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【詩】夜、近くの川まで散歩する

川までの道は変に明るい
夜なのに
ずっと、明るい。
その光が、夜のわたしを照らすから

の、武装してないわたしを照らすから
パジャマ、すっぴん、ビーチサンダル、疲れた顔
うつむいて歩く
誰にも見つからないように

空気はうすむらさき
水はくろ
音はぐんじょうで
わたしは。
たぶんとうめい

ここから数歩で水の中に行ってしまえる
行ってしまえばいい
行ければいい
行けば、
行けるならば、
(音、耳の奥に冷蔵庫の音がする
ワンルーム、
寝る前にずっと聞こえるあの音)
生活に必要なものなんてほんとうはそうはないのになぜ?

暗い水
面、
に泡が たつ
泡がたつ
水、
が、岸
までせり上がる
わたしのつま先を濡らして
地面の
柔らかな土
を、ぐちゃぐちゃにして
スニーカーの中を通って
わたし
の、あしにも染み込んでくる
(知っている、早く飲み込んで欲しい。やがてやってくる大厄災の前兆に、はやく。なりたい)

の、色がもっと濃くなる

後ずさる
はし る
はしる
は、しって
逃げ遅れたわたしの一部が
まだ、川の淵にいるのが見える
光ってみえる
ぼんやりとした光

立つ水面の
波の、穏やかな隙間に
潜り込む
潜り込んだまま
もう2度と帰ってこ
ない

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