見出し画像

テキサス小学校銃撃:あの日、子どもたちに何が起こったのか?

小学校銃撃事件、サバイバーの声

体験談の重要性

私は事件や事故、災害で生き残った人の体験談を知る機会があれば、できるだけ学ばせて頂きたいと思っています。私たちの身の回りにある”危険”について知らなければ、対策の立てようがないからです。また、できるだけ多くの事例を頭に叩き込むことが、万が一の事態が生じたときの知恵を与えてくれるだけでなく、パニックを軽減してくれるはずだとも考えています。

インタビューに応じた子どもたちの想い

今回の事件が小学校で起こったため、サバイバーの多くは小学生です。その小学生に、事件直後にマイクを向けるのか?とも思ったのですが、取材に答えたお子さんたちは、それぞれに伝えたい想いがあり、インタビューに応えることにしたようでした。取材に応じた少年の1人は・・・。

虐殺を止めたのは警官だったが、自分や同級生の命を救ったのはイルマ・ガルシア先生とエヴァ・ミレレス先生(亡くなった2名の先生)。とてもいい先生たちで、同級生を助けるために、彼らの前に立った」。

彼は、同級生が撃たれるところも目撃しています。それでもインタビューに応えたのは、この言葉を先生に伝えたかったからではないかという気がしました。(その子の両親は、彼が特定されることやカメラに映ることを望まなかったものの、起こったことを共有したいという少年の気持ちを優先したそうです)。

子どもたちが語った事件当時のこと

犯人がバリケードを築いた教室とドアを共有する部屋にいた小4の少年:同級生や先生が撃たれるところを目撃してしまった

  • 犯人が部屋に入ってきて、少ししゃがんで、「死ぬ時が来たんだ 」と言った。

  • 隣の教室にいたほかの生徒たちと一緒に発砲音を聞いたとき、友達に隠れるように言った。友達4人と、テーブルクロスがかけられたテーブルの下に隠れた。一生懸命隠れていた。そして、友達に「しゃべるな」と言ってい。

  • 現場に到着した警官(*記事中では、”国境警備隊”となっていました)が子どもたちに「助けが必要なら叫べ」と言った。クラスの一人が「助けて」と叫び、それを聞きつけた犯人がやってきて、彼女を撃った。警官はその教室に飛び込んできて、犯人は警官に発砲し、警官も撃ち返し始めた。

  • イルマ・ガルシア先生とエヴァ・ミレレス先生は、 クラスメートを助けるために、彼らの前に出て行った 。

  • 銃声が止んだとき、友人と一緒に隠れていた場所を離れた。警官の制服と盾が見えたので、安全だと分かった。

友人や教師が撃たれた4年生の教室にいた11歳の少女:同級生の血を自分の体に塗り、死んだフリをしていた

彼女は女性インタビュアに話すこと、そして、カメラに映らないことを条件に取材に応じた(犯人が男性であったことから、男性インタビュアとの会話は拒否)。

  • エヴァ・ミレレス先生とイルマ・ガルシア先生の2人の教師が共同使用する教室で、クラスメートとともに映画「リロ・アンド・スティッチ」を見ていた。授業が終わったとき、教師たちは建物内でアクティブ・シューター(銃撃者)が来たという知らせを受けた。*注釈:教室は先生に属するもので、生徒たちは自分が受ける授業の先生の部屋に移動します。小学生の場合、文系・理系の先生が共同で2つのクラスを担任していることが多いようです。また、テキサス州では、統一テスト”スターテスト”が5月の初めにあり、ここが1年の目標となっていますので、その後は、授業時間内でレクリエーションを行うことも多いようです。

  • 先生の1人がドアをロックしようとしたが、犯人はすでにすぐそこにいて、ドアの窓から撃ってきた。

  • 教室に入った教師を追いかけてきた犯人は、教師の一人と目を合わせ、「おやすみ」と言い、彼女を撃った。

  • 犯人は銃を乱射し、もう一人の先生と多くの同級生を撃った。弾丸は自分のそばを飛び交い、破片が肩や頭に当たった。(その後、病院で治療を受け、破片の傷で退院したが、髪の塊が今も抜け落ちている)。

