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フシギおしゃべりP-miちゃん(5)

「ネットに夢中だね。何を一緒懸命やっているの?」
今日もうるせえな、このロボットは。
別にいいだろう。何をやろうがよ。
しかも今日は最初からペラペラじゃねえか。

俺は小うるさいロボットを無視して、某掲示板にアヤカに振られたことをカキコしていた。勿論名前は仮名にしておいた。だってこの悲しみを俺一人ではとてもじゃないが抱えきれないからさ。

あと元カノが置いていった生意気ロボットに苛められていることもカキコした。さあ皆、俺を慰めてくれ。

「はあー。暇だな」
本当に独り言が多いロボットだな。少し黙れ。
「お?」
さっそく反応が来たぞ。
何々。
………………。


ロボットに舐められていて草www

あんたがクソだから彼女に振られたんだろ。
挙げ句の果てにロボットに泣かされました(泣)ってガキかよw
豆腐メンタルだなw
久しぶりにワロタwwww
大変でちゅねー坊やwww

こういう男っているよね。
無意識に女を下に見ててさ。
彼女逃げて正解だし(笑)

お前が彼女になんか傷付くことを言ったんだろーが。まあ結婚する前にこんなロボットにバカにされるモラハラ男から離れて良かったんじゃない?元カノ。

これ釣りか?
それにしてもロボットに苛められたって、なんのファンタジーだよ。
もっとましな嘘つけよ糞。

な、なんなんだよおおおお!
お前らさあああ!
もうこれ以上俺のメンタルを壊さないでくれよおおおおおおおお!!

そうか、そうですか。
某掲示板でも叩かれるんですか。
そんなに俺を苛めて楽しいか!
更に俺の絶望感が増した。

「あのさネットに慰めなんか求めても意味ないよ。虫の息になるまで、とことん叩かれるだけ」
P-miは呆れたように言う。
おいなんでお前、俺が今ネットに慰めてもらおうとしているのを知っているんだよ。
お前の位置からじゃ、俺のパソコン画面は見えないはずだぞ。
「実はね、Wi-Fiを通してあなたの情報が僕のところに流れてくる仕組みになっているんだし」
このロボット、さらりと怖いことを言いやがった。
「こえーよ!! なんでそんな仕組みになっているんだよ!!」
「アヤカがそう設定をしたから」
P-miは更におぞましいことを言ってのけた。
「はあ!? いつだよ! それ!?」
やべえ。手汗がすげえ。
「結構前に」
とP-mi。
「結構前っていつだよ!?」
畳み掛けて聞く俺。
「んー。かなり前」
くそっ。なかなか手の内をあかさねえな。
「もういいわ! で、どうしてアヤカが俺の情報をお前にいくようにしたんだよ!?」
「女の影を感じたから」


う、
俺は息を飲んだ。
もしかしてあれか? あれのことか?
イヤ…でもあれは断じて浮気じゃない。
ただ職場の後輩の相談にのっていただけだし。それにアヤカにはアノ子の話はしていなかったし。くそ、今度は背中に汗が出てきた。


「あれは違う! 俺はただ職場の後輩に恋愛相談されていただけだし!」
「ふーん。じゃ連絡は取り合っていたんですね」
くっ! こいつ突っ込んでくるなあ!
「そうだよ? 人生の先輩としてアドバイスしてあげただけさ」
「じゃなんでコソコソしていたの?」
P-miは根掘り葉掘り聞いてくる。お前は俺の彼女かよ。
「な、こ、コソコソなんかしてねえし」
「あなたがやたらスマホを気にしていたから、アヤカはピンと来たって言ってた」
「くそなんで俺ばっか責められなきゃいけねえんだよ! 大体浮気したのはアヤカじゃねえか! 俺は浮気はしていないぞ!」
「でもその職場の後輩可愛かったんじゃないの? 本当は下心あったんじゃないの?」
P-miは、ピンクのライトを細くした。
「うっ!」
ちきしょー! 男心がバレている!
「でもユウマって残念の塊だから、職場の子もあなたに乗り換える所まではいかなかったみたいだね」
くっ!
確かに先輩ってなんかアレですね、ちょっと違ったかなとは言われたけどさ!
「それも別れを決意した要因の一つらしい」
とP-miは俺に告げた。


くそー!
バレていないと思ったのに!
あの子、確かに可愛くて清楚系でアヤカより若かったからつい、ほんのちょっと目移りしちゃっただけなのに!
「しかもそいつ、辞めちゃったんだよね。私にはこの仕事が向いていないとか言いやがって」
俺は思わず言わなくていいことを、このロボットに打ち明けてしまった。
「本当に残念だね、職場の後輩もユウマも色々」
こいつ、いつの間に俺のこと呼び捨てしてんだよ!
「職場には他に女はいるの?」
P-miは俺に訊ねた。
「なんだよ…いきなり」
「もうアヤカは帰ってこないこと100%確定なんだから諦めろ。だから職場の誰かと仲良くなってアヤカを忘れたほうがいいでしょ?」
「…女はいるけど、アヤカ程じゃ…」
「ふう。もう一生独身でいろ」
「もうお前なんなんだよ!」

ドンッ!
びっくりしたー。
隣に壁ドンされたー。どうしよう。
「今の音、僕のデータに内臓されていた壁ドンの音。リアルだったでしょ?」
ピンクのライトが俺をからかうように、ピカピカと点滅した。
「もういやこのロボット」


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