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「ナイゲン2022」での変更部分まとめ

 2022年6月、アガリスクエンターテイメントの番外公演として
「ナイゲン2022」が下北沢駅前劇場で上演されました。
冨坂友さんの演出によるナイゲンとしては2019年の「果報ナイゲン」以来のナイゲンでした。

これまでのナイゲンの台本は時期によっていくつかのバージョンがありました。

○ベースとなる「ナイゲン2012年版」「ナイゲン2013年版」

○プロローグや細かいネタが追加された「ナイゲン全国版」
 「ナイゲン2016」「ナイゲン2017」

○プロローグの一部カットや台詞の微修正があった「ナイゲン浅草版」
 「ナイゲン2018」「ナイゲン2019」「果報ナイゲン」

そして今回の「ナイゲン2022」では久々に大幅といっていい改訂がありました。ここではこれまでの台本と2022の台本ではどこが変わったのかを確認していきたいと思います
基本的には見ていて気づくレベルのやや大きめの変更を中心に紹介します
※なお、変更の意図などは全て個人的な憶測です

~比較した台本~

・これまでの台本は「ナイゲン浅草版」を使用します
・「ナイゲン2022」の台本については販売されていた台本をベースとして
 配信映像から実際の台詞などを反映したものを使用します


★★★変更された箇所について★★★

○プロローグ部分の全カット

「これまでの台本」→プロローグでどさまわりと花鳥風月と議長の会話
「ナイゲン2022」→会議のために机を並べる。そして全員が入場し席に座る
 

ナイゲン全国版以降あったプロローグ部分が全カットされました。
これまではどさまわりと花鳥風月が内容限定会議や国府台高校がどういったところなのかを議長に教えることで観客にも情報を伝える場面でしたが作品のスタートが「ナイゲン2013」の頃と同様に会議を開始するところからに変わりました。
→これまでのプロローグは5分程度あり、笑いの量や本編までの長さなど総合的に再考されてカットされたのかもしれません。実際、国府台高校という学校の特殊性などの説明がなくなり会議の背景としての部分は見えづらくなりましたが、「ある高校のできごと」という作品ではなく例えば高校名などを変えても成立する話になったのではないかと思います


○道祖神の携帯使用を注意する場面の順番変更

「これまでの台本」→冒頭、議長が決を取る前に質問が無いか聞いた後
「ナイゲン2022」→各クラスの発表内容を資料で確認した後

道祖神がスマホをメモ代わりとして使っているところを監査が注意する場面ですが微妙に注意される場面の順番が変わりました
→各クラスの発表内容確認の後になったことで何をメモしていたのかわかりやすくしたのではないかと思います。


○内容限定会議の心得を読み上げる場面の追加

議長が突然「内容限定会議の心得」読み上げだす場面が追加されました

これはこれまでのナイゲンに一切なかった新しい場面でした。プロローグ部分が全カットされたため、議長の頼りなさを表す場面が減ってしまったのであらためてこの場面を追加することで議長のキャラを強調したのかもしれません。


○議長が職員室に行っている休憩中の会話の整理

議長が職員室に行っている間の休憩中に登場人物たちがそれぞれ会話して、キャラクターや抱えている問題などが明らかになる場面(伏線を張っている場面)ですが、これまではクロストーク的にそれぞれの会話が入り混じっている見せ方でしたが、ナイゲン2022ではそれぞれの会話が整理されて各グループごとに見せるやり方になりました

★「これまでの台本」の順番
おばか屋敷が3148に声をかけようとするがスカされる
→道祖神が電話しながら出ていく
→文化副と書記が海に行く計画を話している後ろでIは~が監査に罰則について尋ねる
→文化副が監査を海に誘うが断られる
→3148がどさまわりと話しているところにおばか屋敷が入り込む

「ナイゲン2022」の順番
文化副と書記がぼやく
→道祖神が電話しながら出ていく
→どさまわりと花鳥風月の会話(新たに追加)
→3148がおばか屋敷に話しかけカバンの紐をどけてもらう
→おばか屋敷が3148に声をかけようとするがスカされる
→Iは~が監査に罰則について質問する
→監査が文化副に罰則の相談をしようとするが、文化副と書記が海に行く計画を話しており、その後誘われるが断る
→3148がどさまわりと話しているところにおばか屋敷が入り込む

