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断る理由を人は求める・後編【昔のこと】

(昨日からの続き)
イジメが無かったのはさておき、この遊びの誘いが毎日来るんです。雨の日以外、毎日。小雨くらいなら何のそのです。五日目くらいからエッと思って六日目には今日もですか?と思い、七日目の二週目に入ったところで、これは毎日なんだと結論付けました。実際、ここから一年半くらいは本当に毎日でした。で、八日目なんですが、さすがにインドア派の私に毎日外遊びは辛い。このままではキリがないと初めて断ってみた。断れませんでしたけど…

「○○くん、遊ぼー!」「今日は止めとく。」
「えっ、風邪ひいたの?」「引いてないよ。」
「しんどいの?」「しんどくない。」
「どっか行くの?」「どこにも行かない。」

ここら辺から、んっ?て思ってました。

「やっぱり、しんどいんだ?」「元気だけど…」
「じゃあ、やっぱり出かけるんだ?」「家に居るけど…」
「なんでー、それじゃ変じゃん?」

ここで気づきました。彼らにとって毎日外で遊ばないことは変なんです。毎日外で遊びたいと思わないことは変なんです。とはいえ私も悪い。まだ、ちゃんとは理由を言ってない。外で遊びたい人達の水を差すようで言葉を濁していましたが、これはハッキリと伝えないと解ってもらえないのだろうと心を決めました。

「ごめん、元気だし出掛けないけど、今日は外で遊ぶ気にならないの。」
「えっ、どういうこと?」
「えっ、わかんない?」
「だって、元気で家に居るんでしょ?だったら外で遊んだらいいじゃん。」
「いや、引っ越してきてから毎日、外で遊んでるから僕はたまには家に居たいの?わかってもらえるかなー…」
「わかったー。やっぱり、しんどいんだ!熱でもあるの?」

熱が出そうでした…
結局、このやり取りがもう一周続いて断る方が辛くなったので、八日目も外に遊びに行きました。あれほど断っていた私なのに、あれほど体調が悪いと決めつけていた私相手なのに皆はいつも通り何一つ変わらず接しては外遊びを満喫していました。そして、この経験が決定打となり、ここでは雨の日以外は外で遊ばなくてはいけないんだと腹を括りました。そういう場所に引っ越してきたんだと… ということで遊びの中心的兄弟が他所に引っ越していくまでの1年半、苦手な外遊びを口だけで乗り切るという毎日を私は過ごしました。

子供ながらにこのやり取りは鮮明に覚えています。やり取りというよりは、この時の衝撃というか境地。人は気分で断っちゃダメなんだと、断るには明確な理由が要るんだと、自分の希望よりも相手の納得が無いと断ることは出来ないんだと。子供で幼いからだと思っていましたが、大人になってもこの原理はさほど変わりません。今でも何かを断りたい時は、相手が納得しうる理由をまず考えてしまいます。本当は、ただ気乗りがしないだけなのに。大人は更にややこしく、断る理由を見つけられないようにひとまず何の誘いかを言わずに自分に有利な言質だけ押さえようという輩まで居ます。実際、そういう輩の方が多いかもしれません… こういう人に出会うたびに、やっぱり子供の頃に衝撃を受けたあのやり取りはある種の原理であり真理だったんだと思い出してしまいます。

子供の頃から始まって「三つ子の魂百まで」といいますから、私の生涯の間は断る理由を考え続けないといけない世の中なのでしょうが、せめて他人にはあまり理由を求めないようにしたいものです。
「今回は気が乗らないからパスで。」って断られたとしたら、なんて私に気を許した人なんだろうと清々しい気持ちになりそうなものですが、そんな気持ちを抱く方が変だってことになるんでしょうかね。

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