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北京ドタバタ旅行(58)

 こういう観光地ですので、駐車場の端はぐるっと土産物屋が並んでいます。大きなスピーカーからは中国語で「ファンユン、ファンユン」としつこいほど声が響いています。ファンユンというのは、中国語で欢迎、日本語ですと「歓迎」と書きます。まぁようこそ、ようこそと言っているわけです。

 私は木陰で土産物屋を見ていたのですが、きらびやかなチャイナドレス、傘、チョッキとか衣類を中心に並べて売っています。小さな店の割に、売り子は3、4人いて、西洋人がバスから降りてくると
「ハッロー」
などと、間に区切りを入れた英語を1声かけて、後は中国語でなにやら言っています。

 私もその光景を見ていたら、お店の人がわざわざやって来て、親切にも車椅子を押して、店の前に連れてきます。もちろん、この日本のいい男を見るためではなく、土産物を買ってもらうのが目的であるのは言うまでもありません。

 その時、ウエストポーチの中にはおそらく小さな店全部の商品を買えるくらいのお金を持っていたのですが
「我没有人民幣」などと言いますと、米ドルはないかと聞きます。「我没有美元(ドルは持っていない)」と言いますと、さすがにあきらめたようです。

 それまでの商売人の顔を止めてしまいました。日本人ですと、愛想がなくなるのが普通でしょうが、彼らは逆に、客としてではなく、1人の人間として、私に接してくれました。


 私が歩けないのを見て取ると、持ってきていたノートに「什么病」と書いてきました。什么とは「どんな」という疑問詞です。どういう病気ですか?とまぁ聞いてきたわけです。私は「医者也不知道(医者も分からない)」と書きました。

 その売店には、中年の男女が2、3名いましたが、ちょうど客もなく、その内の1人が筆談で私と話が出来ると言うことを知ると、人なつっこく、どういう風に生活をしているのかと聞いてきました。私は年金という字や、年金額を書いて見せたところ、ほぼその意味が分かったようです。一通りの質問をすると気が済み、ちょうど観光客が通りかかったこともあり、彼らは私から離れ、また商売にかかりました。

北京ドタバタ旅行(59)

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