順番を整理したことにより、各キャラたちの話している内容がまとまって伝わるようにしたのかと思われます。
また、どさまわりと花鳥風月の会話がこの場面に追加されています。内容的にはプロローグであったものと同じもので、このあと前夜祭の話などが出てくる前フリであり花鳥風月が今回の文化祭にそこまで入れ込んでいないことを見せるために入れたものだと思われます。
そして3148の方からおばか屋敷に話しかけて、おばか屋敷の空回りが始まることになっているのも新たな追加場面です


○海の~が3148に票を入れた理由の変更

これまでの「ノーリーズン、コカコーラ」から
「ピンポン!越後製菓!」に変更

時代の変化①ですね、、、


○おばか屋敷がハンカチを差し出したときの海の~&アイス

これまでは、海の~が「ハンカチ」、Iは~が「ハンカチ王子だ」という流れでしたが
ナイゲン2022では、アイスが「ハンカチ」、海の~が「ハンカチ王子だ」という流れになり、その後アイスによる「古っ笑」というツッコミが入るようになりました。

時代の変化②、、、。ハンカチ王子も引退してしまいそもそもこのネタを知らない人が増えたための変更かと思われます


○どさまわりの投票先の変更とおばか屋敷の嘆きの追加

これまでどさまわりの投票先は「どさまわりに1票」と自分のクラスに票を入れるものでした(1クラス落とすのに反対した手前、投票はできないという理由)
ナイゲン2022では理由は一緒ですが「棄権」と票を入れない手段が変わりました
また、これを受けておばか屋敷が「棄権って選択肢もあるんだ…」と自分に票を入れた3148に聞こえるように言う台詞が追加されました。

どさまわりが自分のクラスに票を入れることにより投票行為から外れるというこれまでの行動が多少わかりにくかったのも事実だったので今回の変更でわかりやすくなり、この後の投票先が目まぐるしく入れ替わる展開においても「棄権1票」という読み上げが理解しやすくなったかと思われます


○全団体審議するべきだというどさまわりの主張場面の整理

3148に決まりそうになった流れでどさまわりが「全団体審議してから決めるべき」だと主張する場面で各団体の反応が追加されたり、アイスとどさまわりのやりとりの台詞が一部追加されました
特に印象的なのは「運営側に頑張ってもらえばいいでしょ」の追加や
「1時間以上残っているのに1クラスだけ槍玉にあげて終わらせるよりはフェア」という台詞の追加です

ここは論理の整理が行われたという印象です。どさまわりとしては会議を続けてもらう時間稼ぎをしたいわけですが、そのための理屈がこれまでよりしっかりと整った説得力のあるものになったと思います。


○審議の順番について

これまでは審議の順番は挙手制でしたがナイゲン2022では監査の提案により「クラス順」になりました。ただし結果的には元々1年1組、Iは~からおばか屋敷、海の~とクラス順に審議されていたので流れは変わっていません。クラス順なので一度審議済みの3148に議長が振るという台詞が加わりました。

これは台本の流れをスムーズにする変更だと思われます


○おばか屋敷への意見質問について

これまでのナイゲンではおばか屋敷の審議に移る流れは、どさまわりが手を挙げて疑問点を確認しだすというものでしたがナイゲン2022では、クラス順という順番的に次はおばか屋敷という流れで文化副や書記が「一昨日結構話したしねぇ」と審議を尽くしたことを匂わせたうえで誰も手を挙げないのでどさまわりが疑問点を確認するために手を挙げるという流れに変更になりました。

3日間あるナイゲンで前の2日間は一体何をやってたの?という謎に少し答えたような内容が追加されました。また、どさまわりが急に審議に加わってくるという不自然さを無くすという意味もあるかと思います


○「戻すのってどのくらいかかるんですか?」

おばか屋敷がお化け体験のメイクについて説明している際に行われる質問台詞「戻すのってどのくらいかかるんですか?」はこれまで文化副の台詞でしたがナイゲン2022では花鳥風月の台詞となっています。
文化副はおばか屋敷の「約3時間です」に対して「長っ」というツッコミ台詞を言う形に変わりました

こういった台詞を言う人の変更は今回のナイゲン2022ではいくつか見られます
また、モンキーバナナのくだりでの文化副の台詞「短っ」とのセットになっています


○議長への監査のツッコミが追加

海の~の「休憩1時間」に対して議長が「いけないですよ!うわ危なかったぁ…」というセリフに対して監査が「おい!」というツッコミが追加

単純に監査好きとしては嬉しかった追加


○花鳥風月のおばか屋敷に対する「よく行けるな」追加

おばか屋敷が時間稼ぎの可能性をみんなに説いている場面で3148にも熱弁した際に花鳥風月が発する台詞「よく行けるな」が追加
(直前におばか屋敷が似顔絵書いて3148を引かせていた為)

