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こどもの癇癪について


■質問 
こどもが癇癪を起こしても、全く手がつけられなくて困ってるんです。どうしたらいいんですか?

■辰也 
これは本当にたくさん頂く質問です。そして、いろんな先生や専門家の方が様々なアプローチを紹介されていると思うんですが、最初にお伝えしたいのは、目の前で癇癪を起こしている子に対して、これをすれば穏やかに落ち着いて、行動を切り替えられるという、魔法の1手はないということです。

また、癇癪と一言で言いますが、大きく二つのパターンがあると思ってます。
一つはこどもが自分のやりたいこと、欲求を満たしたいけれども叶わないときに、駄々をこねている状態。
もう一つは、完全に我を忘れてパニックに陥ってる状態です。

■薫子
1つ目の駄々をこねている状態のお子さんは、自分の思いをお母さんや周りの大人に伝える手段として癇癪を起こしているわけですね。
お子さんが全身で伝えようとしているのは「僕のこと分かって!」というメッセージです。
だからその時に、大人がその子にどう向き合うかが非常に大切です。
良くない例としては、「周りの人に迷惑でしょう」とか「静かにできたらあのアイス買ってあげるから」とか「店員さんに叱られるからやめなさい」とか、周りのことを理由にやめるように言ってしまうこと。
まるで火に油を注ぐように、もっと状況がひどくなっちゃうかもしれません。
代わりに、「【子どもの名前】は◯◯したいのね」と気持ちを受け止めた上で、お母さんは自分が決めたことをブレずに「でも、これからお母さんと■■へ行くよ」とこれからその子がすること、行動をそのまま伝える。

周りの目が気になるからという理由で、子どもの欲求を叶えてしまうとしたら、その時子どもがどういう体験をしているかと言うと
こういう風にしたら大人は変わるんだ、言うことを聞いてくれるんだという体験になってしまう。それはさらにきつい言い方をすれば「大人への不信」に繋がります。その癇癪によって、大人が行動を変えられてしまうわけですから。

■辰也 
療育の現場だと誤学習、間違った学習をしてしまうっていう言葉があるくらいです。

■薫子
そこまで考えて対応しているわけではないと思いますが、もしそういう体験をさせているとしたら、お母さんやお父さんは普段からどういう対応したらいいのかというのをお伝えしたいですね。
もう一つ、我を忘れるほどパニックになっている、そういう状態の時はどうですか?

■辰也
脳科学の視点では、我を忘れてるって言うのは脳がサバイバルモードに入っている状態です。理屈は通らないんですよ。もう、生存本能のスイッチが入っちゃってるわけだから。例えばシマウマがライオンに襲われてる時、全力疾走で逃げるとか、窮鼠猫を噛むじゃないですけど、手当り次第攻撃するモードですね。お父さんにパンチとか相手が優しいとか強いとか関係ない。
そういう場合はとにかく体と脳を「危険なことはない、もう大丈夫だ」と落ちつける必要があるわけです。
そのために、大変だとは思いますが、まずはぎゅっと抱きしめてあげる。静かに落ち着ける場所、お店ならフロアの隅や非常階段の近くの静かな場所まで連れて行くのが先決です。もしかすると引っ掻かれたり叩かれたりするかもしれません。ですが、叩いてくる子どもに対して密着すると、パンチやキックのような打撃は効果が薄くなるので痛さも半減します。どうしていいかわからなくて、手脚が届く中途半端な距離にいると痛いですよ。ちょっと強行手段になりますけれども、お父さんお母さんだったら子どもを信じてあげられると思うので、そういう行動も知っておいたらいいと思います。
そして、お水を飲ませてあげてください。癇癪を起こしているときは、脳がオーバーヒートしてるかもしれません。脳からの司令を体に届ける神経の電気信号は、水不足だと届きにくくなります。体がうまく動いてくれないことがサバイバルモード、癇癪を起こしやすい原因にもなりますから。その時に注意してほしいのが、「こどもが好きだから」という理由でスポーツドリンクや好きなジュースをあげることはしないということです。脳を働かせるのは、お水なんです。お水は口の粘膜から10秒後には脳が吸収してくれるなんて言われていて、ソフトドリンクは消化吸収してから水分が吸収されるので、癇癪を起こしやすいお子さんには圧倒的にお水か白湯をおすすめします。
この話を午前中に聴いたある幼稚園の園長さんが、昼休みに普段から落ち着きのない子がイライラして職員室にやってきた時に、試しにお水を飲ませてみたら本当にすぐ落ち着いた、とびっくりしたというエピソードもあるくらいです。
ぜひ、騙されたと思って癇癪おこしやすい子どもには普段からお水をたくさん飲ませてあげてください。癇癪を起こしているときは、腹いせに差し出されたペットボトルをはねのけたりするかもしれませんが、普段からお水を飲ませることでそのオーバーヒート起こして我を忘れるパニックを減らしていけるようになるかもしれません。

■薫子 
熱中症対策として、喉がカラカラになる前に普段からちょっとずつお水を飲むというようなものですね。何もしなくても体の中の水分は、お手洗いや汗でどんどん排出されていきますからね。

