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読むまちづくり

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#公共財

「正の外部効果」をもたらす活動としてのまちづくり活動

「人は集まると何か良いことが起こる」は本当か 先日、とあるまちづくり活動家が「目的なんて後でいいんだ、人が集まれば何か(いいことが)起こるんだ」という熱い信念を語っていた。その熱は私にも伝播し、胸が熱くなるのを感じたものだ。 一方、すぐに冷静になって考えた。こういうのを「熱伝導率が高い」という。もしくは「熱しやすく冷めやすい」という。 マトリフ師匠から褒められるくらいに冷めた頭で考えると、多分、「人が集まる」と「必ず、誰にとっても良いことが起こる」というのは拡大解釈で、

チラ裏化、誤配と消化不良、SNSのタイムライン問題、オーバーギフティング、信仰あるいは気分について

自分の書くものの「チラ裏」化の進行なんだか久しぶりにまとまった文章を書いている。最近、文章を書いてもネットに公開しないことが増えた。本当の意味での「チラ裏」化してきている。かつては、もっと早く、もっと広く見てもらわなきゃ、みたいな妙な焦りみたいなものがあったし、もっといえば、「せっかく考えたことだから多くの人に知らせる方が親切だろう」と思っていた。だが、そういう感覚が薄れてきて、わざわざ人に見せなくてもいいな、と思うようになってきた。これは結構新鮮なことだ。

モテるまちづくり再論〜「ゆるさ」と「楽しさ」からまちづくりをはじめなおすために

某自治体から、市民の地域活動者向けに、まちづくりを進めるための実践活動の手法や考え方を学ぶまちづくり講座を依頼された。頂いたお題は4点、「そもそもまちづくりとは何か?」「何をすればまちづくりがうまくいったと言えるのか?」「新しい仲間づくりを楽しむためには?」「まちづくり活動のゆるさ、わくわく感を大事にするにはどうしたらいいか?」というものである。 この自治体では地域自治政策を推し進めているが、自治をまともにやろうとすればするほど、地域組織は悩んでしまう。言い換えれば、これま

電子書籍「世界で一番親切なまちとあなたの参考文献」発売のお知らせ

いつも「読むまちづくり」「秘密日記」をご購読いただき、ありがとうございます。いつもお世話になっている皆様へささやかなクリスマスプレゼントのお知らせです。

「地域の担い手不足」という言葉を頭数の問題ではなくて人格的な成熟の問題として考えてみる話

加入率100%の町内会を作るというリサーチアクションをした以前、ちょっとしたリサーチアクションをしたことがあった。町内会の加入率低下が問題になっているという。ならば、町内会加入率100%の町内会を作ったらどうなるか。どうすれば作れるか。そういう思考実験は昔からしていた。 5年ほど前、たまたま引っ越した先が町内会がない地域だと知って、じゃあ先のような問題意識から、新設してみようと考えた。私が町内会長で、妻が副会長。二人だけの町内会だ。加入率は100%である。 そして、この

「都市の余白」を供給する、ローカルなプチブルによるエリート統治、としてのまちづくりの話

まちづくり=まち(の人なら誰でも使える公共財)づくり説私はこれまで、まちづくりを「まち(の人なら誰でも使える公共財)づくり」の略であるという定義を採用し、まちづくり活動をする上で生じる様々な楽しさや喜び、可能性、あるいは困りや悩み、限界といった現象のメカニズムを説明してきた。 詳しくは拙著「モテるまちづくり」シリーズに詳しい。キンドルアンリミテッドで無料で公開している。 私の友人が書いてくれたとても詳しい解説があるのでそちらも参考になる。 さて、私はこのように、まちづく

「ワクチンを打つかどうか」を聞くことがワクハラ認定されるのは、どういう場合か

 ワクチンハラスメントっていうのがあるそうだ。これは、「ワクチンを打たない人への嫌がらせのこと」を指す言葉だとされる。  だけど、やっかいなのは、ほかのハラスメントと同様に、「嫌がらせ」の定義においてハラスメントをする側とされる側との間で違いがあるってことなんだ。  例えば、おそらく問う側はおよそ嫌がらせだと思っていないであろう、「あなたはワクチンを打つの?」と聞くこと自体、問われる側からすれば、余裕でワクハラっすよ、って認知する場合があるわけだね。  同様に、例えば「

「加入するメリットがない」んでなくて「非加入でいることにデメリットがない」んだよな

 よく、住民参加のまちづくりでは町内会の役割が重要だっていうんですね。でも一方で町内会の加入率低下っていうのが近年問題になっていて、それに伴う担い手不足、高齢化、アイデアの枯渇、利用者へのアクセス不全など、組織維持が難しい状況があると言われています。  加入率の低下については以前こちらにも書きました。  ここでも書いたんですけど、加入率低下っていうのは長年に渡って全国的に起きている問題というよりは、ここ20年に主に都市部で起きている問題だって言うことが示唆されていて。80

「新しい公」の理想と、Googleやツイッターやネットフリックスという現実。

 まちづくりなんかに関わっているとしばしば聞かれる文句で、「公共サービスは行政の独占物ではない」というのがある。こういう文句があるということは、翻ってかつては行政の独占物であったという認識がまずあって、それに対するアンチテーゼとして掲げているということだ。  で、「公共サービスを独占しない」ってことは「公共サービスは行政だけでなく、色んな人と分担して提供しましょうね」っていうことで。この考え方は「新しい公」と呼ばれたりする。  つまり公共サービスの供給体制について大きな転