見出し画像

「会社の編集」という仕事の探求 #インハウスエディターの役割

5月中旬、PR Table Community主催で、インハウスエディターを探求するトークイベントが開催された。
登壇者は「サイボウズ式」の藤村さん、「北欧、暮らしの道具店」の津田さん。モデレーターはPR Tableの大島さん。3名とも、既にインハウスエディターとして活躍されている方々である。
https://peatix.com/event/380129/view

インハウスエディターという職種は、最近になって広報界隈では時々聞くようになったが、インハウスという言葉とエディターという言葉すらも、ここ数年で知ったくらい私には馴染みはなかった。

インハウスエディターという仕事のことは、色々な話を総合して以下の解釈をしていた。

・企業の中にある程度コミットして企業を編集、発信して行く人。
・事業だけの目線ではなく、時にPublic Relationsの目線において、経営や事業の進むべき道を考える人。

ここで言う編集は、書籍編集や雑誌編集などに見られる「メディアを作るときのスキル」のことではなく、もっと広義で、情報を広く集めて編んで、最適に伝えやすい状態にすること全体を指している。

私も、一部の業務を考えると、インハウスエディターのようなことをしているなと感じていた。会社の情報流通を司ることも編集だし、会社の仕組みを発信していく際も、仕組みから文章のメッセージまで、編集は必要だからである。
ただ、今回はWEBメディア(オウンドメディア)運営の方が登壇者。私はオウンドメディア担当ではない(会社のブログは書いているが)。何か解釈に差があるのかもしれない。読まない日はないほどの注目度の高いメディアの方は、どんなインハウスエディターなのか、とても興味がありイベントに参加した。

メディアはあくまでコミュニケーション手段のひとつ

イベントの初っ端から「このイベントは、オウンドメディアのスキルの話はしません」という発言。そして、経営やコミュニケーションの手段としてメディアを捉え、よりそのコミュニケーションが伝わりやすいコンテンツを作っているという話が展開された。
とにかくメディアは手段でしかないので、それ以前に持つべき心構えや視点が大事になるということ。経営で何を達成したいか。そして会社が社会に在り続けるための、ステークホルダーとのコミュニケーション(Public Relations)をどうするか。広報の勉強会でもなかなかたどり着かないような、高次な話にばかり行き着くことに驚いた。テクニックとしてのメディア編集や広報を考えがちで、それを期待して参加したのであれば、下手したらついていけなかったのではないか。
とはいえ、Twitterのハッシュタグ #インハウスエディターの役割 を追う限り、イベントではその高次な話に納得感、腹落ち感を持つ方も多くいらっしゃった。おそらく、日々の業務を何のためにやっているのか俯瞰で捉えて、本質的に考えて取り組んでいる方がイベントにいらしていたのだと思う。こんなに、インハウスエディターの方が各地でいらっしゃるのなら、世の中はもっとよくなっていくはずだと感じるほどだった。

この役割が当たり前になるには、経営の視点だけでなく、コミュニケーションの考え方が経営者の前提にならないといけないとも感じた。よく聞く経営の話では、Public Relationsの話をあまり聞くことがなく、まだまだ理解されないイメージがあったからだ(当たり前にやっている経営施策に内包されていたりするのだが)。
理解の少ない方にはどうにもテクニック論になりがちで、何か説明しようとすると概念的でわかりにくい広報・Public Relations分野。その理解のしにくさに、もともと課題感がある。そしてそれは、インハウスエディターも同じであることがよくわかった。
考え方の根本が同様であるからこそ、まずは経営層や関係者にきちんと理解してもらうことで、もっと価値が発揮されていくのかもしれない。