  • 同級生の襲撃後、犯人はドアを通って隣の教室に入った。その教室で悲鳴と銃声が聞こえた。銃声が止んだ後、犯人は大音量で”悲しい音楽”を流し始めた。

  • 生き残った同級生と、亡くなった教師の携帯電話を探し出し、911に助けを求めた。

  • 犯人は隣の教室に行ったものの、戻ってきてまた撃つのではないかと怖くなった。隣に倒れていたクラスメートの血に手を浸し、その血を自分の体に塗りつけ、死んだふりをした。

  • クラスメートの血にまみれて友人たちと横たわっていたのは3時間くらいに感じられた。その時点ではまだ警察が現場に到着していないと思っていた。その後、学校の外に警察が待機しているという話を耳にした。(この部分を話しながら彼女は泣き出し)なぜ彼らが中に入って救助してくれなかったのか理解できない。

  • 自分の話をシェアすることで、学校の銃撃事件を経験することがどんなことなのかを知ってもらいたい。このような悲劇が他の子どもたちに起こるのを防ぐのに役立つことを願っている。

  • (彼女の母親によると)トラウマを抱えた彼女は眠れなくなった。地面にある死体を見続けている。彼女の両親は、彼女の治療費を支払うためにGoFundMeを開始した。

  • (CNNによると)気温が高いにもかかわらず、毛布にくるまってインタビューに応じていた。

  • (母親によると)銃撃事件の朝、彼女が「耳が痛い」というので、学校を休ませて医者に連れて行った。帰りにスターバックスでスナックを食べながら、母親は、「夏休み前の最後の授業日で、映画を見るだけだから」と、学校を休ませようとしたが、「学校に戻って、友達に会いたい」と娘が言うので、学校に送っていった。ーー銃撃事件の約1時間前のことだった。

バックパックの保管場所に隠れていた10歳少年:訓練通りのことを実践。「銃撃事件も学校も、何もかもが嫌」。

  • 学校で大量殺戮があった場合の対処法を練習していた。しかし、それが本当に起こるとは思ってもみなかった。

  • 担任教師は、クラスで銃声が聞こえた瞬間、ドアに鍵をかけ、「隠れて静かにしなさい」と生徒たちに言った。

  • 銃撃戦の最中、彼と数人の同級生は、バックパックの保管場所に隠れていた。テーブルの下にいた同級生たちもいた。その間ずっと、自分たちに何が起こるのだろうと考えていた。

  • 事件後、また同じことが起こるのではないかと不安で、他の子どもたちと同様、学校に戻りたくないと考えている。「銃撃事件も学校も、何もかもが嫌」。

  • (報道によると)彼が小学校の優等生になったことを祝ったわずか90分後、テキサス州の小さな町ウバルデにあるこの学校で、犯人が19人の児童と2人の教師を殺害した。*おそらくこの日、学年末の表彰式があって、そこで成績優秀者の賞状をもらったのだと思います。未確認ですが、そうであれば、学校付近に保護者がたくさん集まっていたのは、表彰式後だったからかもしれません。

銃撃があった教室の近くの教室にいた2年生の少年:本物の”訓練”の中、祈った

  • 死亡事故が起きた教室の近くの教室で、大きな音を聞いた。花火のような音だった。

  • 学校職員の女性が彼とクラスメートに隠れるように言い、教室内の電気が消された。

  • 彼とクラスメートは、幼稚園の頃からアクティブシューター訓練を受けていた。(事件当日)「本当の”訓練”をしているのだと思った」。

  • 部屋にいたクラスメートの何人かは泣いていて、自分は祈った。祈りながら考えていたのは、「なぜ、こんなことが起こるのだろう」。

  • (母親によると)「心が痛む。学校を怖がらないようにしたい。学校に戻ることを怖がらず、勉強を続けてほしい。彼に普通の生活を取り戻してほしい。

*当日の警察の対応や、学校側の安全対策等に対し、非難の声も上がっています。事件のあった小学校がある街は、国境から60マイル(東京ー小田原くらい。アメリカ人的感覚では国境付近だと思います)のところにある小さなコミュニティです。一般的に警察の数が少なく、到着までに時間がかかると推定されます。記事中、突入した警官のことをわざわざ”国境警備隊”としていたことからも、襲撃事件に不慣れな警官しかいなかったと言う推測もできますが、この辺は情報がもう少し出てきてからまとめたいと思います。

