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読むまちづくり

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#市民活動

コロナ禍における市民活動の新設と展開プロセス 京都市伏見区醍醐地域MK氏の活動のケーススタディ

2023年7月2日に東京都市大学で実施されたコミュニティ政策学会大会で、「コロナ禍における市民活動の新設と展開プロセス 京都市伏見区醍醐地域MK氏の活動のケーススタディ」と題して報告をしました。ここではその報告の記録を記しておきます。 ※なお本報告は山田大地氏との共同報告。 研究の背景と目的コロナ禍で少なくない地域活動が活動を停止、縮小してきた。大体の調査を見ていて、全国的にそのような傾向があったことがわかっている。 そんな逆風の中、むしろ新規に活動を始め、さらに既存の地

「めんどくささ」の閾値も人によって異なる説〜あるいは、「めんどくさい」まちづくりでリクルーティングをやっていくための一考察

 最近、なるほど、と私に気づきがあったのが、特定の行為に対して「めんどくさい」と感じる閾値にも個人差があるっぽい、ということだった。  例えば、誰しも一度は「めんどくさい」と感じたことがあるであろう学校の宿題というもの。これだって、同じ宿題でも「めんどくさい」と感じる人と感じない人がいたと思うんだね。  で、宿題をめんどくさがらず、ちゃんとやってきた子は優等生として扱われ、めんどくさいといってちゃんとやらなかった子は問題児として扱われるという傾向があったわけだ。

「徹底した過剰さ」が足りない

 しばしばまちづくりや市民活動なんかでも、「好きなことや、やってみたいこと、を手がかりに、活動をはじめましょう」というようなことを言われるが、これほんと「手がかり」で、「好きなことややってみたいことをやっていればいい」というわけではないのだとしみじみ思う。

「人間集団の自動運転化」について考える

 人間の集団は、しばしば乗り物に例えられる。組織を一つの船に例えてみたりして、出港したとか沈没寸前だとか、飛行機に例えて離陸した、とか、自動車に例えて急カーブに差し掛かっている、とか。  人間の集団が乗り物であるとすると、その乗り物を運転する人間というのがいる。ハンドルを握り、アクセルとブレーキを踏み分け、事故らないように目的地まで走らせる人間だ。  世の中、「人間集団の操作スキル」というのがあって。僕らの社会には、たくさんの他人の協力を調達しないとできないことっていうの

ゲリラ化した市民活動-アルベルト・メルッチ『現代に生きる遊牧民 新しい公共空間の創出に向けて』

 いまさらだけどアルベルト・メルッチ『現代に生きる遊牧民 新しい公共空間の創出に向けて』を読んだ。まちづくりを含む現代の、いわゆる「市民活動」というものの位置づけを確認するため。  現代といっても、英語版が出たのが1989年とかで、しかもイタリアの市民運動のフィールドワークをもとにした記述ではあるものの、大きな流れがつかめる。  ポイントは70年代以前の運動論となにがどうちがうか。 産業資本主義の時代における労働者階級の行為は、集合的現象の研究に当たってモデルとしての役

「やりたいことをやりましょう」型のまちづくりが勃興してしまう背景には、地域の合意形成機構の権威の衰えがあったんじゃないかって話。

 「まちづくり」って多義的な言葉なので、議論で使うためにはまず定義が必要です。で、僕は「まちづくり」とは、「まちの人なら誰でも使える公共財づくり」であると定義しています。誰でも使えるわけですから、例えば道路や橋、景観なんかも公共財であることがわかります。とすると、勝手にまちづくりされては困る人もいることがわかってきます。  まちづくりには、どこか善のイメージが伴っており、まちづくりで困る人がいる、というのはなんだか想像がしにくいかもしれません。しかし、例えば道路に不快な絵を

バウマンのいう市民とは「モテる人」のことだよねっていう話。

 熱い論文を読みました。山本 真知子『もう一つの身体作法の獲得に向けて ——「社会運動の高齢化」という問題から考える——』。  これから紹介していくのは,そうした既存の他者との関係を編みなおすプロセスを展開 しはじめた者たちのなかでも,近年,沖縄の反基地運動に加わりはじめた/新たなかかわ り方をはじめた高齢者たちである.換言すれば,彼女/彼らは沖縄と直接的にはかかわり のない数々の運動を展開する過程を通して,沖縄の反基地運動に新たに参入してきた百戦 錬磨の人たちでもあるのだ

疫病で市民活動にどんな影響があったのか−大阪ボランティア協会の調査結果から

 まちづくり支援者界隈では、疫病が落ち着いてきたこともあり、いよいよ地域活動や市民活動への支援の強化が始まりつつあります。では、どんな支援が求められているのでしょうか。当然ながら、現場の活動家がどんなふうに困っているか、ということから知る必要があります。  この点について、大阪ボランティア協会が主催した調査結果を公開してくれています。「新型コロナウイルス感染症が市民活動に及ぼす影響に関する調査(正式版)」という報告書にまとめられています。  調査方法は、主催団体がネットワ

定住民と流動民との政治対立という観点から見るまちづくり団体の「地縁 対 志縁」構図。

 以前にこんな記事を書いたんすけどね。 後に「ボランティア元年」と呼ばれるこの時期、地縁とは異なる志の縁、すなわち「志縁」を契機に組織を作り活躍する人々の存在が可視化されたことは、まちづくり活動の担い手不足問題の解決に一つの可能性を大いに予感させたことでしょう。オーソドックスな地縁組織の人手不足を、これら志縁組織がカバーできるのではないかという素朴な期待は、少なくない人々が抱いたのではないでしょうか。  しかし、この二つの組織の融和は、当時の人々の期待通りに進むものではな