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"さよならだけが人生だ" 花譜3rd ONE-MAN LIVE 「不可解参(想)」ライブレポ及びファンレター

ライブレポ


2023年03月04日、バーチャルシンガー花譜の3rd ワンマンライブ「不可解参(想)」が開催された。

花譜は神椿スタジオ所属のバーチャルシンガー。
2018年10月より活動を開始した現在19歳のアーティストである。

メインコンポーザーに「命に嫌われている」「アダルトチルドレン」など多数の人気ボーカロイド楽曲を世に送り出したカンザキイオリ氏を迎え、多数のオリジナル曲をリリースしてきた。

特徴的なウィスパーボイスでの歌唱が中高生をはじめとした若者から支持されている。

「不可解」はそんな花譜のワンマンライブだ。2019年08月01日に開催された1st One-Man Live 「不可解」を皮切りに今回の「不可解参(想)」で7度目の「不可解」シリーズワンマンライブ。

前回「不可解参(狂)」は武道館でのリアルライブ。(想)はバーチャル空間に作り上げられた「超構造体」概念武道館でのライブとなった。


30秒の長いカウントダウンの後に流れ出したのはMVなどでゆかりのある場所。

デビュー時の宣材写真の撮影場所の駐輪場
衣装は「燕」の新カラーリング

映像から抜け出すようにステージに現れた花譜。
最初に歌われたのは「魔女」、こぶしを突き上げたくなるようなライブアレンジを心から気持ちよく歌う。

KOTODAMATRIBEのテーマ、ニコニコ超会議やFAVRICなどライブでも多く歌われた「魔女」

「花譜です!不可解スリーそーう!始まりましたー!」と嬉しそうにMCが入る。
そこに1stライブのときのおっかなびっくりさはなく、堂々と挨拶。

2曲目「畢生よ」3曲目「夜が降り止む前に」を歌い終え改めて挨拶をする花譜。話始めの「はい」は健在。
概念武道館の紹介とライブ「不可解」シリーズの最後を見届けてほしいと伝えながらステージ2階へと移動した。

概念武道館とは、はて?と小首をかしげる花譜


ライブシリーズと同名の楽曲「不可解」

1st liveで初披露された楽曲「不可解」

詩が入り一瞬の静寂ののちアップテンポな「ニヒル」鎮めるように「アンサー」と続く

道が生えてきた

歩きながら再び詩を歌う
「僕らため息ひとつで大人になれるんだ」と詩を終え、たどり着いたのは桜が舞い散るステージ「概念武道館 大樹」

静かに歌い出したのは「裏表ガール」
高校卒業記念ライブ「僕らため息ひとつで大人になれるんだ」での初披露曲。

概念武道館 大樹

歌い終えると今度は足場が浮上
外観の映像に切り替わり

武道館からそびえ立つ塔


ここがオープニングと言わんばかりの「不可解」に関するポエトリー
そして衣装チェンジ

記憶の器

「僕らのパーティを始めよう」と始まった「K.A.F.DISCOTHEQUE」
・フォニィ
・マーシャル・マキシマイザー
・きゅうくらりん
・ラムのラブソング
・トウキョウ・シャンディ・ランデヴ
・Bad Girl(m1dy)
・ノンブレスオブリージュ
・神様(東京ゲゲゲイ)
のセットリストに合わせて花譜がノリノリに踊りながらエレベーターで昇っていく