亡くなった先生に対する想い

生き残った先生の1人もインタビュー動画も見ました。号泣しながら「私の子どもたち(生徒)を守りたくて」という言葉を何度も繰り返していました。彼女はロックをし、電気を消し、子どもたちに静かに隠れるように指示した後、自分も身を隠した後に、通過する犯人を見かけていたようでした。自身も死の恐怖に直面する中、先生方は子どもたちを必死に守ってくれた、それは子どもたちが十分理解しているのだなと思いました。

正直なところ、こちらの学校の先生には、”サラリーマン”的な印象を受ける時が度々ありましたので、繰り返される”私の子どもたち”という言葉に、今までの自分の感じ方が申し訳ないような気持ちになりました。(ちなみに生徒のことを”私の子どもたち”と呼ぶのは、よく聞く表現です)。

そして、この”私の子どもたち”という言葉で、自分がもし同じ立場だったら?ということを考え込んでしまいました。というのも、亡くなられた先生方には、2つの”私の子どもたち”ーー生徒と実の子ーーがいたからです。目の前にいる”私の子どもたち”も救いたい、でも、それは同時に、自分の帰りを待つ”私の子どもたち”から母親という存在を消すことになるかもしれない・・・。

2人の教師は、4年生の担任だったようです。おそらく1人が文系科目、もう1人が理系科目を担当し、2人で2つのクラスを共同で担任していたのではないかと思います。当日も、一緒に映画鑑賞クラスを行なっていたようです。

亡くなったイルマ・ガルシア先生には、4人のお子さんがいて、彼女の甥もこの小学校に通っていたとのことでした。彼は事件後、「彼女は教室の子どもたちを守るために自分を犠牲にした」「イルマ・ガルシアは彼女の名前であり、彼女は英雄として死んだ」とツイートしていたそうです。ガルシア先生の夫は翌日、心臓発作で亡くなったという報道もありました。残された4人の、一番下のお子さんは、13歳ということでした。

エヴァ・ミレレス先生の娘さんはTwitterで、「母親が 無私の心で生徒の前に飛び出し、命を救ってくれた」と、ツイートしていたそうです。「美しい私のお母さん、最高に楽しい思い出をありがとう。私の人生で最高の時間をありがとう。私の親友でいてくれてありがとう」「あなたのことは今、多くの人に知られることとなりました。あなたの名前、あなたの美しい顔を知っている人がいて、ヒーローの人となりが多くの人に知られたことが、とてもうれしい」。

背景情報

アクティブ・シューター訓練

アメリカでは、幼稚園の頃から学校でアクティブ・シューター訓練ーー銃乱射事件が起こった時の対応ーーを受けることになっているようです。具体的には銃声が聞こえたら、ドアをロックし、電気を消し、机の下等に隠れるというものです。トイレにいた場合には(アメリカのトイレは個室のドアが短めに作られており、中に人がわかる作りになっているため)、便器の上に足を乗せ、足が見えないようにして・・・と、それぞれの場所で対策が考えられているようです。

アクティブ・シューター訓練のビデオには、大人用もあり、主にオフィスで遭遇した場合のものを見たことがありますが、逃げることが可能であるならば、とにかく犯人から離れることを優先し、難しければ隠れるということでした。ドアをロックし、電気を消した後は、大人用の対策としては、事務用機器等をドアの前に置き、バリケードを作った後は、固い物の影に隠れます。携帯の音を切り、可能であれば911(警察)に電話し、話ができない場合も、そのまま通話状態で置いておく・・・・そんな内容でした。闘うのは、逃げることも、隠れることもできなかった場合に、最終的に命を守る手段としてということになります。

学校常駐の警察官

学校には常駐の警察官が1名いらっしゃいます。ずっと同じ方です。朝の登校時から下校時まで。学校で放課後の活動がある際には、それが終わるまでいらっしゃいます。
子どもたちに、「警察官の人がいつもいてくれて安心ね」というと、思春期の子どもたちからは、「いるだけだよ」「”いること”が仕事だからね」と返ってきました。いつも険しい顔で見張っているというわけでもなく、父兄や先生と談話している姿をお見かけするので、そんな風に思っているのかもしれませんが、何かあると、その警察官の人を通じて、地域の警察署と連絡を取る・・・というような感じのようです。警察官の人数が多く、通報後に駆けつけてくれる時間が割と短いとされている地域ということも関係しているかもしれません。空港にいる険しい顔をした警察官というより、交番のお兄さんといった感じの印象です。

