらーとニコ厨の層が共通していたのか、ぼくの場合は主にニコニコ動画経由でネタを目にしていました。

その中で、「二軍の妖精」という言葉も目にします。
「二軍の帝王」なら聞いたことはある、と言う方もいらっしゃると思います。「帝王」は「(一軍では結果を残せないけど)二軍では活躍する」と言うニュアンスがあるのに対して、「妖精」は「二軍でも出場がおぼつかない」ニュアンスが含まれているのです。
失礼ながら代表例を挙げるなら、広島東洋カープに在籍していた鈴衛佑規や白濱裕太あたりがそうなるでしょうか。

ただ、ぼくはこの「二軍の妖精」と言う言葉に対しては、(お人好しと言われたら否定は出来ませんが)そこまで否定的、侮蔑的なニュアンスは持っていません。
今回の主役である水野や、先述した鈴衛・白濱のポジションは「捕手」です。
プロ野球を一定以上見てきた方ならご存知の話だとは思いますが、この「捕手」と言うポジションはプロ野球の中で一番替えが効かない。捕手に求められるプレーが重労働で、かつ純粋に危ないのもありますし(捕手だけ防具が揃っているのがその証拠ですよね)、現代野球においてはチームの勝利のために求められる要素が一番多いのも捕手だと思います。
ただ、捕手のポジションはひとつだけ。出せる選手の数は限られます。そんな中で、一軍だけでなく二軍の試合を回すのに、たまに「二軍の妖精」と言われる立場の選手が出てくるわけです。水野も、その一人に当てはまる。

確かに「二軍の妖精」と言う言葉、基本的には侮蔑的な意味合いの多いものです。この言葉の代表例を1人挙げるなら筆頭は鈴衛でしょうが、鈴衛は現役生活11年で一軍出場は代走の2試合のみ。ネタにされるのもやむなし、と言えなくはないんです。
しかし。
プロ野球も「人付き合い」の世界です。素行が悪い選手は、2~3年で退団に追い込まれることもままあります。その中で、替えが効かない「捕手」と言うポジションを務めていることは留意しつつも、彼らは短くない年数を「プロ野球選手」として過ごしていることに成功している。そういう言い方は出来ないでしょうか?
ある時期から、恐らくは自分が結果を残すことが出来なかったせいで、選手としての本流の期待はされなくなったかも知れない。それでも、必要な時期が来ればチームを助ける。そう言う選手がいたんだと、ぼくは誇りにすら思っていいと思うんです。

ちなみに鈴衛と水野は、現役引退後もチームに留まってスタッフを務めた経験があります。鈴衛は現在阪神のブルペン捕手ですし、水野は先述した通り今は九州ハニーズで野球に携わっています。
白濱は現役引退が昨年(2022年)ですが、その人柄はつとに有名だと思います。そもそも白濱が19年の長きに渡って選手生活を務めていたのも人柄に因るでしょうし、現役を引退しても球団からポストを用意されると言うことは少なくともそれ相応の評価を球団から受けた証左でしょう。

プロ野球と言う世界において、ファンが最初に憧れるのはスター選手です。でも、そのスター選手には誰しもがなれるわけではない。中には「二軍の妖精」と呼ばれるような選手も出てきてしまう。それでも腐らずに、自らに与えられた役割を全うし続ける、そう言う地味ながらも必要な存在があると言うことを、当時高校生だったぼくは水野を通して学んだんだと思います。

過去は変えられない。けど、それでもifを考えたくなることもある。

このnoteを書くために水野のことを改めて調べていたら、「そう言えばAmebaブログをやっていたな」と思い出しました。
ぼくの高校生当時はブログ全盛期で、ぼくがブログに触れたのもAmebaから(中学生時代はmixiの全盛期だったけど、そこではブログサービスがあったとしても長くやってなかったと思う)。で、水野も2014年まではオフィシャルのAmebaブログを更新していたので、記事は更新されれば読んでいました。

最初のほうに「村中恭兵、川端慎吾とは2005年高校生ドラフトの同期」だと言う話をしましたが、水野のブログを見返すと、この3人は仲が良かったのかなと。
で、この記事を見て欲しいのですが。

途中、「(村中・川端・水野の)3人でヒーローインタビューが夢」だと言っていました。
その姿を、ぼくも見たかったです。
残念ながらその夢が叶うことはありませんでしたが、たまに妄想はします。今でも。

ただ、2023年の現在、ぼくにはひとつ「このifを叶える手段」を思いついています。
それは「パワプロで水野が在籍していた当時の東京ヤクルトスワローズを再現し、3人を主力に育てること」。
言っていることが割と全てなんですが、水野が在籍していた2006年から2013年までの任意のシーズンを切り取って当時の東京ヤクルトスワローズを再現し、「ペナント」モードで活躍させよう、と言う話です。
パワプロでぼくは創作活動のメインとして「架空のプロ野球チーム6球団を作成する」ことをやっていて、それにかかる時間が膨大なので基本的には始動できていません。noteではパワプロの踏み入った話をする気もないのであまり触れもしませんが、「任意のシーズンの1球団をまるごと再現する」ことはパワプロを楽しむ手段のひとつとして構築されていますので、それに乗っかってやればいいじゃないかと。

これをやるとして、その報告なり進捗なりはパワプロをメインテーマにしているはてなブログで公開することになると思います。
ただ、このnoteの執筆途中で「ふっ」と降りて来た発想なので、書き留めることでチャンスを作っていきたい。
ゲームは「現実で出来なかったことを実現する手段のひとつ」でもあると思うので、いずれはやりたいですね。そして先述の「3人を主力に育てること」が出来た時、いくらか当時持っていた感情が報われることになるんでしょう。

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