インハウスエディターに関する自省と疑問

イベントを通じて、私が抱いていたインハウスエディターの見え方は、少しだけ間違っていたことに気がついた。
これはどちらかというと私のスキル不足なのだが、私自身、言いたいことを伝える目線が強すぎたのだ。インハウスエディターのイベントに登壇されていたお三方は、もっと読者目線で、時には自社ブランドを前に出さず、本質となる内容を投げかけている。私は今まで、そこまで読者に寄り添った客観的なものを手がけたことがなかったために、読者の目線を意識することに気づかなかった。
インハウスエディターは、当初の認識よりも高度な言語スキル、傾聴スキルが問われるということがわかった。ここは、自分の考えや行いを少し反省して、今後の業務に活かしていきたい。

代わりに、もっと情報を作り出したり潤滑に流したりする社内でのステップの話を聴きたかった。
関わる社員やチームの教育、会社のビジョンの共感がマストなどの話はあったが、そうではなく、社内広報や社内調整と呼ばれるもののイメージに違い。
発信のために事実を作るではないが、会社の方向性やコミュニケーションポリシーに基づいて、少し情報流通が詰まっているところに手を入れて、読者へのアウトプットまで流していく。そういう活動をしていらっしゃるのなら、ぜひ伺ってみたかった。そのような仕事はどの会社でも絶対あるはずだがなかなか表に出ないし、先述の通り高い視座がないと務まらない。読者に寄り添えるヒューマンスキルとアウトプットスキルも必要なので、そんなすごい人がいるのなら話を聞いてみたいのだ。
「会社の情報編集」は、今ある情報を文章にするだけでなく、情報生成までするものなのではと個人的経験で思っていたりする。いや、むしろそうであってほしいという、個人的願望なのかもしれない。

あと、とても細かいのだが、インハウスエディターという言葉が、私にはしっくりこなかった。断っておくが、インハウスエディターのマインド面、すなわち役割や心構えは、首がもげるくらい同意している。しかしそれが「インハウスエディター」という言葉に集約されることに少し違和感がある。
おそらく、私の中で「エディター」という言葉にひっかかりがあるのだろう。それこそ、「メディア編集スキルを持つ人」という狭義のイメージがあったからだ。なぜそう思うかというと、そういうメディア編集の界隈でしか「エディター」という言葉を聞かないからである。
単なる知識不足かもしれないし、今後もっと言葉が馴染んでいくかもしれない。むしろこの、インハウスエディターの概念を通じて「エディター」という言葉の意味が少し変わるのかもしれない。逆に、そうだとしたら、その世界には立ち会ってみたいと思う。

また、今回のイベントのモデレーターであるPR Tableの大島さんは企業に属さず、インハウスエディターをされている。私はそれがすごいと思う。特に、フルタイムでない限られた時間では、企業の奥深いところの情報が見られず、成立しない気がするから。
企業によるのかもしれない。オープンで割と情報が筒抜けとか、チャット文化が強いとか、なんでもオンラインで共有するとか。でも、個人的な経験だとやはりオンラインだけだと空気感が察せないと思う。特に何かしら「守り」の動きをしないといけない時期は。
その事象の背景やその人の性格などの一定の共通認識があって、さらに状況の前提情報があって、次の施策を考えるレベルでは電話等駆使しリモートでも解決できる。が、どちらかが欠けていたらどうだろうか。特に温度感や共通認識が伝わらず上層が判断ミスするとか、容易に想像できてしまう。
そこをどうやって解決しているのか? 大島さん以外にも外からインハウスエディターとして関わる方がいらしたら、今後お話を伺ってみたい。

インハウスエディターを知って、広報業務を深めていく

まだまだ役割として広く浸透しているわけではないインハウスエディターの奥深さと、広く浸透していない・概念的な話も大事にしなければいけないからこそ自分の中でまだはっきり見えないもやもやが後に残った今回のイベント。WEBメディアと括るのは雑なくらい、中身や作り方が全く違う2社のインハウスエディターの話を伺えたことで、いろいろなインハウスエディターの方の話を伺いたくなった。

そして、インハウスエディターという仕事の探求とともに、私自身の広報業務もどんどんブラッシュアップしていきたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?