これはおそらく稽古などでウケた為追加されたものだと思われますが毎回鉄板でウケていたくだりであり今後も継承されそうな匂いがします


○擬音の解釈の短縮

「サッ」の擬音に介する海の~とおばか屋敷のやりとりで、これまでは「コトコトはポトフ」→「ポトフはグツグツ」→「グツグツはマグマ」まで言ったところで監査からツッコミが入りましたが。ナイゲン2022では「コトコトはポトフ」の後にツッコミが入るようになり「グツグツ」と「マグマ」がカットされました

以前よりあまりウケが取れなくなっていた部分なのでカットされたのだと思います(個人的には好きだったのですが)


○ミニスカサンタの場面の大幅変更

アイスの発表内容を海の~が必死に咎める場面でミニスカサンタに関して取り上げる部分が大幅に変更になりました

★これまでの台本★
アイス「女子はミニスカサンタ、男子はサーファーで上半身裸なので問題ない」
→海の~「裸なのは問題では?」
→監査による上半身裸に対する解釈
→海の~「監査委員長がミニスカになるのが問題では?」
→監査委員長がミニスカサンタになることについて問題が有るか無いかの決を取る
→ギリギリで問題なし。問題あればジャージに変更する
→監査「じゃあ着ねえよ!」
→海の~「ミニスカサンタはアイスの個人的な趣味では?」
→議長「この資料は僕が書いたので」
→それは問題では

★ナイゲン2022の台本★
アイス「女子はミニスカサンタなので問題ない」
→海の~「ミニスカサンタは卑猥なので問題では?」
→ミニスカが校則違反かどうかの監査の意見と異装届けがあればOKとの解釈
→海の~「監査委員長がミニスカサンタになるのは問題では」
→ハワイ庵が監査を擁護。みんなを巻き込んで「似合うかどうか」「見たいかどうか」についての論争が始まる
→議長が「監査委員長がミニスカサンタになることに問題が有るか無いか」の決を取ろうとするが監査に止められる
→議長が癒着していない説明と規約のことをよくわかっていないという告白。そして「僕がこのナイゲン資料を書いた」との台詞

と大幅に流れの変更と追加がありました

この場面の変更はまさしく令和の時代に上演する作品という意味で大きな変更だったと思います。監査の見た目いじり的なものは以前の台本でもウケていましたが人によってはあまり気持ち良いものではないという感想もありました。今回も監査がミニスカサンタが似合うかどうかでいじられているのではありますがハワイ庵が味方するというアングルが加わったり実際には決を採らなかったりと個人攻撃に見えないような配慮が見えます
その代わりどさまわりと花鳥風月の有り無し議論が加わったり、おばか屋敷の無駄に論理的な考察が加わったりと変更しても面白さは変わっておらず上手く修正したなと感心しました


○アイスの不正にキレる役割の変更

議長が2年2組の資料を作ったことが判明した後のやりとりで1年生側で追求するのがIは~だったのがおばか屋敷に変更になっています
なので海の~と一緒にWで「癒着ですか!」をやる相手がおばか屋敷になりました
また、これまではその後に監査に対しておばか屋敷が参戦して監査もグルだと責め立てる流れになっていましたが、ナイゲン2022ではIは~はしばらく参戦せず最後に思いたって不正を糾弾して3148にも促すという流れになりました
このためおばか屋敷の「汚職です」がカットされ、汚職の見返りは「ミニスカサンタだ」というくだりも無くなりました

この場面も大幅に変更になりました。3人で畳み掛ける部分がなくなりとってもスッキリしました。ただ、正直これまでの場面はウケていたのでカットされたのは意外ではあります。
また、3148がIは~に促されて票を変えるという部分が追加になったことでおばか屋敷の嫉妬が凄いというのがわかりやすくなっています


○3148「月イチ…」

これまで座組によって言ってたり言ってなかったりしていた、海の~の浮気回数が8回であることに対するツッコミ台詞「月イチ…」がナイゲン2022では3148の台詞として明文化されました

上手く行けばウケる台詞なのですが今回は他の人たちの台詞にかき消されててあまり効果は得られてなかったかなと思います


○おばか屋敷が誤解を解く場面の変更

3148とIは~の仲を疑って嫉妬していたおばか屋敷がその誤解を解く場面ですがこれまでは、なんとなくおばか屋敷が2人に探りに言って誤解を解く流れでした。ナイゲン2022では3年生の3人がおばか屋敷の嫉妬について話すことでおばか屋敷が否定してIは~が誤解を解くという流れになりました。また、2人でアイスを食べに行った理由としてIは~の彼女と3148が従姉妹同士だったという理由が加わりました

