孤独な中年がたっぷりと幸福を味わう朝。
靴紐がきゅっと結べると気持ちいい。
すぐに来るエレベーターが気持ちいい。
青に白が混じって、淡くなってきた空の色が気持ちいい。
駐車場のバイトの男の子が、片手でひっそりとるリズムが気持ちいい。
坂道を降ってきた車の、あかるいブラウンの屋根と光る黒のボディ。
信号待ちの時に通り過ぎていく車の車窓から、外を眺める犬の丸い目。
前を歩いていく、しゅっとした若いお父さん。
若いお父さんと手をつないだ小さい女の子の、左右にはずむポニーテール。
リュックの横でゆれる、お気に入りらしき紫のバレエシューズのチャーム。
急ぎ足で歩いていく、おじいさんが持っている梅の枝。
家族も友達も恋人もない。
若さも才能もキラキラな仕事もない。
それでも、しあわせを感じられることが、とてもしあわせ。
「しあわせ」と「しわよせ」って、ちょっと似てるよね?
#毎日note
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