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朝起きて、夜寝るまでの「最高の1日」を考えてみる

早朝。ベッドの上でふわっと目が覚める。窓を開けると、小気味良い鐘の音と共に、コーランが遠くから響いてくる。あたりはまだ薄暗い。時計を見ると、時刻はきっかり朝の6時だった。

薄い長袖の服を羽織り、まだ少しだけ肌寒い空気を思いっきり吸い込んで、庭へと出る。空を見上げると、青とオレンジの羽をまとった鳥たちが木の上でおしゃべりを繰り広げていた。

部屋に戻り、キッチンで朝食と暖かいコーヒーを準備する。日の光が少し入ってくる簡易机で熱々のコーヒーを飲みながら、まずはメールの返信を済ませてしまう。今日は午前中に、フォトエッセイの連載も仕上げてしまいたい。 

カタカタとPCを叩いていると、足元にするりと飼い猫たちがやってきた。「おはよう」と話しかけると、ニャーと返事をしてくれる。
数ヶ月前まで野良猫だったのに、今ではすっかりなついてくれた。 

「やあ。今日もはやいね」
ずんぐりと大きな体に、優しく垂れ下がった目。
庭で洗濯物を干していると、お隣に住んでるおじさんが話しかけてくれた。
わたしはにっこり笑い会釈をすると、おじさんもにっこりと微笑む。
今日はお仕事ですか、と話しかけると、少し顔をしかめるふりをして、仕事道具を私に見せてくれた。
わたしも簡単に身支度を整え、PCとノートを片手に、家の側のお気に入りのカフェへするりと出かけることにした。
今日は、家から5分の、あの場所にしよう。 

定番の席に腰掛け、昨日、おとといと撮影した写真を、1枚1枚、丁寧に編集していく。少しぬるいスムージーを、一口飲む。
写真たちを追いかけるように言葉たちが、楽しげにノートの上で踊った。

段々と、街中からにぎやかな声が聞こえ始めた。マーケットが目を覚ましはじめたのだ。これが、お昼の合図。
わたしはカフェを出ると、ここからまた、いつものお店へと向かう。食堂のおばちゃんと目があい「いつものやつ」と言葉を交わし、小さな椅子に腰掛けて、定番メニューを頬張る。この、空の下で食べるご飯が最高に気持ちいいのだ。透き通るように青い空を見上げながら、1枚、シャッターを切った。 

午後。昼食を食べたあとは、カラフルなビーズやボタンをめいっぱいにアトリエに散らかして、アクセサリーをつくる。もくもく、もくもくと。ひとつずつ。紡いでゆく。
アジアやヨーロッパ、アフリカ...いろんな色が、するすると紐を落ちてゆく。私の手から、人々をワクワクさせるような何かが生まれるのだ。 

時間もわすれてそんな事をしていたら、いつの間にか、友人がふらりとお菓子を持ってやってきた。気づけばもう3時になっていて、そろそろお茶の時間になる。 

「今日は朝から仕事?」
「うん。メール返してエッセイ書いて、アクセサルー作ってた」
「ふうん。わたしはこの後お店番だよ」
「終わったら夕飯、うちに食べにきてよ」
ひんやり冷たいお茶と、持ってきてくれたお菓子を食べながら、今日の報告をするのが日課だ。お互い言語はたどたどしいものの、だいぶ意思疎通が取れてきたように思う。 

最後の一滴を飲み干して、友にさよならをする。頭の中には早く形にしてほしい、沢山のデザイン達がぐるぐると渦巻いていた。

だんだんと、手元が薄暗くなっていく。街がオレンジ色に染まり、夜がやってくる時間だ。わたしはアトリエから家に戻り、猫たちに夜ご飯を出す。ちいさな電気をひとつ付け、ごろりとベッドに横になると、読みかけの本をぱらぱらとめくった。 

19時。 

そろそろ、家の近くに住む仲間の家で、夕飯の時間がやってくる。読みかけの本を閉じ、ふらり外へと繰り出すと、まんまるの黄色い光が、体に落ち。影になり、追いかけてくる。辺りにはまた、コーランが静かに響き渡っていた。 

友の家族とともに夕飯を囲み、20時30分頃にはさよならをする。
わたしの朝はとびきり早いものだから、この時間になると、もう眠くなってしまう。
家に戻り、シャワーを軽くあびる。
猫とゴロゴロしながら、22時にはもう、大抵夢の中にいる。

こうして今日も、わたしの最高の1日は、幕を閉じるのだ。


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と。いうことで。

半年に1回くらいのペースで、こんな風に、朝起きて夜寝るまでの「最高の1日を考える」という練習をやっています。

妄想でした。

これが実現可能か、不可能かはあまり関係なくて。
自分は何を大切にしているのかを知るための、個人ワークショップ。
今回、久々にやってみました。
またこの日記を半年後見返したら、だいぶ違うと思う。また半年後に見返すことを楽しみにしながら。

2018年9月5日のわたしは、うーん。これはどこだろう。
この最高の1日を見る限り、写真を撮って、言葉を紡いで、アクセサリーをつくりながら。
モロッコのマラケシュあたりに、どうやら住みたいようです。

今日も、良い夢を。

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