この場面に3年が加わることでIは~が彼女いることに対して道祖神が「嘘、彼女いるの!?」というIは~を舐めている発言に対して→Iは~「なんすか」とキレ返すという鉄板でウケていた流れが生まれました
また、彼女がいるのに友だちだからといって他のクラスの女子と2人でアイス食べてツーショット撮るのは問題有るんじゃないかという言われてみたら当然の疑問についても今回解決されました(3148が彼女の従姉妹だと知って写真を送るためという理由)


○ハワイ庵に何があったのか、、、

海の~がトイレに行っている間の場面ではこれまでもハワイ庵が文化書記を慰めることはやっていましたが今回はハッキリと台詞が付いて
「ああいう男はね、直らない」というハワイ庵、過去に何があったの!?という場面になりました

いったい何があったんでしょうね、、、


○宇宙の海の家のカット

海の~が必死で他のクラスの粗を探そうとする場面。これまではコンセプトが被ることをアイスに「海の~も被ってるでしょ」と指摘された際に「ウチのは宇宙の海の家」なんでと苦しい言い訳をしていましたがその場面が丸々カットされました

これまであまりウケていなかったのでやむなしかと、、、


○花鳥風月の上演許可書を探す場面が少し増えた

花鳥風月が上演許可書を提出していないと指摘される場面、これまでは文化が受け取っていないと聞いて花鳥風月がすぐ休憩を取って確認に行っていましたが、ナイゲン2022では文化副側のミスなのではないかというやり取りが加わりました。また、果報ナイゲンで行われていた花鳥風月が部屋を出ていく時に海の~に対してわざとゆっくりとした動作をするというシーン(果報ナイゲンでは「休憩行ってくる、、、1時間」というものでしたが)がナイゲン2022でも行われました

これはやり取りを加えることでご都合主義的な印象を薄めたのかなと思いました。花鳥風月がわざとゆっくり部屋を出ようとする動きは面白く今後も継承されていけば良いなと思いました


○やたらと「谷川さん」を連呼するおばか屋敷

花鳥風月を待つ間に誤解が解けたおばか屋敷が3148に話しかける場面、ナイゲン2022ではやたらと「谷川さん」と3148の名字を連呼するように変わっていました。

連呼することで笑いが増したと思います


○下校の前に3148からおばか屋敷に話しかける

ナイゲンが承認されてみんなが部屋を出ていく際に、これまではおばか屋敷が「いやぁ疲れたよねぇ」と3148に話しかけてからアイスを食べに行こうと誘っていましたが
ナイゲン2022ではまず3148が「いやぁ疲れたよね」とおばか屋敷に話しかけており台詞が入替っています

最初のシーンでもそうですが今回の3148はおばか屋敷に話しかける回数が増えています。演じる役者さんにもよるかもしれませんが3148に悪女感が少し漂ってきたかもしれません(個人的感想)


○他、細かい修正

・最初の休憩中に文化副が花鳥風月に「前夜祭とか開祭式の担当だったんですよね」と聞く台詞が追加

・海の~が難癖をつけに来た時の花鳥風月「あー来た…」追加
→これも稽古中に追加されたのかもしれませんが(台本に無い)ウケていた台詞

・全団体審議が終わったかの確認台詞が議長と監査で入れ替わりました
→これまでは議長が「全団体話したってことですよね」→監査「そうですね」だったが
ナイゲン2022では監査「これで全団体について審議できたんじゃないでしょうか」→議長「そうですね」と変わりました

・おばか屋敷「それに、昔は自分の教室以外でも演劇をやったクラスがあったって兄から聞いたことがあります。]
→「兄から」が追加されて、兄から色々聞いていたことの回収をわかりやすくした

・エコエコアザラシは「モンスター」→「化け物」に変更

・退室しようとしているアイスに3148が「いや、そういうことじゃなくて」と言った際にアイスが「なあに」という台詞が追加

・文化副と監査が退出する際に監査が「なんでキスしたの?」と聞いたことに対して「デリカシー!」の台詞が追加された


以上がナイゲン2022での変更点まとめとなります。今後もナイゲンは色々な座組で上演され続けていくと思いますが、今回の台本が元になるのか楽しみです
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#演劇 #ナイゲン #ナイゲン2022 #小劇場

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