ここまで、
・駄々をこねている癇癪
・脳がオーバーヒートして我を忘れてしまっている癇癪
とそれぞれできるアプローチを伝えてきましたが、そのどちらにも効果的アプローチがあります。
それは、生活リズムを整えることです。

さらに言えば、癇癪を起こしやすい子も、そうでない子でも一緒で、子育て中にはとても大事にして欲しい視点です。
具体的には、朝起きる時間、夜眠る時間そして朝昼晩の3食の時間を同じように意識すると、かなり生活が楽になってくると思います。ぴったり「何時」と決めなくていいです。だいたい1時間位の幅でこの時間と決める。

保育園や幼稚園、学校がある日は、家を出る時間や帰宅の時間が読めるし、昼食の時間が決まっています。そうするとごはんとごはんの間は何時間あって、その時間だったら何ができるか?そんなにたくさん選択肢はないので、おのずと決まってくるのです。だから、それに合わせてしまって、登園登校する日の朝ごはんと土日や祝日、お休みの日も食事の時間をできるだけ揃えてみるととってもいいです。

■辰也
例えば家族で朝早くからおじいちゃんに会いに車で出かける日なんか、出発は早かったとしても毎日7時半くらいに朝ごはん食べていたら、おにぎり用意しておいて車の中で7時半前後につまむとか、旅行先の宿でもいつもの時間帯に食事をお願いして、それまでにチェックインするとか、大体その時間めがけて食べるっていうスケジュールをイメージしておいてください。そしたら家で食べようと外で食べようと、週末も関係なくその生活リズムが子どもの中で育まれるので、無意識に体が落ち着くんですよね。安定したリズムだから、頭で考えて落ち着くのではなくて、体が安心するということになります。癇癪を起こしづらくなるということですので、ぜひ心がけてくださいね。

■薫子
もう一つ、ついお子さんの生活リズムが崩れてしまうケースとして思い出すのが、お父さんと関わる時間帯です。毎日お仕事を精一杯やって遅い時間に帰宅するお父さんに対して、素敵なお母さんであればあるほど、子どもとお父さんの時間を大事にしたいという思いになります。たとえ23時だろうと、一目会わせようとわざわざ起こしちゃったり、子どもの夕飯の時間を遅らせて家族みんなで食べられるようにしたりとかっていうことがあるようなのですけれども、お子さんが小さければ小さいほど大事にしたいのは、お子さんの生活のリズムです。たとえ食事の時間にお父さんがいなかったとしても、普段からお母さんがお父さんを尊重する気持ちを持っていれば大丈夫。自然とお母さんの普段の言動に現れますし、子どもには十分伝わります。
そして、休日にお父さんと時間をたっぷり過ごすっていうのもとても大事なことなんですけれども、その時間を大事にするあまり子どもの生活リズムを崩さないようにできるといいと思います。子育てにおいては様々な考えの方がいると思いますが、私たちとしてはやはり子どものリズムや、睡眠時間を大事にしていただきたいなと思います。

■辰也
このことだけ聞くとお父さんがかわいそうと思われてしまうかもしれませんが、まだまだ生活リズムが整っていないこどもとそのお父さんが、週末や夜の時間に過ごすことをいくら楽しみにしてその時間を確保していたとしても、リズムが狂うことでお子さんがぐずぐずしたり、癇癪を起こしてしまったらお父さんにとってもなかなか良い時間にならないと思うので、これはお子さんだけでなくお父さんのためにも重要な視点だと思っています。

■薫子
このように、癇癪を起こしているときの「魔法の1手」はないけど、癇癪を予防できる最善の1手として、毎日のリズムを整えてみてください。

■辰也
そしてもう一つ、毎日のリズムを整えておくからこそ、子どもの変化に気がつきやすくなります。だから、その日の癇癪の原因が食事の時間がずれたことなのか、睡眠不足によるものなのか、それともその時起こった出来事なのか、お母さんやお父さんが気づきやすくなるんですよ。そんな風にリズムを整えることは、癇癪を減らすことにも、その原因を探ることにも役に立ちます。起こった癇癪を鎮めるのではなく、普段から取り組むことで癇癪を起こす頻度を減らしていくという視点で、取り組んでみるのが一番いいんじゃないかなと思います。

■薫子
子どもによっては、癇癪の原因が直前の出来事ではなくて、だいぶ経ってから癇癪を起こすこともあるんですよ。その観点からも、やっぱり生活のリズムをいつもように整えておくと、昨日と今日であの部分確かに違ったな、もしかしたらそれが原因かもしれないなという風にして、保護者のみなさんが少しずつお子さんの一番の理解者、スペシャリストになっていっていただきたいなと思います。

■辰也
お父さんにも、このことはぜひお伝えしておいて欲しいですね。

■薫子
お父さんはお子さんを大事にするあまり、いろいろなやり方で遊んであげて、喜ばせようとしてその結果、興奮させすぎてしまうことが多いですね。あまり特別なことはいらない、いつもと同じように楽しむというあり方、過ごし方を是非共有していただけると嬉しいです。この話を、我が家は食事の時間や週末の過ごし方をどうする?っていう会話のきっかけにしていただけたらとても嬉しいです。

■辰也
子どもの癇癪との向き合い方についてお答えしました。

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