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ルイスカーンの思想と、アルゴリズム的思考

実は結構前からnoteは書いていたんだけど、今にも増して中二病臭かったので全部消しました。

という事で、今回は近代建築史の授業のミニレポートをそのまま載せようと思います。なぜこのレポートなのかというと、数週間前にこのレポートを書いてたら、今後勉強していきたい方向性が割とはっきりしてきたからです。


課題文
「近代建築の巨匠と呼ばれているのはどんな建築家たちですか、そのなかで、どの建築家のどの作品により魅力あるいは可能性を感じますか、また、それはなぜですか」

以下、レポート全文。

近代建築の巨匠と呼ばれる建築家には、フランク・ロイド・ライト、ミース・ファン・デル・ローエ、ル・コルビジュエ、アルヴァ・アールト、カルロ・スカルパが挙げられると思う。

私はルイス・カーンの、ファースト・ユニタリアン教会*1により可能性を感じる。なぜならファースト・ユニタリアン教会は、アルゴリズミックな建築の進歩的なものだと思うからだ。

ファーストユニタリアン教会


ファーストユニタリアン教会 平面図


カーンはこの教会ができる以前にリチャーズ医学研究所を設計している。リチャーズ医学研究所は、サーブドスペース、サーバントスペーストと呼ばれるボリュームを規則的(アルゴリズミック)に配置して構成されている。結局完成後に、このアルゴリズムによるプランの生成は失敗だったという評価がなされるが、後のソーク研究所では個と集団の関係という「目的関数」を再考することで、規則的かつ機能的で美しい建築が生まれた。

リチャーズ医学研究所 サーブドスペース サーバントスペース ダイアグラム


ソーク研究所



ファースト・ユニタリアン教会はソーク研究所と同時期にできた建築であるが、建築の生成プロセスには大きな違いがある。それは作家の理念を構造化し、それを建築の構成に落とし込んでいるという点である。

ファーストユニタリアン教会 エスキス

カーンはオーダー、フォーム、シェイプという三段階の建築理論をもっており、それらについて「フォームは不可分な構成要素のリアライゼーションです」*5と述べている。これは、原型を自己解釈し構造化させるということだと言い換えることが出来ると思う。また、自己解釈というのは作家独自の理念(経験や知識体系、理論体系から形成れるもの)によって行われ、そこに作家のオリジナリティが発生する。また、構造化させるというのは、自己解釈によって生まれる多様な目的関数をアルゴリズミックに解き、必然性から生まれる構成を導くという行為である。

つまり、ファースト・ユニタリアン教会は、それまでのサーブドスペース、サーバンドスペースという単純さから進歩し、作家(ここではルイス・カーン)の理念に基づいた自己解釈という、より複雑多様なものを構造化し、それを建築化しているのである。

ここで一度コンピュテーショナルデザインについての話にずらしたい。コンピュータを用いたデザインは様々な建築を我々にもたらした。しかし、80年代後半から続く脱構築主義は、オリジナリティはあるもののどこか空虚で「奇をてらった形態」の域を出ないように思う。それはコンピュテーショナルデザインがまだ初歩的なレベルでしか扱えていないからだと思う。これはある意味失敗したリチャーズ研究所よりも退化したものであるといえる。(そもそも脱構築主義は機能主義から建築を遠ざける思想であるからお門違いな評価かもしれないが。)

コンピュテーショナルデザインには幾つかの段階があると考える。第一段階は人が思うがままの形態をビジュアライズするという段階。CADの大半はこの用途である。第二段階は人が用途に合わせてパラメーターを設定し、そのパラメーター上の数値を手動で変化させることで規則性のある変化を与え、より多くの検討を行えるようにするというもの。パラメトリックデザイン、パラメトリシズムという言葉がある。第三段階は人が目的関数を与えることでコンピュータが計算し、最適解を導いてくれるというもの。最適化と呼ばれる手法である。第三段階になると、コンピュータが自ら学習し続けることで目的関数を生成し最適化を行うという段階である。これは機械学習を用いたものである。

パラメーター
parametricism

脱構築主義者はコンピュータを得たことで初段階の使い方で様々な建築を構想してきた。その空虚さの理由は、カーンの建築理論を用いればオーダーをそのままシェイプに落とし込んだからだといえる。つまり、そこには構造化させるという必然性の論理が適用されていないのである。

ここでコンピュテーショナルデザインの次の段階である最適化について考えたい。コンピュータを用いた最適化で重要なのは脱構築主義とは違い必然性の論理を適用しているという点、それから、カーンのサーブドスペース、サーバントスペースという二項よりも、より複雑多様な目的関数を与えることが出来るという点である。つまり、カーンが言うフォームというアルゴリズムをコンピュータに計算してもらう事で、より本質的なシェイプにつなげる事が出来ると思っている。

コンピュテーショナルデザインがこれからも進歩していくことが容易に推測できる現代で、空虚な、または単純で非人間的な機能主義的建築から抜け出すためには、ルイス・カーンが設計したファースト・ユニタリアン教会は「より可能性がある建築」として参照される価値のある作品だといえる。


恐らくほとんどの人は読み飛ばしただろうというのが容易に想像がつくので、簡単にまとめると、

「もっとコンピュータを進歩的な使い方をして建築の設計に生かしたい」

という事である。口だけではどうにもならないので勉強します。

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