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ハウステンボスでの澤田さんの運の話

2010年夏、ひょんな事からハウステンボスに家族で招待された。花火大会を観て、場内のホテルアムステルダムでのんびりしていたら、当時のハウステンボス特別顧問から電話があって、隣のホテルヨーロッパのバーに来るようにとのことだった。

22時をすぎた頃だっただろうか。バーに着くと席に通された。ソファで寛ぐその顔はテレビや経済雑誌でいつも拝見する顔。HISの代表でもあり、赤字で苦しむハウステンボスの再建のために長崎に就任された澤田秀雄氏だ。

「第一回ガーデニングワールドカップ の施行は野田さんに任せることにしました」と特別顧問。澤田さんから「よろしく」と握手を求められた。熱くて固い握手だった。澤田さんにとっても数億円を投じて行う初めてのイベント。凄いプレッシャーだった。

実はこのはなし、あるトラブルで頓挫寸前だった。それを救ったのは実は私たちのチームだった、と言うのは決して大袈裟でも何でもない事実。予算折衝から施工チーム、海外の有名デザイナーとの打ち合わせなど結構大変な事態だった。

あまりに予算が不足したある日の業者会議。特別顧問のこんなプレゼンが。

「皆さんに予算は限られていますが、ハウステンボスを使って運を手に入れてください。代表の澤田はHIS、スカイマーク、モンゴルの銀行など一兆円企業の経営者です。その澤田が年間売上200億円のハウステンボスを本気で黒字化するために、本人の運を使って経営します。皆さんに澤田の運を持って帰って欲しい」

業者会議にいた面々の表情はさまざまに分かれた。課長クラスの方々は困惑。稟議書に「利益は少ないが運が得られる」なんて書かなくてはならない。そんな稟議書、通るはずがない。

しかし、私や職人たちはキラキラした顔でウンウンうなづいていた。「そりゃ、よか話ばい」。単純であるが、私たちちっぽけな自営業者にとって、運を掴むことが大事なことだとも知っていた。澤田さんは「運の悪い奴とは付き合わない」と公言されていたし、自営業の人間にとっては運の良い仕事をすることが一番大事だったりする。スピ系みたいだがまじめにそう思うのだから、願ったり叶ったりのオファーだ。

だから第一回のこの大会、私が呼んだ小さな業者さんから、定年退職したゼネコンの監督やら、運を信じる職人さん達が支えたのである。なんの誇張もなくね。もちろん、地元の業者や、ハウステンボスのスタッフのHさんとかのサポートがなければ無理な話ではあったが。そしてなんとかやり遂げた。思い出しても引き渡し締め切り時間のラスト5分まで全力だった、必死だった。泣きそう。

イベントは成功し、吸う万人のお客さんに世界水準のガーデンデザインを楽しんでもらった。そう信じている。そのイベント時に初の半期黒字が発表された時は、我がことのように嬉しいものだった。

じゃあ、私はどんな運を手に入れたかと言うと、ガーデンデザイナーの仕事に全部活かすことができた。結果として、その2年後には国内のガーデンショーで金賞銀賞獲れるようになったし、2014年には英国で開催される世界大会に出場推薦いただき、出場。世界で初めての有田焼を使った庭をロンドンの王立ホスピタルで作庭。英国王室メンバーに謁見できたりメダルをいただけた。その後、西九州大学で園芸療法の非常勤講師になったり、佐賀大学大学院で地域デザインを学ぶようになったり教育方面に足を突っ込むようになったこと、運が良いに決まっているじゃないですか。

だから澤田さんにハウステンボスで「良い運を頂けて、良い結果を出せました。ありがとうございます」と伝えたことがある。「それはよかった、運は大事にしないとダメ」と言っていただき握手したのも良い思い出。

そんなことを思い出したのは、先日澤田さんの講演会の動画を偶然目にしたから。そこでも「運は大事」と力説されていた。運を良くするためには

・運が良い会社と仕事をする

・運が良い人と付き合う

と言う身も蓋も遠慮もないもの。

けどね、これすごく真理だと思うのですよ。愚痴ばかりの人とはお酒飲んでても楽しくないし、全くついてない人と会うとこっちまで影響されてしまうような感覚。いやなものです。だから自分自身も運が良い状態にしておかないといけないなと、また思い直したのです。「運の前の縁」とはよく言ったものですね。



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