「将来有望な男」①

その彼との出会いは息子の家庭教師としてだった。
爽やかで若い大学生。おまけに超優秀だった。
どう転んでも前途洋々な将来しか見えない感じ。
そんな若者で『理想的に育った息子』みたいな
目線でしか、当たり前だけど見てなかった。

家庭教師をやめてからも、彼とのやり取りは
何となく続く。たまにLINEして息子の塾選びの
相談をしたり。年に2回くらいは会ってランチや
ドライブをする事もあったが『対象』には入って
なかった。もちろん、彼のほうは、A子を好きそう
な感じはあったが、はぐらかして友達付き合い
するのは慣れている。

そんな若くて可愛い彼、…だったのに。
ついにタイミングが来たらしい。
A子にガチで告白？というかお願いしてきた。
『3年間、ずっと憧れていた』
『特別な人だったから簡単には口説けなかった』
『1回だけ、それを大切な思い出にして、これから
も頑張っていく（今までも彼は凄い努力してきた
人だけど）』
『次からこんな我儘なお願いはしない。また
今までどおりの関係で。迷惑はかけない。』

大きな息子としか見てなかった彼。
3年間いろんな経験（女性経験も笑）を経て
大人の男みたいな台詞を吐いた。
A子は、こんな将来有望な若者に、こんな事
言ってもらっているうちが花かな…と思った。
彼の経験値の1人になってあげてもいいかな…と。