そうして到着したのは「観測所」
聴きなれたイントロが加速しながら、音を増やしながら流れだす

観測所

観測所での最初の曲は花譜のオリジナル曲の1曲目「糸」

続けてゲストタイムに入っていく
CIELと「私論理」、Albemuthと「戸惑いテレパシー」

MCを挟んで

EMAと「あるふぁYOU」、VALIS「神聖革命バーチャルリアリティ」

CIEL


Albemuthの存流・明透


EMA from DUSTCELL


崩れた壁から登場したVALIS


観測所をエレベーターでさらに上がる花譜
衣装チェンジをし、出たのは街の中


「過去を喰らう」、頭フリフリも健在

交差点に立つと、現れたおぼろげな花譜バンド
と同時にドラムが叩かれ「過去を喰らう」

メンバー紹介を入れつつ「海に化ける」
そして「人を気取る」と過去を喰らうのシリーズを一気に披露した


「海に化ける」では"らぷらす"が登場


「人を気取る」地面が砕け浮遊する


楽器隊と共に浮上し「未観測地点」で「楽しんでますか?」とMC

鱗滝さんもびっくりの速さで両腕上げレスポンスしていたピアノ斎藤渉さん


「未観測」

さらに上昇しながら「未観測」を披露
上昇が止まり「臨界点」にたどり着き
楽曲「不可解」シリーズ最後の曲となる「狂感覚」


「不可解」というライブの到達点としてふさわしい、見ている人に手を差し伸べる圧巻のライブパフォーマンスを見せた。


軍鶏がパージされ"らぷらす"が施されていないワンピースで最後のステージ「出発の祭壇」に上がった花譜

「出発の祭壇」

ゲストにカンザキイオリさんが登場し、「わぁ~」とほんわかな雰囲気。
時間の流れの速さ、ライブ「不可解」・作品に対する想いを語った。


そして、カンザキイオリさんから神椿スタジオ・THINKRからの卒業を発表

口元をおさえる二人

声を震わせながら「画面の向こうの人を救いたい」というカンザキさんの創作に対する想いや観測者として花譜ちゃん・花譜というプロジェクトを応援することを語った。

「最後の花譜ちゃんとの…」と続けるカンザキさん
「いや、最後じゃない!」と花譜が遮り、涙をぬぐいながら笑いあう二人

カンザキさんの門出と不可解完結を祝って二人での歌唱
1曲目は「過去を喰らう」

「「せーのっ、過去を喰らう」」


"花譜"にとって大きな飛躍となった曲「過去を喰らう」

「最後じゃないけど、ひとつの節目として」、花譜・THINKRとの出会いにつながった曲「命に嫌われている」を歌う

生きて、生きて、生きて、生きて、生きろ


パフォーマンスが終わりカンザキさんが去った後には光の結晶が残り、花譜はそれを大切に胸にしまった。

笑顔でカンザキさんを送り出せるような自分でありたいと思いながら作った曲「リメンバー」

「リメンバー」

カンザキさんとの歩み、感謝、様々な思いを込められたこの曲を笑顔で歌い切った。

謎の物体の前で、自信の活動、仲間、"花譜"について語る花譜

最後のMCで花譜という名前を与えてもらってからの様々な想いを語った花譜。
「わたしとみんなの物語はまだ始まったばかりです。みんなのことが大好きです。愛してる!」とライブを締めくくる。

「花譜でした、またね」といつもの挨拶でステージを去り、ライブは幕を閉じた。

謎の空間に消えていく花譜


2019年08月01日に開催された1st live「不可解」はバーチャルYouTuberのライブにおいて"特異点"と呼ばれるほどに衝撃を与えるものであった。
そのライブシリーズ「不可解」の最後となる「不可解参(想)」は映像表現・演出、楽曲や歌唱どれをとっても間違いなくバーチャル空間で開催されるライブの現時点での最高峰であるといえるだろう。

2018年に14歳で活動を始めた少女の成長、アーティスト花譜の成長、花譜というプロジェクトの成長さまざまな成長・歩み・想いを垣間見ることができるライブであり、これからの花譜さん・花譜の歩みを観測し続けたいと思わされる心揺さぶるものが確かにあった「不可解参(想)」。
ライブの最後には次シリーズの「SINKA LIVE」発表もありこれからの活動も楽しみだ。



こっからファンレターです。


花譜さんへ

まず、不可解参(想)の開催、またライブ「不可解」シリーズの完結おめでとうございます。
堂々としたパフォーマンスで貴女のアーティスト・人間としての成長、花譜という存在の偉大さを強く感じました。

少し自分語りをすると私が花譜と出会ったとき、私は今までの人生でもっともどん底にいました。生きているが活動らしいことが何もできなくなっている中で、虚無からの苦痛を和らげるためだけに動画を見ていました。
そんなときに花譜と出会いました。花譜の動きを、貴女の歌声を追っていくうちに少しずつ前へ進めるようになったのです。

仲間を得ました。花譜が好きな人・観測者と出会い、喜びを共有できました。

趣味を得ました。このブログも休詩の間になにかできないかと始めたのがきっかけで、この活動が私の自身であり誇りとなっています。そしてたくさんの素敵なバーチャルシンガーさんや音楽との出会いも貴女がいなければなかったでしょう。

そして、感動する心をくれました。年を重ねると心を揺さぶる経験も減ってきて錆びついたように感じていました。しかし、この「不可解参(想)」を見て私は感動して泣きました。「音楽で目頭が熱くなる」という出来事がどれだけ嬉しかったか。

