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NOMADが我が家にやって来た。

 事の始まりは、シャープの「WG-PN1」を購入した事だった。

 特に興味もなかったが、期末なんでどうか一品、と頼まれて嵩張らない製品を選んでみた。手帳といえばシャープはかつて「電子手帳」という商品で人気を博していたが、当時の私は専らシステム手帳を利用していた。コンパクトで革張りの重厚な手帳を小脇に、颯爽と歩くビジネスマンに若い私はあこがれた(もちろんシャツはやたら肩幅広くて袖がダブダブな奴だw)。しかし膨大な業務量をこなすにはこんなカワイイ手帳じゃ足りず、いつしかB5のルーズリーフを重用するようになっていった。紙が尽きれば足せば良いし、重くなったら外して保管すれば良い。この様式になって20年ほど経過したが、保管している紙の量は馬鹿にならないものになってしまった。
 
 そしてここに至って電子ノートの登場である。期待はなかったがあるとなれば使わないと損だ。手に取ってちょこちょこ書き込んでみる。素晴らしい!という程ではないが、備忘録程度にはまぁまぁ使える。ただもう少し、字や絵が細かく書けたらなぁ…
 
 WG-PN1はITO(透明電極)を使ったいわゆる「圧電式」のペン入力機能を使っている。そのせいか付属のペンが金属製のドッシリしたものになっていて、もうひとつ手に馴染まない。そこでメーカーが推奨しているタッチペン、エレコムの「P-TPLFBK」も試してみたのですが、まぁ付属のペンよりはマシかなぁ?程度でもうひとつ満足には届きません。

 しかし私には、「ペンに沼って幾星霜」でご紹介した通り、EMRのデジタイザペンだけは種類豊富に取り揃えてあるのです。

 圧電式のセンサならば、先が細けりゃ何でも使えるだろ?とあてがってみると、気持ち良く思い通りに描けるペンがあるではないですか。
 サードウェーブraytrektab DG-D10IWPに同梱されてきた、デジタイザペンでした。これが描き味、位置精度ともにWG-PN1とベストマッチ!この2つの使い勝手が、あっという間にルーズリーフを駆逐してしまったのです。
 業務にも、趣味のイラストの下書きにも、私はこれまでB5サイズの紙を使っていましたが、WG-PN1の6インチサイズで描いた方が構図やアイデアをまとめ易かったらしく、以降は身近に置いてどんどん活用する様になってしまいました。

こんな調子でイラストも描けます。

 そして、いけない欲求がアタマをもたげてくる。もっとお高い電子ノートならどうなるの?と。WG-PN1は圧電式センサなので、筆圧については全く表現できないのだ。筆圧4,096階調はタブレットPCで経験済みでしたが、電子ノートで気軽にイラスト制作出来たらどんなに素晴らしいだろう!と夢想しちゃったんですね。
 
 電子ペーパーことEInkを使った製品というのは、主に電子書籍リーダー、kindle端末が主戦場となっているようで、ドキュメントにマーキングする「おまけ機能」としてペン入力ができるものがほとんど。とりわけメモやアイデアスケッチに特化したものがないかと探し当てたのが、Ratta(上海雷塔智能科技)という新興メーカーが、クラウドファンディングを活用して提供していた「Supernote」という電子ノートでした。

 A5、A6サイズの製品があり、特にA6サイズはお値段もリーズナブルで持ち運びも良さげ。当時はAmazonにも出店していたのでお試しでポチリ。通常配送にしていたのですが、なんと翌日に届けてくれた。販売店の動きの速さに、熱意がビシビシと伝わってきます。

外装はこんな風。

 で、早速開封の儀。操作マニュアルは本体に保存されていて(電子書籍だからね)、160Pもあったので(⊙_⊙;)、追っ付け読んでいくことにしてっ。先ずは書き心地を試してみる。確かにサラサラと書けるし、WG-PN1よりレスポンスも良い。が、しかし標準添付のデジタイザペンが、何となく、ヤワい。うっかりすると折れそうなほど。しかしSupernoteはWacomのEMR方式。互換のペンは市場に幾つも流通してるし、私もすでに何本か所持している。もう使わなくなって仕舞い込んだ安物を試しに使うと…なんとサイドボタンがちゃんと動作して消しゴムとして機能するのだ。

