喧騒と遠ざかるようにイヤホンをつける

「あなたはいつもいつもどんだけ絡まってるんですか」
二重にも三重にも五重にもトンネルを潜り抜けたように
なかなかすんなりとは元の姿を見せてくれない
でもわたしはこのイヤホンがすきなのよ

つけた途端自分だけの世界に入り込める素敵な相棒だから！と言いたいところだけど
ぜんぜん周りのノイズは入ってくるし
かっこよくはないし
マステで意味のない補修されている痛そうな姿をしているし
でもそれでいい
いつも白くて安心感をくれる君がいい

そして喧騒と音楽が入り混じるのが私の生活
簡単にすきなものを手放せない私の生活

きっとこの先何十年もお友達でいれるとおもう

白髪でベッコウメガネのご婦人
私のほんの50センチほど隣に座った
近すぎて直視できないのが残念だけど
おしゃれで気品が漂ってきて
ああいいな、こんな歳の取り方したいな、
ておもう
今声かけたら仲良くなれそうな気がしてきた
けどそんな勇気はとてもとてもなく、
食べているカボチャタルトがとても美味しいので
子供みたいに口元からフォークを離さずに
ぼーっと人間観察をはじめる
ふと動きに視線を向けるとおしゃれな服着たお母さんと子供が手を洗っている
離れたところに雰囲気が似た男の人がいる
きっとあの人が旦那さんかな、なんて考えて
無事その人の元におしゃれ母子が戻ってきたとき、
心の中でよっしゃ！なんてガッツポーズしちゃったりなんかして、ね

世の中はコロナ明けした雰囲気を漂わせているけど
まだまだマスクの人だらけ
すれ違う人みんな口元を隠したままだね
でもフードコートは当たり前だった風景が見えちゃうから、
なんかいいかも、なんて思いながら
今飲み終わったアイスコーヒーが底からどんどん湧いて出てくればいいのに、て唱えている