本当にたくさんのものを、感動を、経験を花譜から貰いました。
貴女が、花譜がいなければいまの私はありません。
本当にありがとうございます。


さて、花譜さん、本当に歌が上達されましたね。
もともとの人を感動させる歌声に、表現の幅が加わり、バーチャルなど関係なしにシンガー・アーティストとして素晴らしいと思います。私は素人なので想像しきれませんが、そこにはきっと並々ならぬ努力があったと思います。

これからもたくさん研鑽されるのだろうとはおもいますが、どうかずっと歌を好きでいてください、楽しんでください。
花譜さんの努力が誰かの感動になることはもちろん、貴女自身の楽しさや喜びになることを切に祈っています。

カンザキさんの卒業で不安に思われることも多いとは思いますが、きっと花譜さんなら進んでいけると信じています。


最後に、偉そうなことを言える歳でもない若輩者からにはなりますが、アドバイスのような願いのようななにかを。

恋をしてください。たくさん遊んでください。たくさん歌って、たくさん努力して、たくさん怒って泣いて時にはたくさん休んで。たくさん出会って、少し別れて。

花譜としての歩みが止まったとしても花譜さんの人生はずっと続いていきます。その最後に花譜でよかったと思えるように、たくさんの経験をしてください。

これからの"花譜"の歩みに幸多からんことを祈ります。

本当にありがとう!応援しています!!



カンザキイオリさんへ

カンザキさん、これまで花譜にたくさんの音楽を与えてくれてありがとうございました。
旅立つことを選んだ貴方の選択や行動を心の底から尊敬いたします。

人間、居心地がいいところにとどまろうと変化を好まないことも多い中、音楽を通して人を救いたい、言葉を届けたいという想いを貫こうと行動を起こされたのは本当に人間として心から尊敬します。

だからこそ、凡人の私から言わせてください。
もっと甘えていいんですよ。頼ること、多少怠惰になることは悪いことではないですよ。
もちろん何事にも限度というものがありますけれども、カンザキさんの言葉を聞いたときに不安に感じました。

「若い才能」という言葉に押しつぶされたり、作り続けるための無理が溜まっていなくなってしまった方は少なくありません。
苦しみからしか生まれないものもあるでしょうが、基本クリエイターは体と心が資本です。より良いものを作り続けるためにも、頼るべきは頼って、疲れたときにはしっかり休んでください。

年齢を重ねると若い時と同じではいられません、今のカンザキさんが感じたこと、伝えたいことを大切にしてください。

モーツァルトが「俺の尻をなめろ」って曲出したの30歳手前らしいですよ、でも、そんくらいばかばかしいものが出せるほうが楽しいですよ。

まぁ、なにが言いたいかって、元気でいてください。それだけです。


さて、旅立つあなたに一つ詩を贈ろうと思います。
自作じゃないです、漢詩です。

勧 君 金 屈 卮 君に勧む金屈卮
満 酌 不 須 辞 満酌辞するを須いず
花 発 多 風 雨 花発けば風雨多し
人 生 足 別 離 人生別離足る

君へこの金の杯を
このなみなみと注がれた酒を遠慮する必要などないんだ
花は開くと雨風にさらされるように
人生には別れがつきものだ

「勧酒」という唐の時代の漢詩です。
別離を惜しむ詩ですね

この訳で有名なのが井伏鱒二さんの訳で

コノサカヅキヲ受ケテクレ
ドウゾナミナミツガシテオクレ
ハナニアラシノタトヘモアルゾ
「サヨナラ」ダケガ人生ダ

とくに第4句『「さよなら」だけが人生だ』が有名

生きていれば必ず別れが訪れます。前へ進み続ければなおさらです。
でも別れの数は出会いの数と必ず等しいはずなんです。

だからたくさん「さよなら」をするためにもたくさん「出会い」を得てください。「さよなら」だけが人生ならば、人生とは「出会い」なのですから。

きちんと「さよなら」をするということは「再開の機会を得る」準備でもあります。永遠の離別でないのならまた会うことだってできます、ちゃんと別れられたのならまたちゃんと出会えます。

だからこれからも別れを恐れず歩み続けてください。出会いを楽しんでください。

カンザキさんに良き出会いが訪れることを祈ります。
また、カンザキさんと出会った人がより良い方へ進めることも。


こっぱずかしいですね、でもこの漢詩がいまの私に注げるお酒なんです。
このお酒がカンザキさんにとって緑酒であることを願って筆をおきます。





「さよなら」だけが人生だ


野良猫のユウ


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