 標準添付のペンには付いていない機能ですが、デジタイザペンやアクティブペンには側面にスイッチがついていて機能を割り当てることができる。Supernoteは公式にはアナウンスしていないが、ちゃんとサイドボタンに対応していたのだ。(後にLamyとの協業でデジタイザペンが提供された時に、サイドボタンに関する設定が追加されていました)

ちょいと指で隠れてますが、これがサイドボタンです。

 そして消しゴムを使って気がついた。Supernoteは、ベクター方式でペンの書き込みを記録していたのです。

大まかに丸く囲むと、領域内の図形を認識して消去します。

  2次元コンピュータ・グラフィクスは、主に2種類のデータ方式で図形を描画する。ひとつはドット方式、2つ目はパラメータ方式。前者はまたラスター方式、後者はベクター方式とも呼んでいる。パラメータでデータ管理するベクター方式は、行列演算を使って画像の拡大・縮小・回転を可能にする。ベクター方式で有名なのが、Adbeの開発したPDF。プリントアウトで用紙サイズを変えても粗くなくカスレなく同様の品質で印字できるよう配慮されたものだ。
 この利点から、PDFは電子書籍のフォーマットとしても採用されている。Supernoteはまた電子書籍リーダーとしての側面もあるのだから、ベクター方式でペン入力できるようにしたのは必然とも言える。ともあれベクター方式で文字が書けるのは文書の編集にも最適なのだ。文章を書く、消す、書き足す、移動すると、PCでキーボード&マウスで行う編集作業がペン入力でできてしまう。

前髪と目が重なっていても、ベクター方式なら分けて認識し移動・消去ができます。

 キングジムの「ポメラ」という文書入力デバイスも魅力的ですが、Supernoteは絵も描ける。ノートとしての役割に十分すぎる性能を有していた。漢字は別で調べなきゃいけないけどね(笑
 
 こうしてSupernoteA6XはWG-PN1を押し入れに追いやり、手放すことのできない私のカラダの一部になった。と同時に、不安な思いが頭をもたげる。これがもし壊れたら、どうしたら良いのだろう?と。

 気づけばAmazonではSupernoteの在庫がずっとゼロとなり、代替品を検討するも他は電子書籍リーダーとしての性能を追求するあまり、ノートとしての役割には不満が残るものばかり。日本メーカーではシャープの他、富士通とSONYでも電子ノートへ参入していましたが、どれも新製品の開発が為されていないのか、ずっと旧品が店頭に並んでいる。どうやら電子ノートは、市場としてシュリンクへ向かっているようだ。
 
 悶々とした日々を過ごしてどれくらいになったか。遂に、2023年の秋に朗報が飛び込む。RattaがSupernoteの新作を発表!当初は「SupernoteA6X2」と仮称されていたが、現在は「NOMAD」なんて小洒落たネーミングに置き換わっている。先ずは欧州での発売となったようで、私はひたすら日本向けに展開されるのを待ち望んだ。海外の評価を見ると、初販はあっとゆー間に完売したそうで、バックオーダーが3月から、という活況ぶりの様子。世界には私のように、新しいSupernoteを渇望する人々で溢れていたのだ。

  そして、2024年3月。日本向けの販売サイトが開設されたのを知った私は、脊髄反射の勢いでNOMADをポチっていた。待つこと1週間くらい。漸く待ち望んだ「出荷しました」のメールが届き、到着予定を確認すると、、、あれ?配送がDHLになってる??
 
 出荷元が「上海」になってるわ。日本で一旦ストックする余裕もないほど売れてるって事か。かくして、遠い海を越え、遂にNOMADが我が家にやって来たのでした。(笑)

本体のほかペンとカバーをオプションでチョイスします。
私はペンは頼まずカバーだけ追加しました。

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