事件のあった小学校でも、常駐の警察官が1名いるはずですが、どうも、当日、いなかったのではないか?という話も出ています。ただ、常駐の警察官がいないというのは、子どもたちの学校では考えられないことです。常駐の方がお休みする際には、代理の方がきてくれているからです。ここは後日・・・。

学校のセイフティ・プロトコール

州や学区によって異なると思うのですが、私が知っているのは下記の通りです。

  • 学校に1人、常駐の警察官がいる。

  • 登下校時に、見守りの警察官が増えることも。

  • テキサスは銃の所持が認められていますが(ただし、外から見えないようにする)、学校敷地内への持ち込みは禁止。

  • 学校の建物内に入るときには、決められた入り口から入り、受付で、子どもの名前と用件を述べた後、身分証明証を見せる。

  • 学校によっては、受け付けでもらった入館許可を胸に貼った状態でないと、学校内を歩けないと言うところも(授業参観等で来校している場合でも)。

  • 学校の生徒用ロッカーには、鍵がかからないようになっている(銃や薬物を保管できないように)。

ただし、犯人の視点になるならば、入り口から受付を飛ばして、建物内に入ることは可能です。身分証の確認も、在校生の保護者が犯人であればあまり意味がないかと思います。また、入り口に金属探知機ゲートのようなものがあるわけではありません。一定の抑止効果はあっても、治安の悪いところでは、安心できないプロトコールかと思います。

また、事件後、学校行事のために、子どもたちの学校に行きましたが、その時には、カバン・ポーチ等の持ち込みが禁止されていました。ただ、遅刻してきた父兄の中には、風船やケーキ(学年末の表彰式でしたので、写真撮影用と思われます)や紙バッグを持ち込んでいる人たちもいました。治安が良い場所に住んでいますが、それでも私は”アメリカに住んでいる”という緊張感がありますので、同じエリアに住むアメリカ人よりも、危機管理に対する”穴”みたいなものはどうしても気になってしまうのですが・・・。

授業中に映画鑑賞!?

テキサス州は5月の初め頃に、州統一のテスト”スターテスト”が行われます。このテストでの評価は、生徒だけでなく、学校、教師にとっても重要です。ですから1年の目標がこのスターテストとなります。テストは1教科あたり4時間。小学生の頃は、テストの途中にスナックタイムや、ストレッチタイムを挟んで1つのテストに取り組みます。なぜこんなに長時間なのかは謎ですが、アメリカ人保護者は特に疑問に感じないようです。

そして、このテストが終わってから終業式までの2週間くらいが、プロジェクト等があればその仕上げを行います。スターテストとは別の学期末テストがある場合もありますが、緩やかなものです。子どもたちの学期末テストは、学年末の表彰式後にもありましたが、この年の成績が評価された後(オールA賞、オールA・B賞等の表彰がある)に行う学期末テストにどんな意味が???っと思うのも、私くらいのようです。

というわけで、スターテスト後の学校生活は、すでに夏休みモードといってもいいくらいのものです。子どもたちも、小学生の頃は、よく映画鑑賞をしていましたし、学年末パーティ等が行われる場合もあるようです。アメリカの学校は、”出席日数が足りていれば問題がない”と考える保護者も多く、どうせ授業のないのだからと言うことで、一足早い夏休みになるお子さんもいます。事件当時のことをシェアしてくださったお子さんの1人も、午前中に病院に行ったということもあり、母親が学校をお休みさせようと思っていたようです。

犯人が意識したかどうかはわかりませんが、通常クラスが行われていた状態であれば、ドアをロックする等の対策も、行いやすかったのではないかと思います。また、犯人の思い付きが後3日遅かったら、長い夏休みでしたので、その間、気持ちが変わることもあったのではないかと思うと・・・。

亡くなられた方々のご冥福と、被害に遭われたお子さんたちと家族の方々が心身ともに少しずつでも回復されることをお祈りしつつ・・・。今回、シェアしてくださったお子さんがたの気持ちに応えるためにも、このようなことが2度とない社会にしていくことが私たち大人の責任だとも思いました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?