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【小説】 六時十度三百九m/s その1


 地上10000階のランドマークタワー及び直通エレベーターが建築されたのは記憶に新しいことである。
 その高さおよそ20kmにもなるこの史上最高のタワーは、当たり前のことだが建築途中から全世界に注目され、著名な投資家からの大口出資や企業投資が数度に渡って行われた。人類の今後の宇宙進出が賭けられた一大プロジェクトとして連日連夜テレビ・ネット・ラジオ・新聞にその動向が伝えられることとなる。そんな話題性抜群のエレベーター、この記念すべき第一回搭乗権当選キャンペーンには、実に一億を越える応募者が殺到した。しかし乗れるのはわずか三百三十人のみ。厳選に厳選され、二十万の倍率をくぐり抜け雄太は見事当選した。
「当たった」
 物心ついた時から重度のエレベーターマニアである雄太は、その日すぐさま銀行の貸金庫に当選通知を隠した。何故そこまでしっかりと保管する必要があるのかと思うが、搭乗権はオークションで三千万円で落札される、搭乗権を得た男性が優越感を見せびらかしたブログは炎上しサーバーがダウンし、更に搭乗権をめぐり殺人が行われるなど、話題性めぐるエレベーターと同じく搭乗権は全世界を一通り騒がせたのであるびっくり。
 この騒ぎは収まることを知らず、とうとうエレベーターへ初搭乗できる記念式典の日がやってきた。 





つづく

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